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ヴァリアブル・ナイツ

作者: 究極の蕎麦
掲載日:2026/10/27

十月の夕暮れ時。私立鳳(おおとり)学園高等部の二階、二年の教室には、ねっとりとした西日が差し込んでいた。

放課後を告げるチャイムはとうに鳴り響き、部活動へ向かう生徒たちの足音や、下校するグループのにぎやかな笑い声が、開け放たれた窓から遠く聞こえてくる。

「はぁ……なんで俺がこんな目に」

羽吹テンカは、誰もいなくなった教室の片隅で、一人パイプ椅子に深く腰掛け、シャープペンシルの尻で机を小刻みに叩いていた。

運動神経だけは学年トップ、生身の喧嘩をさせれば右に出る者はいないという自負はあるが、座学に関しては壊滅的だった。今日の数学の小テストで一桁の点数を叩き出した結果が、この暗い居残り処分である。プリントの白地に、意味のないロボットの落書きがどんどん増えていく。

「終わったか、羽吹」

ガラリとドアを開けて入ってきた担任が、テンカの投げやりな答案用紙を回収しながら苦笑した。

「お前のポテンシャルは認めとるが、進級できなきゃただの動けるニートだぞ。さあ、帰っていい」

「あざーっす。二度と数学なんて学問がこの世に生まれないことを祈ります」

カバンを雑に肩にかけ、ようやく解放されたと教室を後にしようとした、その瞬間だった。

地響きのような音が、鳳学園の古い校舎を根底から揺るがした。

バリバリバリ――!!!

それは雷鳴とは明らかに異なる、まるで「空間そのものが無理やり引き裂かれた」かのような、不快な金属音を孕んだ轟音だった。

テンカが思わず窓の外へ目をやると、驚愕の光景が視界に飛び込んできた。

先ほどまで燃えるような茜色だったはずの夕空が、斑点のように、毒々しい紫色へと染まっていく。その裂け目から、這い出てくるようにして「それ」は現れた。

ビルほどもある巨大な、結晶体と金属が融合したかのような異形の生命体。

テンカの拙い知識には存在しない怪物――『グローム』。

「なんだよ……あのアニメのCGみたいな怪物は……っ!」

パニックは一瞬で学園全体を飲み込んだ。校庭からは悲鳴が上がり、廊下では生徒たちが押し合いへし合いしながら階段へと殺到していく。

呆然とするテンカのポケットの中で、突然、スマホが尋常ではない熱を持ち始めた。

「あつっ!?」

飛び退くようにして取り出したスマホの画面は、完全にフリーズしていた。いや、違う。見たこともない複雑な幾何学模様の幾何学パターンが高速でスクロールし、やがて一本の通信回線が強制的に立ち上がる。

暗転した画面に映し出されたのは、息をのむほど鮮やかな、深い青色をした髪の少女だった。

どこか儚げで、けれど強い意志を宿した瞳が、画面越しにテンカを真っ直ぐに見つめている。

『お願い……聞こえる? 私を見つけて。学園の旧校舎の地下に……この世界を救う「翼」があるの。あなたにしか、動かせないの……!』

「おい、ちょっと待て! 君は誰だ? 地下って、旧校舎ってあの一生立ち入り禁止の――」

ブツリ、と非情な音を立てて通信が切れた。スマホの画面は小テストの点数を嘆く母親からのLINE画面に戻っている。

しかし、テンカの胸の奥で、ドクドクと心臓が早鐘を打ち始めていた。

「あなたにしか、動かせない」

根拠のない、けれど強烈な直感がテンカの背中を押した。あんな美少女からのSOSを無視して、一人でコソコソ逃げるなんて、羽吹テンカのプライドが許さない。

「くそっ、行くしかないか!」

テンカは抜群の身体能力を爆発させ、避難する生徒たちの波を逆走した。

「おい羽吹、どこに行くんだ! 上へ逃げろ!」という部活仲間の声を置き去りにし、ひび割れていく廊下を猛然とダッシュする。

目の前で天井のコンクリートが崩落してきた。テンカは歩みを緩めるどころか、さらに加速し、スライディングでその隙間を滑り抜けた。倒れてきた用具入れを足場に、パルクールさながらの跳躍で踊り場へと飛び移る。

鳳学園の敷地の最奥にある、半ば廃墟と化した旧校舎。

その固く閉ざされた錆びた鉄の扉を、テンカは生身の体当たりで強引にこじ開けた。

軋んだ悲鳴を上げる扉の向こうには、埃っぽい地下へと続く階段があった。一段飛ばし、いや三段飛ばしで暗闇を駆け下りる。

最下層に到達した瞬間、視界が劇的に開けた。

「……マジかよ」

そこは、地上の古めかしい学園からは想像もつかない、冷たい金属と無数のケーブルで埋め尽くされた、広大なハイテクドックだった。

その中心、巨大な固定アームに支えられて鎮座していたのは、白と群青のコントラストが美しい、鋭利なシルエットを持つ人型ロボット――『ヴィルキス・ヴァリアブル』。

そして、開け放たれたコックピットのハッチから、先ほどの青い髪の少女が、身を乗り出すようにしてテンカを見下ろしていた。

「来てくれたんだ……!」

少女の瞳に、明らかな安堵の光が宿る。

「私はアイリス。この世界の調律者。……説明は後! 早くここに乗って! 奴らがここにも気づいた!」

ドゴォン!!と大きな音がして、ドックの強固な天井に太い亀裂が入った。グロームの不気味な触手が、肉食獣の牙のようにテンカたちを目がけて突き刺さってくる。

「テンカ、そのレバーを引いて! 機体を『フライヤー(飛行形態)』に変形させて、ここから脱出するの!」

「初めて乗るのに無茶言うな! ――でも、座って見てるよりはマシだ!」

テンカはハッチに飛び込み、パイロットシートへと滑り込んだ。

シートは驚くほどテンカの体にフィットした。狭いコックピット。すぐ後ろの補助席にはアイリスが滑り込んできており、彼女の甘く、少し焦げたような不思議な髪の香りがコックピット内に充満する。

操縦桿を握った瞬間、テンカの脳内に、見たこともない英語と数式の羅列がダイレクトに流れ込んできた。しかし、なぜか理解できる。どう動かせばいいか、体が勝手に知っている。

「フライヤー・オン!!」

テンカは咆哮とともに、中央の可変レバーをガチャリと力任せに押し込んだ。

ヴィルキスのシステムが爆発的に覚醒する。眩い駆動光がコックピットを包み、人型の四肢が流れるような有機的挙動で折り畳まれ、超音速の翼へと姿を変えていく。

背後のスラスターが蒼い炎を噴き上げ、固定アームを強引に引きちぎった。

ズガガガガッ!と崩落する地下ドックの天井を真っ向から突き破り、ヴィルキス・ヴァリアブルは一筋の閃光となって、夕闇の鳳学園の上空へと飛び出した。

「すごい……! 初稼働なのに完全にシンクロさせてる……!」

背後でアイリスが感嘆の声を漏らす。その体温が、シート越しに伝わってくるようだった。

しかし、感傷に浸る時間は一瞬もなかった。

鳳学園の上空に広がる紫色の裂け目から、羽虫のような小型グロームの編隊が、街を見下ろすようにして急降下を開始していた。

「テンカ、あの敵の群れを食い止めて! 下にはまだ、逃げ遅れた生徒たちがたくさんいる!」

「わかってる……! 空中戦なんてやったことねえけど、要は、アイツらを近づけなきゃいいんだろ!」

テンカは操縦桿を引き絞り、ヴィルキスを敵の編隊のど真ん中へと直進させた。マッハを越える速度での正面衝突コース。アイリスが思わず目瞑ったその瞬間、テンカは不敵に笑って叫んだ。

