転生女子モリーとドラゴン
私は魔女のモリー。
ブルーグレーの髪色がちょっとした自慢の、普通の大人女子である。
ほんとうはもっと長い名前だけれど、モリーの方が通りがいいので、手紙や荷物の受け取りの名前もそれで届くようにしてある。
魔女と言えば色んな魔法が使えて何でもできると思われがち。
でも、私はほとんどなんの力もない。
母も、祖母も、そのまた前の曾祖母も、魔女らしい力はなかった。
現在生存している一族郎党だれも特別な力を持っていない。
それでもなぜ魔女と名乗れるのか。
それは、『魔女の』がほぼ屋号のようなものだからである。
屋号と言えば、個人事業主が事業を行うときに使用する名称であり、会社で言うところの会社名。
魔女の痛み止め、魔女の湿布薬、魔女の星占いの本、魔女のきらりんスティック(飴入り)などなど、私たちの一族の取り扱っている商品は多岐にわたる。
本物の魔女に師事したご先祖様が、魔女直伝の品々を商売として活用したのが私たち一族のはじまり。
師匠である魔女を祖と呼び、私たち一族は魔女の知恵に生かされてきた。
そうして始まった魔女の商品は世間に受け入れられ、のちに世界中に『魔女の』の支店(というよりも一族の家)が広がっていったのだった。
苗字が『魔女の』である一族の会社と思ってくれてもよい。
ところで話は変わるが、私は前世と前々世の記憶がある。
一度目の私は異世界の日本という国で会社勤めをして過ごしていた。
二度目の私はこの世界ではない異世界のそこそこデカめのドラゴンとして暮らしていた。
そして三度目がここである。
一度目も二度目も、今になって思い返せばとてもよかった。すごく良かった。ハチャメチャに良かった。
一度目はお金さえあればおいしいものがいつでもどこでも食べられたし、楽しいものもたくさんあった。
二度目はドラゴンという種族であったのでほぼ無敵。趣味の光るもの集めもはかどっていた。敵などいなかった。
三度目の今はと言えば、記憶さえなければきっと何も惑うことなどなかったのだろうとずっと思っている。
三度目のこの世界は、一度目の世界程のんきなところではないし、二度目の種族の様に、私強い!最強!ということもない脆弱な人間風情になったのだから、比較した時にがっかりするというのも仕方の無いことだ。
記憶があろうが私はただの人間である。
そうだというのに、幼いころの私はうっかり近所の悪ガキにドラゴンの気持ちで襲い掛かったことがある。
だってあの小僧、小さくてか弱い女子の私に向かって泥団子投げつけてきたんだもの。
誕生日に買ってもらった新しい靴を汚されて、私の宝物を汚すとはなんという無礼で愚かで矮小な人間の小僧だ!と思ってしまって、三才のちびっこが六才の身体の大きい男子に殴り掛かっちゃったものだから当時は相当な事件扱いだった。
しかも、急所を的確に仕留めてしまったがゆえにその小僧は号泣。
本当にごめん、と今なら思う。
混乱していたのだ、当時は。
人とドラゴンが混ざっていたといってもいい。
無礼な人間の小僧、だなんて、普通の三才女児は思わない。
違和感に早めに気が付けたのは、一度目の記憶のおかげ。
いかんいかん、軌道修正!と、その一度目の記憶が調整してくれなかったら、私はご近所で評判の極悪女児になっていたに違いない。
そんなちょっと様子のおかしい女児が見捨てられなかったのは、『魔女の』の一族の気質にあった。
何の力もないけれど、楽しそうなことや面白そうなことには意欲的にかかわっていくような、能天気でちょっと鈍い物語の主人公のような気質のある一族なのだ。
そうでもなければ、魔女に師事して、かつ商売にしようなんてこと考えもしなかったと思う。
そもそも、祖である魔女に失礼なのではなかろうかと、元日本人的には気になるところだ。
社会人ドラゴン女児である私は、すくすくと育った。
魔女の製品にちょこちょこ口出ししながら、かつて拳を交えたあの号泣男子を含めたご近所付き合いをしながら、可もなく不可もなく過ごしてきた。
その日までは。
私は、前世の記憶のある普通の女子。
そんな風にはじまる物語が一度目の世界に沢山あったよな、と思いを馳せた。
異世界で不思議なことに遭遇するような、冒険あり、恋愛ありの物語が多くの人の心をつかんでいた。
