PROLOGUE:架空世界と創造主たち
12月下旬、長門市三隅下のとある旅館から意識不明の少年たちが病院に搬送された。いつになっても目覚めない少年たちを、同じく旅館に宿泊していた友人の少女が起こそうとするも起きず、少年たちの意識不明が発覚した。そして館長による確認と通報によって、少年たちが病院に搬送される運びとなった。
原因は不明。脳に何らかの障害が生じており、いわば脳死に近い状態であるとの医師の説明があったらしいが……なんとも不気味な出来事が起きたものだ。
旅行にて同伴していた少女は酷く錯乱しており、大人の言葉もまるで届かない。しばらくしてからだろうか。IT関係の会社役員の少年Uの従兄が駆けつけてきた。しかし、彼も少女のヒステリーめいた罵詈雑言を浴びるばかりだった。凄惨である。まるでこの世の地獄絵図とでも言おうか。
男は目の前で起きている悲惨な現状を、冷静沈着な目で遠くからただ眺めていた。触らぬ神に祟りなしとはこの状況を言うのだろうか。いずれにしても恰好のネタにはなるだろう。そのはずだが……なんとも奇怪な感じが止まらない。
男は煙草を吹かしながら思考回路を巡らせた。
やはり、文章にして世の中に出すには難しい。男が書く週刊誌は、決してホラーを趣向としたものではない。事実に基づいたスキャンダルが必要なのである。
男は目を閉じて瞑想を始めた。
少年たちは一命を取り留めている。絶望と呼ぶにはまだ早いだろう。