「変形ッ!!」

超高速飛行の慣性を維持したまま、テンカは可変レバーを逆方向へ叩き込んだ。

翼が瞬時に強靭な四肢へと戻る――【グラップル形態(人型)】。

凄まじい急制動のGが二人の体に襲いかかるが、テンカの卓越した操縦センスが、機体のブレを完全に抑え込んだ。追従しきれず、目の前でスローモーションのように通り過ぎていく敵の編隊。

ヴィルキスの右腕が、背中にマウントされていた『高周波ブレード』を引き抜く。

「ハァァァァッ!!」

テンカの叫びと連動するように、ヴィルキスは夕空を真っ二つに切り裂くような鮮烈な横一文字の軌跡を描いた。

ズババババァン!!!

すれ違いざまの一閃。高周波の刃に触れた小型グロームたちが、火花を散らしながら次々と爆発、霧散していく。鳳学園の空に、まばゆい爆炎の大輪の華が咲き誇った。

「やった……?」アイリスが小さく声を漏らす。

だが、本当の恐怖はそこからだった。広がる爆煙を強引に割って、それまでの小型とは比較にならない、ビルほどもある『大型グローム』が姿を現したのだ。

その中心核には、不気味に赤く明滅するコアが見える。

大型グロームはヴィルキスを感知すると、その全身の結晶体を発光させ、破壊光線を放つべくエネルギーをチャージし始めた。コックピットのアラートが赤く点滅し、危険を知らせる電子音が鳴り響く。

「テンカ、敵のチャージ出力が上がってる! 一度フライヤーに戻って回避を――」

「いや、避けたところで、後ろの学園が消し飛ぶだけだろ!」

テンカはコックピットのコンソールを殴るように叩いた。画面を睨みつけ、遠距離武器のアイコンを探すが、どれもロックがかかっていて起動しない。

「遠距離武器……ないのかよ!? 融通効かねえな……仕方ない、せいっ!!」

テンカはグラップル形態の強靭なモーター出力を限界まで引き上げ、右腕に握った巨大な高周波ブレードを、まるで巨大な投げ槍のように、大型グロームのコア目がけて全力で投げつけた。

「ええっ!? 剣を投げるパイロットなんて見たことない――!」

アイリスの驚愕の叫びを置き去りに、放たれたブレードは超音速の衝撃波を纏いながら一直線に飛行した。

それは大型グロームが放ちかけていた光線の光軸を真っ向から引き裂き、チャージ中の膨大なエネルギーごと、むき出しの赤いコアへと完璧に突き刺さった。

ドッゴォォォォォン!!!

コアを狂わされた大型グロームは、自らが溜めていたエネルギーを暴発させ、空一面を覆うほどの大爆発を起こした。その衝撃波が雲を吹き飛ばし、残っていた小型の群れも、親玉を失ったことで光の粒子となって消滅していく。

鳳学園の上空には、静寂と、いつもの穏やかな夕焼けが戻っていた。

武器を失い、空中にただ静止するヴィルキス・ヴァリアブル。

コックピットの中、激しいアラート音の代わりに、テンカとアイリスの荒い呼吸の音だけが響いていた。

テンカは操縦桿からそっと手を離し、額の汗を拭った。生きている。街も、学園も、守り切った。

後ろの席から、アイリスがそっとテンカの肩に手を置いた。その細い指先は、まだ恐怖と興奮でかすかに震えている。

「ブレードを投げるなんて、本当に無茶苦茶。……でも、凄いよ、テンカ。あなたのおかげで、この世界は滅びずに済んだ。……でもね、これは始まりに過ぎないの」

アイリスは少し寂しげに微笑み、テンカの目を真っ直ぐに見つめてきた。バックミラー越しに視線が交差する。

「 敵の本体……『グローム・マスター』は、まだ次元の向こう側で息を潜めている。私と一緒に、この世界を護るために戦ってくれる……?」

テンカは少しだけ肩をすくめ、不敵な笑みを浮かべた。

「世界とか言われてもよく分かんねえけどさ。君みたいな美少女にそんな顔で頼まれて、断る男がいたら見てみたいね。付き合ってやるよ、アイリス」

「……っ」

アイリスは一瞬驚いたように目を見張り、それから、夕焼けよりも少しだけ赤い顔をして、ぷいっと視線を逸らした。

「……調子いいんだから。でも、よろしくね、私のパイロット」

こうして、普通の居残り高校生だった羽吹テンカの、世界の運命と一人の少女を巡る、長い放課後の戦いが幕を開けた。

〜第二幕〜

大戦闘から一夜明けた、翌朝。

鳳学園の周辺は、昨日の爆発の影響で一部の道路が黄色い立ち入り禁止テープで封鎖されていた。しかし、制服姿の生徒たちは、何事もなかったかのようにその脇を通り抜けて登校していく。

「なぁ、昨日の夕方のあれ、見たか?」「空が紫色になってさ、超リアルな映画の撮影かと思ったわ」

通学路のあちこちから、昨日の異変についての噂話が聞こえてくる。だが、誰も『巨大な金属の怪物』や『白いロボット』を見たとは言わない。情報統制か、あるいはアイリスが言っていた「調律」による認識阻害の力なのだろうか。

テンカはあくびを噛み殺しながら、いつもの教室の席についた。

体には、昨日ヴィルキスを操縦した時の、あのシートに押し付けられるような心地よい疲労感がかすかに残っている。

「夢じゃなかったんだな、あれ……」

自分の手のひらをじっと見つめていると、ガラリと前方のドアが開いて、担任の先生が入ってきた。

「おい、全員席につけー。朝のホームルームを始めるぞ。……えー、実は今日から我がクラスに、急な転入生が来ることになった。イギリスからの帰国子女だそうだ。みんな仲良くするように」

先生の手招きに応じて教室に入ってきた少女の姿を見て、テンカは危うく椅子からひっくり返りそうになった。

艶やかな、深い青色をした髪。気品すら感じさせる白い肌。そして、昨日テンカの魂を揺さぶったあの神秘的な瞳。

制服をきっちりと着こなしたその少女は、黒板の前に立つと、真っ直ぐにテンカの目を見つめて、小さく微笑んだ。

「……アイリス・ブライトンです。よろしくお願いします」

教室中が「おい、とんでもない美少女が来たぞ!」「マジかよ、鳳学園の奇跡だろこれ!」とドッと沸き立つ。男子生徒たちが色めき立つ中、アイリスは先生に指定された席――なんと、テンカのすぐ隣の空席へと、凛とした足取りで歩いてきた。

カバンを机に置き、席に腰下ろしたアイリスは、前を向いたまま、周囲に聞こえないような蚊の鳴くような小声で囁いた。

「おはよう、テンカ。……挨拶の暇はなさそう。私の端末に、もう『奴ら』の接近アラートが出てる。今日の敵は、昨日よりずっと速い」

キィィィィィン――!!