かくいう私もその中の一人であったのだけれども、二度目のドラゴンの私が、当時の他の種族からすれば中つ国の竜もかくやと思われる邪竜ぶりだったのだから、今更ちょっと不思議世界にいるとしたってどうということも無い。
恐らく私のこの世界での使命は、一度目の人生で見知った知識をアウトプットして、キラキラで美しいものをこの世に送り出すことであると信じて疑っていなかった。
私が成人も間近という年の頃。
お前もそろそろ独り立ちの頃合いだから、一度色んな所を見てくるといい。
そんな風に両親から言われた私は、おや?宅急便の方の魔女のアレか?と過った。
田舎生まれ田舎育ちの私は、同じ年頃の子らとは違い、都会というものに一切の憧れが無かった。
それはそう。
すごい世界をすでに知っているもので、ろくに話も聞かずにそのうちねと流すものだから、旅立ちを促す両親も手ごたえがなく歯がゆかったことだろう。
ご近所の同年代はあらかた都会に向かって旅立って数年という子らがほとんどだった。
あの号泣男子もその一人である。
残っているのは家業を継ぐ予定の者たちと、その婚約者のみといった風だ。
うちには兄がいるので、私はこの家に残ることはない、と両親は思っている。
とはいえ、兄は旅に出ていて暫く帰ってきていないので、私がいなくなれば両親二人で残ることとなる。
両親は商売は上手だが、戦闘力は皆無であるので、ちょっと巣……じゃない、家が心配だった。
でもそれは、私がいたからといってどうにかなるたぐいの話ではない。
むしろ、守るもの多ければ、何かあった時に身軽に対応できないだろう。
私は、両親の勧めに従って都会に行ってみることにした。
せっかく行くなら、中途半端なことはしたくない。
王都。
そう、王都に行こう。
いきなり王都行を決めた娘に両親は何か言いたげだったが、まあ何とかなるか、と見送ってくれた。
私が王都に向かう道すがら、何かあったかというと、何もない。
田舎とはいえ、王都に向かう街道はきちんと整備されていて、要所要所に様々な施設がある。
人もいる。
旅といえば徒歩、のような気持ちも沸いたが、私は魔女のきらりんスティック(飴入り)の商品開発で金銭を稼いでいたため、高速馬車であっという間に王都に到着したのである。
その後、特に困っている誰かを助けて下宿先を得るというような特殊な出来事もなく、魔女の一族の伝手を使って普通に賃貸物件を契約し、暫く王都で生活することとなった。
その間に、成人もしたし、地元から王都に出ていた顔見知りと連絡を取って会うこともしたし、新たに魔女の商品開発もいくつか対応した。
短期の雇われ仕事も経験したし、号泣男子とも再会してお互いに定期的に近況報告をするようにもなった。
そうして、王都で暮らして数年。
そろそろ王都から出て、どこか住みやすいところを探してみようかと思い始めたころ。
王都の郊外に出る用事があり、昼過ぎごろに住んでいる地区に戻って来たところ、大変な騒ぎになっていた。
人々が私が歩いてきた方に向かって走っていくし、悲鳴がそこここで聞こえるし、どこかで子供が大泣きしている声も聞こえる。
どうしたどうした。
私今帰って来たばかりでちょっと何があったかわからないんですけど……
「モリー! あんた家に戻っちゃだめだよ! 早く逃げな!」
私の住んでいる集合住宅に住んでいるおばちゃん一家が、猛ダッシュして逃げているところに偶然出くわした。
彼女らだって危機を感じているだろうに、私のために足を止めて注意を促してくれたのだ。とてもいい一家だ。素敵。
何があったのかと聞けば、王都内にモンスターが侵入しており、咆哮を響かせながら暴れているのだとか。
ええ……? 全然気が付かなかった。
悲鳴と子供の泣き声に紛れて魔物の咆哮なんて聞こえないんですけど。
「あんたの友達のいる騎士隊が魔物の対応をしてくれているらしいんだけどね、どうやら歯が立たないような強いモンスターらしいよ」
友達……号泣男子こと、グレンのことね。
幼いころの私とガチンコ勝負をした後、号泣男子グレンは自らを鍛えに鍛えて、魔法の実力にも目覚め、鳴り物入りで王都の騎士隊に入ったという。
私が育てたといっても過言ではない。
魔法も使えるグレンの率いる隊が歯が立たないなんて、よほど硬いのか。
