第18話 ドレスと靴のサイズ
よろしくお願いします(#^.^#)
ゴールデンウィーク突入ですね。
私は仕事です。お休みの方、良い休日を!
メイナード殿下と気の張る会話をし別れた後、私は学園の帰りに三人を我が家に招いて自室に入ってもらった。
「これが、お姉様のお部屋なのですね!」
リリエラ様とミナリー様が私の部屋に入って感激している。けれど、私には感激するほどの部屋ではない。ごてごてのピンクやオレンジ色のカーテンやクッション、ぬいぐるみ、お人形などが置てあるわけでもない。色で表すとパステルカラーの黄色。太陽や暖かな光をイメージした感じで、貴族令嬢の部屋とは思えない、到ってシンプルで質素な部屋だ。
「落ち着いた雰囲気で素敵です!!」
「そうですわね。洗練された雰囲気ですわ!」
余分な物を置いていない、必要最小限の物しか置いていない部屋。
余計な物は買わない。置かない。質素倹約する。それが我が家のルールだ。その規則に則った部屋を『落ち着いた』『洗練された』と言われるとちょっと恥ずかしい。
興奮している二人をソファーに座すと、暫くの間、キョロキョロと周りを見回していた。
その間にルシア様にも座ってもらう。
ルシア様は何度か私の部屋に遊びに来たことがあるので、普段と変わらない。どちらかというと、あまりにも興奮しているリリエラ様とミナリー様にちょっと引いていた。
メイドがお茶とお菓子を持ってくるとテーブルの上に置き退出する。メイドが下がったタイミングで「それで」とルシア様が先陣を切って口を開いた。
「留学とはどういうことですか? 今までお姉様から留学の『留』の字も聞いたことはありませんでしたわ」
確かに、そんな話を一切していなかった。ルシア様にとっては、寝耳に水だろう。ちゃんと説明をしなければと思っていると、リリエラ様とミナリー様は目を見開いて驚き、顔を見合わせていた。
「あ、それは、ルシア様。これには……」とリリエラ様が言いかけ、また、チラリとミナリー様と顔を合わした。
「ルシア様。昨日、お姉様とお話をしておりまして……私たちの婚約者がハンシェミント国の人で、卒業と同時にあちらの国に行くことになっておりますの。それで、そこの文化の話になり、お姉様はご興味を持たれたようだったので、留学をされて見ては、と言ってしまったのです」
私から言うつもりだったけれど、ミナリー様が申し訳なさそうに、殆ど説明してくれた。
「そうねのね。では、急に出てきた話なのね」
ルシア様はホッとした様子だった。
ルシア様とは兄と婚約が決まったのは、私が7歳のころ。一つ下のルシア様とは婚約が決まる前から仲が良かった。そして、私よりしっかりした性格でどちらかと言うと私の方が妹みたいにルシア様に甘えてきた感じがあった。だから私が、ルシア様に相談もなしに考えていたのかと思ったのかもしれない。
「ええ、そうね。でもまだ決まった話ではないわ。私、婚約が無くなったでしょ。だから、今後の身の振り方を考えた時に、リリエラ様とミナリー様のお話を聞いて、留学も有りなのかもしれないって考えたの。いろんな文化を見てみたい、という気持ちもあるります。兄は心配で、きっとルシア様に聞いてほしかったのね」
兄の事だ。きっと心配でどうしたら良いのか、ルシア様に連絡したのだろう。彼女は私が留学に反対なのだろうか。
「ルシア様も私が留学すことに反対ですか?」
私は恐る恐る聞いてみる。
「反対とか賛成とかは私が言える立場でないのはわかっているわ。他の国の文化や言葉に触れるのも良いと思うわ。けれど、寂しいっていう気持ちはあるの。お姉様だけではないのよ。今日初めてリリエラ様やミナリー様の嫁ぎ先も国外だと聞いて。せっかく、お友達になれたのにって……」
無理やり微笑みを返してくれるルシア様になんて声をかけたら良いのか、分からない。突然の話に戸惑っているのだろう。
しんみりした雰囲気の中、リリエラ様とミナリー様は違った。
「ル、ルシア様まで、私たちがいなくなる事に寂しいと思って下さるなんて! 感激ですわ! ねえ、ミナリー様!」
リリエラ様は目を潤ませて、両手を胸の前で組みながら、ミナリー様に同意を求める。
「はい! こんな子爵令嬢の私たちにまで、そう思ってもらえるなんて! 光栄ですわ! 嬉しいですわ! 何なら、もう結婚もなしにしてもらって、この国に残ろうかしら?」