その言葉を証明するかのように、学園の上空を、ガラスが割れんばかりの超音波のような風切り音が包み込んだ。窓がカタカタと小さく震え始める。だが、先生もクラスメイトも、それに気づく様子はない。

(クソ、もう来やがったのかよ!)

テンカは思考を高速で巡らせた。勉強はできないが、こういう時の悪知恵とハッタリのキレだけは学年トップだ。テンカはすっと立ち上がり、大袈裟にお腹を押さえて顔をしかめた。

「せ、先生……すいません、ちょっと朝からお腹が猛烈に痛くて。さ、サボりじゃなくて、マジで限界です……!」

「お、おう、羽吹、大丈夫か? 顔色が悪いぞ(※ただの寝不足)。すぐに保健室へ――」

「ブライトンさんも、さっきからお腹押さえてて体調悪そうなんです! 帰国子女で場所が分からないと思うんで、俺が連れていきます(?)!」

テンカは隣で呆然としているアイリスの手をガシッと掴むと、困惑する先生の声を置き去りにして、脱兎のごとく教室を飛び出した。

廊下に出た瞬間、二人は旧校舎の地下ドックへと全力疾走を開始する。

「ちょっとテンカ、引っ張る力が強すぎるってば……! あと、お腹が痛いって言い訳、もうちょっとマシなのはなかったの!?」

「うるせえ、一刻を争うんだろ!それと、あるんだよな? 」

「……え? 何のこと?」

「武器だよ、武器! 昨日、剣を投げちゃって素手なんだから、なんか新しいやつ用意してんだろ!?」

地下ドックに滑り込むと、そこには眩い照明の下で覚醒を待つヴィルキス・ヴァリアブルが佇んでいた。

その両肩には無骨な『マルチロック・ミサイルポッド』が、そして右手にはスマートな形状の『高出力ビームライフル』がマウントされている。

「ふふ、ちゃんと用意してるわよ。さてと、起動しますか! 両方の兵装データをヴィルキスにダイレクト・リンク!」

アイリスが手元の端末を操作すると、ヴィルキスがガシャイン!と重厚な起動音を響かせた。

「フライヤー・オン!!」

二人がコックピットに飛び乗り、テンカが操縦桿を引き絞ると、フル武装を搭載したヴィルキスは、昨日以上の猛烈な加速で鳳学園の地下から大空へと飛び立った。

雲海を突き抜けたテンカの視界に、一筋の銀光が飛び込んできた。

それは昨日の異形の怪物グロームではない。スマートな、けれどどこか凶悪なシルエットを持つ、白銀色の人型ロボットだった。背中に鋭利な可変翼を背負っている。

「グロームじゃない……あれは『ヴァルキュリア・フレーム』。敵の組織が送り込んできた、対ヴィルキス用のエース機よ!」

後ろの席でアイリスが叫ぶ。

白銀の機体はヴィルキスの出現を察知すると、こちらのミサイルの射程外から、空間を歪めるほどの超高速で急反転。一瞬でヴィルキスの真後ろ――死角へと滑り込んできた。

「そこかっ!」

テンカはあえて機首を跳ね上げ、空中急ブレーキ。ドゴォッ!と機体が軋むほどの衝撃の中、中央の可変レバーを叩き込んだ。

超高速飛行の慣性を残したまま、翼が強靭な四肢へと姿を変える――【グラップル形態(人型)】、起動!

追従しきれず、目の前に躍り出た白銀の機体。テンカの野生的な動体視力がその胸元を完璧に捉え、新武装の『高出力ビームライフル』の銃口を、ゼロ距離で突きつけた。

「全弾、持ってけぇぇ!」

ズドォォォォォン!!!

至近距離から放たれた極太の光条が、白銀の機体のシールドを真っ向から焼き砕き、その巨体を雲海へと吹き飛ばした。だが、敵のエースは伊達ではない。激しく火花を散らしながらも、空中で強引に姿勢を立て直した。

コックピットの通信回線に、冷徹で、どこか焦りの混じった少女の声が割り込んでくる。

『……驚いたな。調律者の遺産をここまで動かせるパイロットが、この地球(ほし)の、しかもただの学生の中にいたとは。私の名は「シエル」。ヴィルキス、ここでへし折ってあげる!』

白銀の機体――シエルは、損傷したシールドをパージ。背中のスラスターを最大出力で発火させ、今度は残像を残すほどのジグザグ移動で肉薄してくる。その手には、眩しく輝く光線剣が握られていた。

「懐に飛び込めば安全だとでも思ったか? ――甘いんだよ!」

テンカは突進してくるシエルを恐れるどころか、不敵に笑ってマルチロック・ミサイルポッドの全トリガーを引き絞った。

ヴィルキスの全身から、数十発のマイクロミサイルが白煙の尾を引いて一斉に撃ち出される。それはまるで、空に広がる光の網のように、シエルの移動先をすべて先読みして包み込んでいく!

ドババババババババババガァァァァン!!!

「なっ……これほどの至近距離で、全弾一斉発射だと……!? 狂っているのか!」

通信越しにシエルの驚愕の悲鳴が響く。空一面を埋め尽くす連続爆破。シエルのヴァルキュリア・フレームは、無数のミサイルの直撃を浴び、機体各所から黒煙を噴き上げて激しく揺らいだ。