優しいおばちゃんたちを先に逃げるように促して、私は一度近くまで来ていたので自室へ向かった。
一応、魔女の商品の薬やらを持って出ようと思ったのだ。
避難している人の中にも傷を負った人がいるかもしれない。
「モリー! モリー! いるか!!」
自室の窓の外から、私の名を呼ぶ声が聞こえた。
グレンだ。
「いるよ! モンスターは!?」
私が窓から顔を出して声をかけると、埃にまみれた鎧姿のグレンが、そのまま飛び降りろ、と合図した。
おいおい。
騎士様が、一介のか弱い女子にそんな指示を出すんじゃない。
飛ぶけど。
私が窓を乗り越えて間髪入れずに地面に向かって飛び降りると、グレンが魔法で起こした風に受け止められて難なく着地できた。
これは、長年幼馴染としてともに故郷で暴れまわっていた頃に編み出した脱走術の一つだ。
よくこうやって家からこっそり抜けだして遊びに行ったものだ。
「モリー、お前、言ってたよな。自分は昔ドラゴンだったって」
麦の穂のような色の髪が煤で汚れているグレンは、相当苦戦していたのだろう。魔力回復薬を立て続けに二本飲み干した。
そうして飲み干した後に言われたのがこれである。
なんで今そんな話を……?
誰もが夢の話をしているのだなと信じてくれなかった中で、当時、奇妙な友情をはぐくんでいたグレンは、私の話を真剣に聞いてくれていた。
ドラゴンのことなら私に聞けばいいよ、とあの頃の私は自信満々にグレンに宣言していた。
だって、こいつ、すごくちゃんと話聞いてくれるから……。
「今王都を騒がせているモンスターは、……ドラゴンだ。モリーに見てもらおうと思って探していたんだ。家にいてくれて助かった」
「お、おぅ……」
そして、幼いころの記憶と、ドラゴンのことはモリーに聞くという教育が今まさに実を結んだ。
なんでだよ。
ドラゴンを王都の外に誘導できないか? それができないなら、総力をあげて討伐をしなければならないと、グレンは言う。
ええー……。今はか弱い人間の私になんちゅーことを頼んでくるんだ。
いったい誰のせいでこんなことに……。私か。
それにしても、倒すのを最終目的にしていなかったから苦戦していたということか。
……もしや、グレン、その暴れているドラゴンのことを私の親戚かなんかだと思ってない? 違うよね? 大丈夫だよね? 私のこと、人間カウントしてくれてるよね?
「多分、若い個体だと思う。お前から聞いたドラゴンの大きさよりだいぶ小さい」
「よく覚えてるね。でも、私の昔ってほら、結構歳食ってたからだいぶ育ってたし比較対象にはならないかもだし」
どんどんでかくなっていったグレンと違って、私はあまり大きく育たなかった。
だから、グレンが私を担いで走り出しても安定感がある。魔法を使ってるんだとは思うけれど。
走りながら、グレンはドラゴンについて説明してくれる。
ずっと咆哮を上げていて、攻撃してもダメージがあまり通らないのだという。
それにしても、逃げる人が少なくなってきているのに、子供の泣き声がでかすぎて全然ドラゴンの咆哮とやらが聞こえないんですけど、子供たちの避難どうなってるんだろう。
「モリー! あそこだ!」
騎士たちが緊急で作成したのだろう、陣のある小高い場所から見下ろした先に、確かにドラゴンがいる。
傷ついた騎士や、王都の警備をしている兵士たち、また、冒険者たちがそこかしこで手当てを受けている。
聞くところによると、まだ死者は出ていないらしい。
私は、瓦礫の中に立つドラゴンを見た。
そして、私をずっと抱き上げているグレンの頭を叩く。
おろしてほしいときの合図だ。
近くにいたグレンの部下らしき騎士が、ぎょっとしたように目を見開いていたが、グレンは何も言わずに私を下ろした。
ほとんどかすり傷しか負わされていないドラゴン。
美しい鱗だ。
恐らく上位種。
グレンの見立て通り、……若い。
というよりも、これは……
私は、肩にかけていた圧縮バッグから、魔女の様々な薬を出すと、使ってくれ、と近くの救護係に渡した。
そして、更にそのバッグの中から、魔女の拡声器というメガホン型の道具を出した。
子供の泣き声が、ずっとあたりに響いている。
私は、グレンよりも前に身を乗り出して、拡声器に口を当てた。