「え……?」
飛んでもないことを言い出すミナリー様の一言に、ルシア様と私は驚きの声が出た。結婚をなしにするなんて、そんなことしたら大変だ。冗談だろうと思いたいけれど、ミナリー様が言うととても冗談に聞こえない。慌てて止めようとしたら、リリエラ様がその話に便乗する。
「ミナリー様! それは良い考えですよね。私たちはこの国に残りましょう!」
リリエラ様の発言にまた私とルシア様はギョッとした。
二人とも、辞めてー! と心の中で叫んでいると手遅れになりそうなので、声に出して叫んだ。
「やっぱり、駄目でしょうか」
シュンと項垂れるリリエラ様とミナリー様。本当にそんなことになったら、ハミルトン家とバルティア家の方々に顔を合わせられない。
「駄目ですよ、そんな勝手なことしては。不安で仕方がないのかもしれませんが、お相手がいる以上、その方にもご迷惑が掛かりますよ」
「……はい……」
まあ、私みたいに途中で破棄されて喜んでいる人がいるかもしれませんが、なんてそんな事を口にしたら、この二人なら相手の方に直接聞いたり、そう仕向けたりしそうで怖い。だから言わないでおこう。
「でも、違う国に行ったからって私たちの関係は変わりません。結婚されてもお手紙のやり取りや年に何回か会う機会もあっても良いと思いますよ」
ルシア様は優しい口調で微笑みながら言った。
「本当ですか!? そう、言っていただけると嬉しいです!」
リリエラ様とミナリー様は顔を見合わせ、目を輝かせた。この二人もとても可愛らしい。お友達になれて良かったと思えた。
「けれど、お姉様は第二王子殿下とはどうされるのですか? 確実にお姉様に興味がおありのようでしたわ」
ルシア様は一口お茶を飲むと、同情するような目で私を見て言った。
「ルシア様、一伯爵令嬢ごときが第二王子殿下をどうにかできるわけでもないので、どうしたらいいのか困っております」
本当に困っている。私は、肩から息を吐くように深い溜息を吐いた。
「やっぱり、一度国外に出られるのも良いかもしれませんね。ラルス様からドレスの件もお聞きしました。ドレスのサイズ、靴のサイズまでもがぴったりだったとか。知らないあいだにそういった情報があの方に渡るのも少し怖いですし」
どうしたものかと片手を頬に当てて、ルシア様も悩む。
「「え?」」
リリエラ様とミナリー様が驚いた。
「どういうことですか?」
彼女たちは身を乗り出して訊いて来たので、私は昨日、第二王子殿下からドレスと装飾品と靴が届いたことを彼女たちに説明した。
「え? それで、お姉様がラルス様とドレスを選びに行って、試着までしたドレスを贈ってきたと。しかもサイズがピッタリで……アクセサリーもその時に選んだものと似ているのですか? しかも靴までもが……でも、どうやって……」
リリエラ様が目を丸くしてびっくりした様子で言う。
「まさか、そのドレス屋がお姉様の洋服のサイズを流したのでしょうか?」
恐ろしい事を言い出した。
ミナリー様は顎に人差し指を当て少し考えて、こちらも可笑しな事を言い出す。
「もしかして、あの人が? 以前、見た事があるのです。私がお姉様の跡を付けて……あ、すみませんでした。お姉様のあとを付けてしまって……一体何にご興味があるのか知りたくて」
本当に申し訳なさそうな顔をしてミナリー様が言う。もう済んだことだし私は何も責めないけれど、少し引いてしまう。
「今度からは、直接聞いて下さると嬉しいわ」と言うと、ミナリー様の顔をパアッと明るい表情になった。彼女たちは本当に素直な子だと思った。
「あ、ありがとうございます……すみません。話を戻します。その時に、ある男の人なんですが、お姉様が入ったお店の店内に何度か見かけました。何度かというか、気が付いた日からはほとんどお姉様が行く所行く所にいました。その人が、メイナード殿下と関係あるのかもしれません。あの様子だと前から後を付けていたのかもしれません」
「え……?」
私は鳥肌が立った。
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次回更新は5月2日22時頃の更新予定をしております。
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