「くっ、ここまでか……! だが覚えておくがいい、羽吹テンカ。私を倒しても、我がボスがこの街を……」

シエルの機体は爆発の衝撃で操縦不能に陥り、そのまま背後の次元の裂け目へと吸い込まれるように撤退していった。

キィィィン……と、引き裂かれていた空の亀裂が閉じていき、鳳学園の上空には、再びいつもの穏やかな朝の青空が戻ってくる。

「……勝った。テンカ、本当にあなたって人は……私の見込んだ通り、最高のパイロットだよ」

アイリスはホッとしたように胸をなでおろし、コックピットの中でテンカに向かって最高の笑顔を向けた。

テンカは機体を自動ホバリングに切り替え、ふぅと息を吐いた。そして、バックミラー越しにアイリスの顔を見て、無意識に言葉が漏れた。

「……改めて見ると、可愛いよなぁ」

「――えっ? ……な、何が?」

アイリスは最初、装備を新調した機体のことかと思ったが、テンカの視線が自分に真っ直ぐ向いていることに気づくと、一瞬でその白い頬が真っ赤に染まった。

「……っ、な、なに急に言ってるのバカ! 私、私は世界の調律者なんだから、可愛いとかそういうのは……っ」

慌てて手元の端末で顔を隠すが、隠しきれていない耳まで真っ赤になっている。

「も、もう! ほら、早く機体を格納して教室に戻るよ! 授業中で、しかも転校初日なのに遅刻なんて、全部テンカのせいなんだからね!」

ぷいっと後ろを向いてしまうアイリスだったが、その背中が小さく震えているのを、テンカは少し楽しそうに、そして愛おしそうに見つめていた。

〜第3幕〜

地下ドックにヴィルキスを格納し、エレベーターで地上へと戻ってきたテンカとアイリスは、急ぎ足で校舎の廊下を歩いていた。

いくら敵を撃退したとはいえ、鳳学園の日常の中では、二人は単なる「ホームルーム中に教室を飛び出した不届き者」である。

「おい羽吹! お前、転校生のブライトンまで連れて、今までどこに行ってたんだ!いやまぁ、トイレなのはわかってるんだが…長すぎだろう!」

廊下の向こうから、腕組みをした担任の先生が怒り心頭といった様子で歩いてくるのが見えた。

アイリスがビクッと肩を揺らす。彼女は異世界の怪物相手には凛と戦えるのに、地球の学校の先生という存在にはめっぽう弱いらしい。

テンカはとっさにアイリスの前に一歩踏み出し、彼女を背中に隠すようにお腹を押さえて顔をしかめた。

「すいません先生……。さっき言った通り、マジで朝からお腹を壊してて。トイレから一歩も出られないレベルだったんです。彼女は親切に、待っててくれてて…全部俺が悪いんです」

「お、お腹を壊してる……? トイレから出られないって、お前そんなに酷いのか……」

先生の顔が、怒りから同情、そして少しの困惑へと変わる。テンカのあまりに真に迫った(小テストから逃げ続けて培った)演技力の勝利だった。

その横で、アイリスはテンカが自分の前に立って守ってくれたことへのドギマギと、廊下で大真面目に「お腹を壊してる」と主張するテンカのシュールさのダブルの衝撃で、さらに顔を真っ赤にしていた。

「おい、ブライトンも顔が真っ赤じゃないか! 熱があるんじゃないか? 二人とも、授業なんて気にしなくていいから、今すぐ保健室へ行け!」

「あざっす、先生……。お言葉に甘えます……」

テンカはアイリスの腕を軽く引き、先生の視線から逃れるように廊下の奥へと歩き出した。

誰もいない静かな廊下。アイリスは真っ赤な顔のまま、テンカの脇腹をぽかぽかと拳で小さく小突いてきた。

「ちょっとテンカ……! 『お腹を壊してる』なんて先生に大声で言わないでよ! 女の子の私の前で、もうちょっとオブラートに包んだ言い訳はなかったの!?」

「ハハ、ごめんごめん。でも、これで午前中の授業は堂々とサボれるぞ。二人っきりの保健室だ、まぁ先生がいなければだけどせ。」

テンカがいたずらっぽく笑うと、アイリスは呆れたように小さくため息をつき、それから嬉しそうにクスッと笑った。

「もう……相変わらず無茶苦茶。でも、ありがと。守ってくれて」

保健室の引き戸をそっと開けると、幸いなことに養護の先生は出張中で不在だった。

二つの白いベッドが並ぶ、静かで少し消毒液の匂いがする室内。白いカーテンの隙間から、穏やかな朝の光が差し込み、床に長い四角い光の模様を作っている。

テンカはパイロットシートとは違う、背もたれのない丸椅子に腰掛け、アイリスはベッドの端に腰を下ろして、制服のスカートの裾を小さく整えた。

戦いの中では『世界の調律者』として凛としていた彼女が、今はただの、同じ歳の少し不器用な女の子に見える。

沈黙が流れる室内で、アイリスが膝の上で両手を小さく握りしめながら、ぽつりと言った。

「ねえ、テンカ」

「ん?」

「私、ずっと一人だったの」

彼女は自分の上履きを見つめたまま、静かに言葉を紡いでいく。

「次元の狭間で、色んな世界が壊れていくのをただ観測して、それを止めるためにヴィルキスと一緒に世界を渡り歩いて……。誰も私の名前を呼んでくれないし、誰も私を助けてくれなかった。戦うのは当たり前で、傷つくのも当たり前。それが私の役割だからって、ずっと思ってた」

アイリスの青い瞳が、朝の光を浴びて少しだけ潤んでいるように見えた。

「でも、昨日テンカが私の前に現れて、初めて操縦桿を握ってくれて……。今日も、私の手を引いて学校から連れ出してくれた。お腹を壊してるなんて変な言い訳だけど、先生から私を隠してくれたとき、なんだか……すごく安心しちゃった。私、この世界に来て、テンカに会えて、本当によかったな」

アイリスは顔を上げ、今度は照れずに、テンカの目を真っ直ぐに見つめた。

その表情は、ヴィルキスのどんな高性能なディスプレイに映る大空の景色よりも、綺麗だった。

テンカは丸椅子から立ち上がり、アイリスの目の前に歩み寄った。そして、少しだけ気恥ずかしそうに頭を掻きながら言った。

「ま、アイリスがどうしてもって言うなら、これからもヴィルキスに乗ってやってもいいよ」

「え……?」

「その代わり、俺は勉強がからっきしだからさ。学校の宿題は全部お前が見ろよな? あと……」

テンカは少し屈んで、アイリスの顔を覗き込んだ。

「もう一人で抱え込んで、あんな泣きそうな顔すんな。せっかく隣の席になったんだからさ、お前が暗い顔してると、俺の飯がマズくなる」

「テンカ……」

アイリスの瞳から、一粒の涙がポロリとこぼれ落ちた。けれど、その表情は泣いているのではなく、心からの喜びで溢れていた。

彼女は小さく鼻をすすり、テンカの制服の袖をきゅっと掴んだ。

「うん。……約束する。テンカの勉強、全部厳しく見てあげるんだから。覚悟しなさいよね」

「へいへい、お手柔らかにお願いしますよ、お嬢様」

しばらくの間、二人は窓の外から聞こえる、体育の授業を受ける生徒たちの賑やかな声を聞いていた。それは、二人が命を懸けて守り抜いた、かけがえのない平穏な日常の音だった。

アイリスは恥ずかしそうに涙を拭うと、いつもの少し勝気な笑顔を取り戻した。

「さあ、お腹の痛い羽吹くん。少し休んだら、お昼休みに屋上で一緒にお弁当食べよ? 私、この日本の『焼きそばパン』ってやつを食べてみたいんだ」

「了解。購買の争奪戦を勝ち抜いて、極上の焼きそばパンを調達してくるよ」

世界を脅かす影は、まだ完全に消え去ったわけではない。撤退したシエルも、また襲ってくるだろう。

けれど、テンカの胸に恐怖はなかった。守るべき大切な人が、すぐ隣にいるのだから。

〜第4幕〜

静寂の保健室での約束から数日。テンカとアイリスの距離は、クラスメイトたちも遠巻きに冷やかすほどに縮まっていた。

昼休みになれば屋上で昼食を分け合い、放課後になればテンカの壊滅的な数学の宿題をアイリスが隣で呆れながら教える。世界を救うパイロットと調律者という重い肩書を忘れられるその日常は、二人にとって何よりも愛おしい時間になっていた。

しかし、つかの間の休息は、突如として破られる。

木曜日の午後、五時。放課後の夕日が教室をオレンジ色に染め上げていた、その時だった。

数日前とは比較にならないほどの強烈な「空間の軋み」が、学園全体を襲った。

キィィィィィン――!!!