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「ごるぅあー!! かーちゃん、かーちゃんて、うるさぁい!! 巣立ちしたドラゴンがいつまでも母親を呼ぶんじゃなぁーーい!! 」
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私の拡声器を通した声が、王都中に届けとばかりに大きく響いた。
反響がひどい。ごめん。
反響が落ちつく前に、それまで聞こえていた子供の泣き声がぴたりと止んだ。
暫くして、泣いていた子供の声が再び、でもでもだって、と泣き声交じりで叫ぶ。
私も負けじと拡声器を通して会話する。
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「だってじゃないの! 巣立ち直後で人のたくさんいるところに来るような無謀な真似するなんて、さては転生ドラゴンか!? え? 知らない? 違うの? 普通生まれた地域で鱗の硬度が上がるまでは狩りして生活するもんでしょうが! おれ最強!ってするには早いんですけど!! 巣立つ前にかーちゃんに教えてもらったでしょ! ……は? 教えてもらってない? え? 狩りの仕方習う前に巣からかーちゃんがいなくなった? え? ……ちょっとそこで座ってなさい」
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ドラゴンがぐすぐすと泣きながらうずくまったのを確認して、私は拡声器のスイッチをオフにした。
グレン、これは大変なことですよ、と、私は拡声器を口から離して傍らにずっといてくれた幼馴染に向かって言った。
「育児放棄された幼いドラゴンがお腹を空かせています。食べ物をあのドラゴンに分けてやってくれませんか」
かわいそうすぎる……、と、社会人ドラゴン女子の私は頭を下げながら、耐えきれずに涙をこぼした。
狩りの仕方も習っていない、強制巣立ちをさせられた幼気なドラゴンであったことが幸いし、死者はいなかった。
硬くなりきる前の鱗を、人間に傷をつけられ、びっくりして泣いて泣いて母を呼びごろんごろんしていた幼いドラゴン。
どうしていいのかわからないまま空を飛び、わいわい楽しそうなごちゃごちゃしたところを見つけて、お腹もすいていたけど興味を持って王都に舞い降り、そうして悲劇が起きた。
でも、そこには私がいて、グレンがいた。
私がずっと子供が泣いていると思っていたのは、そのままドラゴンの泣き声であり、咆哮だったのだ。
幼いドラゴンは、集められた食料品を口の中に入れてもらって、傷に薬を塗ってもらって、なんだか口うるさいヤツに色々聞かれたり話したりしながら瓦礫の中でちょっと眠った。
その口うるさいヤツが私なんですけど。
拡声器で会話をしていたがために、周囲への説明は簡単に済んだ。
私が魔女のモリーであることも幸いして、なんか魔女のあれこれでドラゴンと話せていると思われた。
グレンも詳しく説明する気も無いようで、私もこれ幸いと口をつぐんだ。
かわいそうなドラゴン、と、王都中の人の口から口へ伝わっていき、翌日からドラゴンがうずくまっているあたりに人間が並びだした。
「これ、うちの農園でとれたりんごだよ。元気出してがんばって」
ぎゃぉおん!
「実家から送られてきたソーセージなんだけど、よかったら食べて。強く生きてね!」
くぉおおん!
「大変だったな、かーちゃんを探しに行くのか? これ、金貨っていうんだけど、旅に出るなら必要かもしれんからな」
きゃう? ……きゃぅぉー!!
王都の人々は、寛容で、おおらかで、そして人情に篤い人たちだった。
ドラゴンが破壊してしまったあたりの住人には、きちんと補償が約束されているというのも原因ではあるだろう。
王都ってちゃんとしてるんだね。国がきちんと補償してくれるなんて、素晴らしい国だよ。今まで見たことないわそんな国。
ドラゴンの私が破壊した国はそのままじわじわ滅んでしまったけれど、ここはちゃんとしてるね。
だが、これはまずい、と私は思った。
このままでは室内ドラゴンが出来上がってしまう。
自分で狩りができない、ドラゴンとしての生き方ができないようになってしまう。
ていうか皆さん甘やかしすぎなんですよねぇええ! 自分で食べれるから、口の中に入れてあげなくていいんです!
