あたたかい慈雨
ふいに雨が降り始めた。
どうせ、にわか雨だろう。
見上げれば、遠くの空の下では、青空が広がっているのだし。
僕は辺りを見回す。見慣れた公園だ。
いつもなら、夕方、つまり今時分くらいになると、遊びに来た子供や、散歩する人で賑わってくるのだが……今日は人っ子ひとりいない。
みんな、天気予報でもチェックしていたのだろうか。
梅雨どきなんだし、それも当然か。
けど天気予報など、僕には必要ない。
雨だろうと何だろうと、ここに来るのは僕にとって、当然の行動なんだから。
既に濡れ出したベンチに座る。冷たい。だがすぐに、それも感じなくなってくる。
何故なら、今もはっきり思い出せるから。
かつてここで共に過ごした、君の声や、はにかむような笑顔。
そして手の先から感じた、君のぬくもりを。
僕は座ったまま目を閉じ、思いを馳せる。
もう会うことの出来ない、君との思い出へと。
何年も一緒に居た。
春や夏、秋に冬。
そしてもちろん、こんなにわか雨の日も。
ああ。この思い出がある限り、僕にとってはにわか雨など、君を思い出すための、あたたかい慈雨に過ぎないのだ。