「テンカ、これ……っ!」

アイリスが瞬時に手元の端末を開く。画面には、血のように真っ赤な警告ログが激しく明滅していた。

「シエルよ……! 前回の傷をもう治して、今度はグロームの軍勢を引き連れて学園の真上に直接転移してきた!」

「チッ、しつこいアマだな……! アイリス、行くぞ!」

二人は荷物を放り出し、慣れた足取りで旧校舎の地下ドックへと駆け下りた。

しかし、今回の敵はヴィルキスの出撃を待ってはくれなかった。地下ドックの天井が凄まじい爆音とともに崩落し、大量の瓦礫がヴィルキスの足元を直撃する。

「フライヤー・オン!!」

テンカは崩れ落ちるコックピットに飛び込み半ば強引にヴィルキスを発進させた。スラスターを最大出力で噴射し、瓦礫の雨を突き抜けて鳳学園の上空へと舞い上がる。

だが、雲の上に広がっていたのは、絶望的な光景だった。

無数の小型グロームが空を埋め尽くし、その中心に、前回テンカが撃退したはずの白銀色の機体――シエルの『ヴァルキュリア・フレーム』が、光線剣を抜いて待ち構えていたのだ。しかも、その機体は怪しげな黒い霧を纏い、前回以上の禍々しい出力を放っている。

『待っていたよ、羽吹テンカ。そして調律者の少女。私のプライドを汚した報い、この学園ごと消し去って清算させてもらう!』

「お前こそ、前回のミサイルで懲りてねえみたいだな! 返り討ちにしてやるよ!」

テンカはマルチロック・ミサイルポッドのトリガーを引き絞った。しかし、放たれたミサイルはシエルの機体に届く直前、彼女の周囲に展開された強力な「漆黒のエネルギー障壁」によって、すべて虚しく空中爆発を起こした。

「なにっ……!? ミサイルが効かねえ!」

『ふはは! これが我が主より授かった、次元を歪める暗黒の力だ! 防御だけではないぞ!』

シエルの白銀の機体が、目にも留まらぬ速度で加速した。ジグザグ移動どころではない。まるで空間をワープしているかのように、ヴィルキスの視界から完全に消失する。

「テンカ、後ろ!!」

アイリスの悲鳴。テンカが直感で操縦桿を真横に倒した瞬間、背後から迫ったシエルの光線剣が、ヴィルキスの右主翼を容赦なく切り裂いた。

ギガガガガガッ!!

激しい火花とともに、コックピット内のアラートがけたたましく鳴り響く。

「くそっ、速すぎる……! 捉えきれねえ!」

テンカはグラップル形態(人型)に変形し、ビームライフルを連射した。しかし、シエルはそのすべての射線を最小限の動きで回避し、逆にヴィルキスの死角へと回り込んでいく。

ドカァン!!

シエルの強烈な蹴りがヴィルキスの胸部を直撃し、テンカたちの機体は鳳学園の校庭へと向かって真っ逆さまに叩きつけられた。

凄まじい衝撃がコックピットを襲い、テンカはシートに強く打ち付けられて息が止まりそうになる。後ろの席では、アイリスが痛みに耐えるような小さな悲鳴を上げた。

「アイリス! 大丈夫か!?」

「う、うん、私は平気……。でも、ヴィルキスのフレームに深刻なダメージが……。変形機構が、衝撃で一時的にロックされてる!」

土煙が舞う鳳学園の校庭。生徒たちはすでに避難を完了しているが、テンカたちの目の前には、慣れ親しんだ校舎がそびえ立っている。

そこへ、空からゆっくりとシエルの白銀の機体が降下してきた。その光線剣の先は、冷酷にヴィルキスのコックピットに向けられている。

『終わりだ、羽吹テンカ。お前の動きはすべて見切った。その調律者の少女を渡せば、お前だけの命は助けてやってもいいが?』

通信越しに響くシエルの嘲笑。

テンカは操縦桿を握り直そうとしたが、右腕のレバーが火花を散らして動かない。機体は沈黙し、立ち上がることすらままならなかった。

(クソ……俺が、負けるのか? 勉強もできねえ俺が、唯一自信のあったこのロボットの操縦でも、何一つ通用しねえってのかよ……)

テンカの心に、初めて「敗北」の恐怖と、己の無力さに対する昏き迷いが去来した。自分がここで死ねば、後ろにいるアイリスはどうなる。あの優しい笑顔を守ると、保健室で約束したばかりなのに。

『さあ、答えろ。少女を差し出すか、この学園ごと塵になるか!』

シエルの光線剣が激しく発光し、最大出力のエネルギーがチャージされ始める。まさに絶体絶命の危機だった。

〜第5幕〜

「おい、答えろ羽吹テンカ。その少女を差し出して命乞いをするか、この学園ごと塵になるか!」

シエルの冷酷な宣告が、ノイズ混じりのスピーカーから響き渡る。

夕闇が迫る鳳学園の校庭。立ち込める土煙の向こうで、白銀の『ヴァルキュリア・フレーム』が掲げた光線剣は、すでに一撃で校舎ごとヴィルキスを消し去るほどの、禍々しい漆黒のエネルギーを宿していた。

コックピットのコンソールは赤く点滅し、警告音がテンカの鼓膜を容赦なく急き立てる。

右腕の操縦レバーは火花を散らしたままびくともせず、ヴィルキスの巨体は地べたに這いつくばったままだ。

(クソっ……動けよ……動いてくれよ……!)

テンカは歯を食いしばり、折れんばかりの力でレバーを引いた。だが、機体は不快な駆動音を立てるだけで立ち上がることすらできない。

全身を冷たい汗が伝う。勉強ができない俺が、ただ運動神経が良いだけが取り柄の俺が、ロボットに乗って「世界を救う」なんて、最初から大間違いだったんじゃないか。そんな昏い迷いが、テンカの思考を支配しようとしていた。

その時だった。

後ろの補助席から、カチャリ、とシートベルトを外す音が聞こえた。

「……アイリス?」

テンカがバックミラーを見るより早く、背後から伸びてきた小さな両手が、テンカが握る操縦桿の上からそっと重ねられた。

驚くほど冷たくて、けれど、強く震えている手。

アイリスは後ろからテンカの背中にしがみつくようにして、その白い額をテンカの肩に預けていた。

「ア、アイリス、お前、何して――」

「私ね、怖かったの」

アイリスの声は小さかったが、ノイズだらけのコックピットの中で、驚くほど澄んでテンカの耳に届いた。

「色んな世界が滅びるのを見てきた。ヴィルキスが壊れて、パイロットが死んでいくのも、何度も見てきた。だから、この世界に来たときも、また同じなんだって思ってた。誰かと仲良くなっても、どうせすぐにお別れが来ちゃうんだから、一人でいいって……」

彼女の手の震えが、重ねられた手のひらを通じてテンカの肌へと伝わってくる。

「でも、違った。お腹を壊してるなんてめちゃくちゃな言い訳で先生から隠してくれたとき、一緒に焼きそばパンを食べたとき……私、生まれて初めて、明日が来るのが楽しみになったの。勉強を教えてる時間が、ずっと続けばいいのにって思っちゃったの」

