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この、感情の名前は
雑踏は嫌い。
なのに、また今夜も、騒がしい街に来てしまう。
ひとりきりのアパートでは、自分が孤独だってことを思い知らされてしまうから。
けれど、この人混みの中にいても、私はひとりだ。
誰も私を見ない。声も掛けない。
ただ、目の前を通り過ぎてゆく。
目の前では、家族や友人、恋人同士とおぼしき人たちが楽しそうに会話をしながら行き交っている。
あの人たちと私とでは、何が違うんだろう。
私はひとりだ。
アパートにいても、雑踏にいても。
……ひとりきりだ。
人の声はずっと、聞こえているのに。
人の姿も、ずっと見えているのに。
ああ。この感情は、何というのだったろう?
いや。本当は知っている。
誰かが近くにいるのに、誰とも交われない……行き場のない、この感情。
そう。この、感情の名前は──……。