金貨はちょっと早いかな! もう少し大きくなってからね! おいちゃ……じゃなくて、おねぇちゃんが預かっとくからね! こら! だめ! めっ!!!
そろそろ王都を出ようと思っていたことでもあるし、私はこの幼いドラゴンを連れて、狩りを教えてちゃんとした巣立ちができるところへ移住することにした。
しゃあなし。
元ドラゴンとして見捨てられない。
立派なドラゴンに私が育てる。
そう決意して、実家にも連絡して、国から報奨金ももらって、人の少ない場所に住処を求めてドラゴンと旅立とうとした。
そしたら、グレンが騎士を辞めてついてきた。
なんで。
聞いてみたところ、ドラゴンのせいだった。
ドラゴンは、急速に人間の言葉を学び、話すことはできないが日常会話なら聞き取ることができるようになっていた。
そんな中、最初にご飯をくれたグレンが、お前ともそろそろお別れか、と言ったところ、ドラゴン号泣。
グレン、上司から怒られ発生。
てっきりグレンも一緒に行くのだと、ドラゴンも上司も部下も思い込んでいた。
グレンはグレンで、私とドラゴンの生活についていける気がしないと思っていたので、まあ、連絡係くらいにはなるかくらいに思っていたそうだ。
そうこうしているうちに、上司や周りの人たちに、散々に責められたらしい。
お前は責任を取らんつもりか、と。
なんの……? とグレンは思ったし、一連の話を聞いた私も思った。
けれど、移動した先で冒険者でもして生活するのもありか、と説得を受けているうちに考えが変わったグレンは、あっさりと辞表を出し、私たちと一緒に旅立つことにしたのだった。
いや、なんでよ。
せっかくちゃんとした仕事してるっていうのに、私たちについてきてもそんないい生活できないよ。
狩り三昧だよ。
「まあ、お前にぼこぼこにされたあの時から、こういう運命だったんだろうな、って」
狩りして、食べるところと食べないところに分けて、素材として売ったら生活成り立ちそうだし、モリーの手伝いできるの俺くらいだろうし。
ドラゴンだけで集落で生活できないだろ、などとグレンがいうので、私は人間ですが!? と脛をがっつりと蹴ってやった。
ほとんど人が来ない山奥の集落に、魔女のモリーは住んでいます。
荷物や手紙が届くのはちょっと時間がかかるので、余裕をもって出してほしい。
いつの間にか、ドラゴン専門の魔女のモリーと呼ばれているのは、まあ仕方がない。
無事に巣立った最初のドラゴンは、その後自分と同じ境遇のドラゴンを見つけては私のところに連れてくる。
グレンはそのたびに、ここはいつまでもドラゴンしかいないなって言うので、私は無防備な脛を蹴ってやる。
私のところから巣立ったドラゴンは、自然界のおいしいものも勿論だけれど、人間のおいしいものも覚えてしまうから。
人間たちと楽しく暮らすドラゴンが多い。
キラキラ光る、魔女のきらりんスティック(飴入り)がお気に入りのドラゴンたちは、もっといろんなものがあるといい、と商品開発を手伝ってくれる。
キラキラした飴玉も、キラキラしたガラス玉も、きっとドラゴンだった私の思いの欠片なのだ。
宝物入れの洞窟の中で暮らしていたあの頃のドラゴン生活より、ずっと楽しくて、キラキラしている日々。
三度目の今のために、一度目も二度目もあったのかな、と私は最近思うようになった。
温かい日差しの中、グレンと、遊びに来ていた最初のドラゴンが狩りを終えて帰って来た。
私の宝物たち。
ずっと、私が大切に守るからね。
end
社会人ドラゴン女子:モリー>>
ドラゴン味強めなので、宝物は大事にしまっておくタイプ。ちょっと人間の思考とずれている時がある。
号泣男子:グレン>>
幼いころからの刷り込みなのか、モリーをほぼドラゴンだと思っているふしがある。モリーという存在と思っているので、様子のおかしいところがあっても受け入れている。
号泣ドラゴン>>
種族としては最高ランクのドラゴン。モリーは自分より強いドラゴンであるとなぜかずっと思い込んでいる。モリーがほぼかーちゃんだからかも?