アイリスは顔を上げ、バックミラー越しにテンカの目を真っ直ぐに見つめた。

その青い瞳には、涙が溜まっていた。けれど、そこにあるのは絶望ではない。テンカという一人の少年に対する、絶対的な信頼の光だった。

「正直に言うね…世界なんて、どうなってもいい。私は……テンカが死んじゃうのが嫌。テンカと一緒に、明日を生きたい。お願い、テンカ……私に、あきらめない理由を頂戴……!」

「……アイリス」

その言葉が、テンカの胸の奥で燻っていた火種に、爆発的な油を注いだ。

己の無力さへの迷いも、敗北への恐怖も、すべてが吹き飛んだ。

(何を格好つけて、一人で勝手に背負い込んでやがったんだ、俺は)

世界を救うだなんて、そんな大層なことは知ったことか。

目の前で泣きそうな顔をしているこの愛おしい女の子を、明日も隣の席で笑わせる。そのために、羽吹テンカはここにいる。

「……アイリス、勉強を全部教えてくれるって約束、忘れてねえだろうな」

「え……?」

「俺は、お前と明日も焼きそばパンを半分こする。そのためなら……神様だろうがラスボスだろうが、何回だってぶっ飛ばしてやるよ!」

テンカの叫びとともに、彼の手のひらから、これまでにない強烈な精神エネルギー――『気合』がヴィルキスの操縦桿へと流れ込んだ。

キィィィィィン――!!!

ヴィルキス・ヴァリアブルのシステムが、アイリスの『調律者』としての本能と、テンカの『命懸けの覚醒』によって完全同調を果たす。

機体の全システムが強制再起動。割れたコンソールから、青白い光が奔流となって溢れ出した。

【システムエラー:リミッター解除。アブソリュート形態を承認します】

ヴィルキスの全身の装甲がスライドし、内部のクリスタルフレームが眩い黄金色の輝きを放ち始める。ロックされていた変形機構が爆音とともに解放され、右主翼の損傷が、光の粒子によって瞬時に修復されていく。

『な、なんだその光は!? 機体出力が……測定不能だと!?』

空中のシエルが驚愕の声を上げる。

「いくぞ、アイリス! 俺たちの戦いは、これからだ!」

「うん……! ヴィルキス、アブソリュートモード、起動!」

テンカが操縦桿を力強く押し進めると、黄金の光を纏ったヴィルキスは、地響きを立てて校庭の大地を蹴り上げた。重力を無視したかのような超絶的な加速で、白銀の機体目がけて一直線に飛び立つ。

これこそが、ボーイ・ミーツ・ガール。

一人の少年と一人の少女が出会い、お互いのために命を懸けたとき、世界を変える真の翼が覚醒する。

〜第6幕〜

黄金の輝きを纏ったヴィルキス・アブソリュート形態の力は、圧倒的だった。

黒い暗黒の力を得ていたはずのシエルの『ヴァルキュリア・フレーム』だったが、覚醒したテンカの超絶的な操縦センスの前には、その神速の動きすら止まって見えた。

高出力ビームライフルの光条がシエルの闇の障壁と周りの小型グローム達を一撃で消し飛ばし、マルチロック・ミサイルの全弾発射が彼女の退路を完全に断った。

『バ、バカな……! 私の暗黒の力が、ただのガキの「気合」ごときに凌駕されるなど……っ!』

シエルは機体を大破させながらも、間一髪で次元の裂け目へと逃げ延びていった。

戦いは、一時的な勝利で幕を閉じた。

しかし、本当の絶望はそこからだった。シエルが撤退した鳳学園の上空には、閉じることのない巨大な紫色の「世界の傷跡」が残されていた。そこから、グロームの親玉である『グローム・マスター』の禍々しいプレッシャーが、大気そのものを震わせながら地球へと漏れ出してきている。

「……ついに来るのね」

その日の放課後。夕日が鳳学園の校舎を赤黒く染める中、テンカとアイリスは誰もいない屋上のフェンス際に立っていた。

アイリスは風に青い髪を揺らしながら、手元の端末の画面を見つめていた。画面には、この世界の寿命を示す数字が、砂時計のように刻一刻と減っていく様子が表示されている。

「テンカ。グローム・マスターは、あの次元の裂け目の向こう……『世界の狭間』にいる。あいつを倒さない限り、この世界はあと数日で、完全に消滅しちゃう」

「へっ、上等だ。場所が分かってんなら話が早い。ヴィルキスで乗り込んで、そのマスターだか何だかってやつを直接ブチのめせば終わりだろ」

テンカは制服のポケットに手を突っ込み、いつものように不敵に笑った。

だが、アイリスは笑わなかった。彼女はそっと端末を胸に抱きしめ、テンカから視線を逸らした。

「……テンカは、ここに残って」

「あ? 何言ってんだお前」

「ヴィルキスのアブソリュート形態のデータは、私の端末に完全にコピーしたわ。これなら……私一人でも、自動操縦で次元の向こうへ行って、グローム・マスターと刺し違えるくらいはできる。テンカはただの高校生だよ? これ以上、私の勝手な任務に巻き込めない……!」

アイリスの声が震えていた。彼女はまた、一人で背負い込もうとしていた。テンカに「死んでほしくない」という強い想いが、彼女を無謀な特攻へと駆り立てていたのだ。

テンカは小さくため息をつき、一歩、アイリスへと近づき手を掴んだ。

「おい、アイリス」

「嫌だよ! 行かせて、テンカ! 私は『世界の調律者』なの! これが私の――」

「うるせえ、バカ」

テンカはアイリスの言葉を強引に遮ると、彼女の手から端末をひったくり、そのまま自分の制服のポケットへと放り込んだ。

「あ、ちょっと! 何するの!?」

慌てて取り返そうとするアイリスの両肩を、テンカは大きな手でガシッと掴んだ。至近距離で、二人の目が真っ直ぐに交差する。

「お前さ、保健室で俺と何て約束したか、もう忘れたのか?」

「え……?」

「勉強を全部見てくれるんだろ? お前を一人で抱え込ませて泣かせないって約束しただろ、俺は約束を守る男だ、それは誰にも否定できない。」

テンカの目は、冗談を言っているようには見えなかった。勉強はできないが、一度決めたことは絶対に曲げない。生身の喧嘩で何度もボコボコにされても立ち上がってきた、羽吹テンカの頑固さがそこにあった。

「世界を救うだの、調律者だの、そんな大層な肩書は知らねえよ。でもな、友達を死なせたくない。そんな気持ちは俺も同じだ…勝手に消えられたら、その…焼きそばパンが一生マズくなるんだよ」

「テンカ……」

「一緒にいくぞ、アイリス。俺が前で操縦する。お前は後ろで、俺の背中を支えてろ。二人で乗り込んで、二人でラスボスぶっ飛ばして、二人でここに帰ってくる。……それで文句ねえな?」

