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焚き火の名乗り
火は乾いた枝をぱちぱちと燃やし、周囲を仄かに照らしていた。
夜の森は静かで、遠くからフクロウの鳴き声が聞こえる。
少女は焚き火の傍らで、小さく身を縮めていた。
その頬にはまだ薄く泥が残っていて、彼女の境遇を物語っていた。
「寒いなら、近づけ」
ユウ――そう名乗った男は、火に背を向けるようにして座っている。
気配を感じてはいても、目線はずっと空を見上げたままだ。
「……ありがとう、ユウさん」
少女は恐る恐る焚き火に近寄り、その温もりに身を委ねる。
「お前、名は?」
沈黙の中、ぽつりとユウが尋ねた。
「リーナ……です」
「ふむ。生き延びたかったら、俺から離れるな」
「……うん」
ふたりの間に沈黙が落ちる。だが、それは気まずさではなく、どこか落ち着いた空気だった。
焚き火の揺れる光が、リーナの顔を照らし、瞳に映ったユウの背はとても大きく、遠く見えた。
(この人は……何者なんだろう)
だが、リーナはもう、訊こうとは思わなかった。
ただ、歩いていく背中を、見失わないようにと、それだけを強く思った。
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