悪くない
まっさらなシーツで、ぐっすりと眠る。
それは私の、幼い頃からのささやかな夢だった。
お世辞にも裕福とは言えない家で育った私は、貧乏暇なしで、いつも仕事に追われていた親を見てきた。
洗濯なども、シーツにまで手が回らず、いつも薄汚れたシーツに包まって眠った。
成長し、自分で家事をするようになっても、それまでほったらかしだったシーツは何度洗っても、すえた匂いは取れなかった。
もちろん買い替える余裕などはなかったのは、言うまでもない。
だけど、今は。
「おばあちゃん、死んじゃったんだね」
命を終えた私の体を囲むのは、子や孫たち。
彼らの会話を、私は、私だった魂は、病室の上部に漂いながら聞いていた。
やがて、私の娘が答える。
「ええ、そうよ。けどね、お母さんは色々と苦労した人だったけど、悪くない最期だったと思うの」
娘は私だったモノを指差して、涙を浮かべながらも、少しだけ微笑む。
そこにはまっさらなシーツと、これまたまっさらな着物に包まれた、私の体があった。
まっさらなシーツで、ぐっすりと眠る。
それは幼い頃からの、ささやかな夢。
最後の最後に、やっと叶ったんだ。
──うん。悪くない最期だ。
魂だけの私も、娘と同じように微笑んだ。
するとそれが体に伝わったのか、孫は私の顔を覗き込んで、こう言った。
「ホントだ。笑ってるみたいだね。おばあちゃん」