テンカの不器用で、けれど絶対的な温かさを持つ言葉に、アイリスはしばらく呆然と目を見開いていた。

やがて、彼女の青い瞳から、ぽろぽろと大粒の涙がこぼれ落ちた。

「…涙拭けよ。」

アイリスはテンカの胸に思い切り頭を埋め、彼の制服のシャツをきゅっと掴んだ。

「……う、うん。バカテンカ。本当に、無茶苦茶で、強引で、最低な私のパイロット……」

「ハハ、最高の褒め言葉だわ」

テンカは照れくさそうに笑いながら、アイリスの小さな背中に手を回し、優しく抱きしめた。

夕日が二人の影を、鳳学園の屋上の床に長く、一つに重ね合わせていく。

アイリスはテンカの胸の中で、涙を拭いながら小さく鼻をすすった。

「約束、だからね。絶対に生きて帰ってくるの。そしたら……一番美味しいお店の焼きそばパン、テンカの奢りでご馳走してもらうんだから」

「おう、任せとけ。特上のやつを腹一杯食わせてやるよ」

決戦は明日。次元の彼方へ、ヴィルキス・ヴァリアブルが全ての力を解放して殴り込みをかける。

互いの命を懸ける理由を得た二人にとって、もはやグローム・マスターなど、恐れるに足りない敵だった。

〜第7幕〜

翌日、旧校舎ドッグ

「準備はいい?」

コックピットに乗り込みながらアイリスが確認する。

「バッチリだ。いくぞ、アイリス! 俺たちの日常は、誰にも渡さねえ!」

「うん……! ヴィルキス・アブソリュート、フルバースト!!」

鳳学園の上空に開いた紫色の傷跡――『世界の狭間』へと、黄金の光を放つヴィルキス・ヴァリアブルが突入した。

そこは、無数の滅び去った世界の残骸が漂う、光と闇が混沌と渦巻く暗黒の空間だった。

その中心に鎮座していたのは、山ほどもある結晶体の巨神。これまでのグロームたちを裏で操り、幾千の世界を貪り食ってきた元凶――『グローム・マスター』。

『人間よ、調律者の娘よ。大いなる次元の潮流に抗うか。貴様らの矮小な日常など、この永劫の闇の前には一瞬の瞬きに過ぎん』

グローム・マスターの重低音の波動が、ヴィルキスのコックピット全体を激しく揺らす。同時に、空間そのものを圧殺するかのような、数千もの結晶の槍が一斉にテンカたちへと降り注いだ。

「一瞬だろうが何だろうが関係ねえ! 俺にとっては、アイツらと過ごす毎日が世界のすべてなんだよ!」

テンカは操縦桿を限界まで倒し、黄金の機体をフライヤー(飛行形態)へと変形させた。

アブソリュート形態となったヴィルキスの機動力は、もはや因果律すら置き去りにする。テンカの野性的な直感と操縦センスが、網の目のように迫る結晶の槍の「わずかな隙間」を見抜き、マッハを越える超絶的なドッグファイトでそのすべてを回避していく。

「マルチロック・ミサイル、全弾発射!!」

主翼から放たれた無数の光の弾道が、空間を埋め尽くしていたグロームの防衛線を次々と爆破し、グローム・マスターの巨体に無数の穴を穿っていく。

『おのれ……ただの人間が、これほどの力を叩き出すとは……!』

焦ったグローム・マスターの本体から、かつてない規模の漆黒の破壊光線が放たれようと、エネルギーが急速に充満していく。空間がメリメリと音を立てて歪み、まともに喰らえば、次元ごと消し飛ぶのは明白だった。

「テンカ、敵のエネルギー出力が臨界を越える! 防御が間に合わない……!」

後ろの席でアイリスが叫ぶ。だが、テンカの目に恐怖はなかった。

「アイリス、俺を誰だと思ってんだ」

テンカはニヤリと不敵に笑うと、中央の可変レバーを力強く叩き込んだ。

「変形、グラップル形態!!」

黄金の翼が強靭な四肢へと姿を変え、ヴィルキスは敵の破壊光線が放たれる文字通りの「ド真ん中」へと急降下した。手にするのは、黄金の粒子で形成された巨大な光の刃――『アブソリュート・ブレード』。

『塵に還れ、ヴィルキス!!』

ズドォォォォォン!!!

世界を滅ぼす漆黒の光線が放たれた。しかし、テンカはヴィルキスの右腕を大きく振りかぶり、その光線の中心線へと真っ向から飛び込んだ。

「ハァァァァァッ!!」

テンカの咆哮とともに、黄金のブレードが漆黒の光線を縦真っ二つに切り裂いていく。光と光がぶつかり合い、コックピットの中は強烈な純白の閃光に包まれた。

Gと衝撃でテンカの意識が飛びそうになる。操縦桿を持つ手が震える。

その時、テンカの手の上に、再びアイリスの小さくて温かい両手が重ねられた。

「テンカ、一人で戦わせない! 私の命も、未来も、全部あなたに預ける……! 一緒に、お家に帰ろう!!」

アイリスの叫びが、テンカの脳内に心地よく響いた。

二人の魂が完全に一つになった瞬間、ヴィルキスの黄金の輝きが、暗黒の次元すべてを塗り替えるほどの眩い太陽となって爆発した。

「おおおおおおおっ!! ――これで、終わりだぁぁぁ!!」

漆黒の光線を完全に切り裂き、ヴィルキスはグローム・マスターの中心核――巨大な闇のコアへと到達した。

すれ違いざまの一閃。

黄金の刃がコアを真っ二つに両断した。

『馬鹿な……日常の調律などという、下らぬ願いに……我が、敗れる……だと……!?』

グローム・マスターの巨躯が、内側から溢れ出す黄金の光によって崩壊していく。

次元の彼方で起きた、大いなる滅びのビッグバン。暗黒の空間がバラバラに砕け散り、テンカとアイリスの意識は、心地よい純白の光の中へと吸い込まれていった。

――

「……ん、……か。テンカ、起きて」

耳に届く、優しくて、どこか呆れたような鈴の鳴るような声。

テンカがゆっくりと目を覚ますと、視界に飛び込んできたのは、見慣れた鳳学園の教室の天井、そしてオレンジ色の柔らかな夕日だった。

「やっと起きた。もう放課後のチャイム、鳴っちゃったよ?」

すぐ目の前で、青い髪をなびかせたアイリスが、テンカの顔を覗き込んでクスッと笑っていた。

テンカは慌てて辺りを見回した。壊れたコンソールも、迫る怪物の姿もない。静かで、平和で、どこか埃っぽい、いつもの教室だった。窓の外からは、部活動の掛け声が遠く聞こえてくる。

「俺……生きてる、よな? グローム・マスターは?」

「ふふ、テンカが最後に大暴れして、綺麗にぶっ飛ばしちゃった。世界の傷跡も完全に消えて、グロームの脅威はもうどこにもないよ。……ほら、私の端末も、ただのスマホになっちゃった」

