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ちりん、

 ちりん、と風鈴が鳴った。


 今は梅雨(つゆ)のさなか。そして雨も風のない、夕暮れ(どき)

 けれども、風鈴は鳴る。

 その音に私は、ああ。今年も来たんだね、と心の中で語りかけた。


 ちりん、ちりん。


 風鈴はそうだよ、というかのように、また音を(ひび)かせた。

 私は腰を落ち着けていた縁台(えんだい)から立ち上がって家に入り、そして仏壇(ぶつだん)のある和室へと向かった。

 仏壇の前に座り、線香を付け、手を合わせる。

 そこにあるのは写真立て。

 その中から愛犬が、こちらに向かって笑顔を見せていた。


 私はちらりと壁に掛けてある、日めくりカレンダーを見やり、日付を確認した。

 七月二日。

 ちょうど五年前、あの子が()ってしまった日だ。 

 私の心はあの子がいなくなってから、穴が空いてしまった。

 ちょうど、あの子のかたちに。


 それから一年後。

 不意に思い立ち、早めに風鈴を(かざ)ってみた。

 あの子は、風鈴の音が好きだったから。

 そしてぼんやりと風船を見つめる。

 風もないのに鳴るはずがないか、と思い、取り外そうとしたところ、ちりん、と音が鳴った。


 まるであの子が、ここに()るよ、と言ったかのように。

 それから毎年、あの子の命日には風鈴が鳴る。

 自分の存在を、私に伝えるかのように。


 ずっと鳴らしてね。伝えにきてね。

 私がそっちに行く日まで、ずっと。

 風鈴は私の思いに応えるかのように、また一つちりん、と鳴った。

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