PROLOGUE:ようこそ氷の世界へ
目を覚ますと極寒の寒さに襲われた。寒い。ここはどこだろう。どうやら船に乗っている。乗船している自分は毛皮でできた分厚いコートを着ているようだ。頭にはフードと毛皮のヘルメットを被っており重くて邪魔くさく感じるのだが、これをとると恐ろしいことになりそうな気がしたので止めておいた。
可能な限りで体を起こしてみる。目に広がった光景は幻想そのものだった。
向こう岸に雪と氷いっぱいの大きな島が見える。テレビでたまに見かける南極大陸とかいう……それそのものだ。尋常でない寒さの原因がわかったのだが、乗船している船に自分以外の人間が居ないことに気づいて、ここが常識の通じる世界でないことに気がついた。しかしイマイチ何も思い出せない。眼鏡が曇る。
頭がボーっとしているのは寒さのせいだろうか。
気がつくと先ほどまで乗っていた船から降りていた。船から降りた記憶はない。
目の前に広がるのは降り注ぐ雪と足元の氷が創りだしている壮大な世界である。自分は今まで着たことがないような分厚い防寒着を着用している。いま氷の上を歩いているのかと思うと不安な気持ちにもなるが、ここは足を進めるしかない。
一面を見渡してみると、6時の方向に船が沖に止まっているのを見た。だいぶ遠くになる。もちろん誰もいないようだ。さっき乗船していた船だろうか?船の方向に戻ってもいいが「戻ってはいけない」と不思議な直感が働くので12時の方向へ足が進んでいく。目が覚めてはきたが、どうもまともに頭がまわらない。
歩き出して1時間近く経っただろうか。遠くの方に何かが見えた。
どうやら人である。しかも自分のように分厚い毛皮の服を着ていない。格好は冬の格好のようではあるが、この極寒地獄のようなところに似つかない服装だ。近づいていけばいくほど、その異様さは確かに強烈なインパクトで視界に入った。
10歳になるかならないかの少女である。髪は白くて顔はれっきとした東洋人のそれだ。その顔立ちも異様だが、茶色の長袖のつなぎを着用しているその姿はもはや完成された人間型のアンドロイドを彷彿とさせるものだとしておこうか。
「?」
謎の少女がコチラに気づいた。かなり低い身長だ。少女の黒い目と目が合った瞬間に目の前が真っ白になった。その時にやっと気がついた。これは夢である。