アイリスが画面を見せてくる。そこには、警告ログの代わりに、クラスの女子たちと交換したらしい可愛らしい連絡先の画面が表示されていた。

彼女はもう、『孤独な世界の調律者』ではない。この学園の、テンカの隣の席にいる、ただの女の子になったのだ。

「そっか……。終わったんだな、全部」

テンカは大きく伸びをして、心の底からホッとしたように笑った。

「うん、終わったの。……だから、約束、覚えてるよね?」

アイリスは少し上目遣いになりながら、テンカの制服の袖をきゅっと引っ張った。

「一番美味しいお店の焼きそばパン。テンカの奢りで腹一杯食べさせてくれるって約束」

テンカは椅子から立ち上がり、カバンを肩にかけながら、不敵に笑ってみせた。

「おう、忘れるわけねえだろ。なんなら焼きそばパンだけじゃなくて、クレープでも何でも付けてやるよ。……あ、でもその前に、これ」

テンカは机の上に溜まっていた、山のような数学のプリントをアイリスの前に差し出した。

「約束通り、宿題は全部見てもらうからな、アイリス先生」

「ええっ!? こんなにあるの!? ……もう、しょうがないなぁ。今日だけは特別に、パンでも食べながら優しく教えてあげる。明日から厳しくするんだからね!」

ぷいっとそっぽを向くアイリスだったが、その口元は隠しきれない喜びで綻んでいた。

テンカはそんな彼女の手を、今度はハッタリの言い訳のためではなく、これからもずっと一緒に歩んでいくために、優しく、しっかりと握りしめた。

アイリスは一瞬驚いて真っ赤になったけれど、すぐに嬉しそうにその手を握り返してきた。

二人は並んで教室を後にし、夕日の差し込む長い廊下を歩いていく。

校舎を出ると、上空には、どこまでも高く、どこまでも透き通った、吸い込まれそうなほどの美しい放課後の青空が広がっていた。

ヴァリアブル・ナイツ(仮)

キャラクター設定



羽吹 テンカ(はぶき・てんか)


• 所属: 私立鳳学園高等部2年

・年齢:17歳

• 搭乗機: ヴィルキス・ヴァリアブル

• 人物概要:

本作の主人公。抜群の運動神経と野生的な直感を持ち、生身の喧嘩では負け知らずの熱血高校生。一方で座学(特に数学)は壊滅的であり、不真面目なためによく放課後の居残り処分を受けている。

危機に陥った際のお腹を壊したというハッタリや、戦闘中に「遠距離武器がないなら剣を投げればいい」と思いつくなど、型に嵌まらない破天荒な機転のキレは天才的。世界を救うという大層な目的よりも、「アイリスと明日も一緒に焼きそばパンを食べる」という日常を守るために命を懸けて戦い、ヴィルキスの真の力を覚醒させた。


アイリス・ブライトン


• 所属: 次元の狭間(調律者) ➔ 鳳学園高等部2年(転校生)

・年齢:815歳(外見は17歳で成長が止まっていたが、グローム・マスターを倒したことで使命から解き放たれ、テンカと共に歳を取れるようになった。)

• 役割: ヴィルキスのナビゲーター / 世界の調律者

• 人物概要:

本作のヒロイン。滅びゆく世界を観測し、修正する使命を帯びた『世界の調律者』の少女。吸い込まれそうな青い髪と神秘的な佇まいを持つが、中身は年相応に不器用で、からかわれるとすぐに耳まで真っ赤になるツンデレ気質。

これまでは孤独に世界を渡り歩き、自らの命を顧みない特攻思想を持っていたが、テンカの少し強引な優しさに触れたことで「明日を一緒に生きたい」と願うようになる。最終決戦後はすべての力を失い、テンカの宿題を厳しく監視する「ただの女子高生」としての日常を手に入れた。


シエル


• 所属: 敵対次元組織

・年齢:不明

• 搭乗機: ヴァルキュリア・フレーム

• 人物概要:

第2話・第4話・第5話に登場する、敵組織の若き冷徹な女性エースパイロット。ヴィルキスを鹵獲・破壊するために鳳学園の上空へ強襲を仕掛ける。プライドが非常に高く、テンカの至近距離ミサイル掃射によって敗北した後は、グローム・マスターより「暗黒の力」を授かって復讐の再襲来を果たし、テンカを肉体的・精神的に絶体絶命の危機まで追い詰めた。


グローム・マスター


• 所属: 次元の彼方(世界の狭間)

• 人物概要:

本作のラストボス。結晶体と金属が融合した山ほどの巨躯を持つ、異形「グローム」の統率者。幾千もの世界を貪り喰ってきた絶対的な存在であり、次元そのものを消し飛ばす漆黒の破壊光線を放つ。しかし、完全に魂を一つにしたテンカとアイリスの「日常を守りたい」という執念の前に、核(コア)を両断されて消滅した。


『鳳学園ヴァリアブル・ナイツ』世界観・メカニック用語解説



ヴィルキス・ヴァリアブル


学園の旧校舎の地下ドックに封印されていた、失われたオーパーツ級の試作型・超時空可変精神駆動ロボット。パイロットの精神エネルギー(気合)を物理的な出力へと変換するシステムが搭載されており、適合者にしか動かすことができない。

• グラップル形態(人型):

近接格闘および精密動作に優れた形態。テンカの野生的な直感をダイレクトに反映し、重量感を無視した鋭い剣戟を繰り出す。主な武装は『高周波ブレード』、第2話以降はシールドを焼き砕く『高出力ビームライフル』が追加された。

• フライヤー形態(飛行型):

圧倒的な大気圏内機動力を誇る、鋭利な超音速の戦闘機形態。音速を越えるドッグファイトが可能。武装として機首の『ビームバルカン』、および広範囲の敵を自動追尾して檻のように閉じ込める『マルチロック・ミサイルポッド』を持つ。

• アブソリュート形態(黄金の真の姿):

第5話の絶体絶命の危機において、テンカの「アイリスと明日を生きたい」という気合と、アイリスの調律者としての魂が完全同調(シンクロ)したことで、全リミッターが解除されたヴィルキスの真の姿。装甲から黄金の光(アブソリュート・エナジー)を放ち、因果律や重力を無視した神速の挙動を可能とする。武器も黄金の光の刃『アブソリュート・ブレード』へと強化された。


グローム


次元の裂け目から突如として現れる異形の金属生命体。昆虫や羽虫のように群れる小型から、ビルほどもある大型まで様々な個体が存在する。中心核にある赤く明滅する「コア」が弱点であり、ここを破壊されると自壊して光の粒子となり消滅する。


ヴァルキュリア・フレーム


敵の組織がヴィルキスに対抗して開発した、高性能な白銀色の対ヴィルキス用エース専用機。背中の可変翼による超高速移動と、近接戦用の「光線剣」を武器とし、ヴィルキスの死角へ一瞬で回り込むドッグファイトを得意とする。


世界の調律者


アイリスが本来持っていた役割。次元の歪みを観測し、世界の崩壊を未然に防ぐために、機体(ヴィルキス)と共に宇宙を放浪する防衛プログラムのような存在。調律者は世界の一般人に対して「認識阻害」の力を働かせることができ、ロボットや怪物の戦闘による世界の被害を「ただの爆発や自然災害」として記憶を改ざん・調律することができる。


駅前の焼きそばパン


鳳学園の最寄り駅で発売されている焼きそばパン。その人気はとても高く一日の売上は2000個くらいだそう。

購入者の女性「あまりの美味しさにしたがなくなったかと思いました。」

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