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沈黙の指揮者

盗賊たちは数の優位を生かし、じりじりと骸骨兵を押し返していた。

 粗末な剣であっても、叩き折られ、打ち砕かれれば、骸骨兵に成す術はない。

 だが、その様子を、優真は微動だにせず見下ろしていた。


 「……そろそろ、遊びは終わりだ」


 そう呟くと、優真はポーチから一つの黒い牙を取り出した。

 地面にそれを投げると、牙は腐食し、黒煙をあげながら地を穿った。


 「汝に名は無くとも――刃となれ。強化骸骨兵、起動」


 黒煙の中から現れたのは、通常の骸骨兵より一回り大きい個体だった。

 頭には兜を被り、両腕には錆びた籠手、そして手には大剣を携えている。


 「な、なんだ今度は!? 骸骨のくせに、装備が――!」


 ドガァッ!


 強化骸骨兵の一撃が盗賊の一人を吹き飛ばした。

 骨と剣の軋む音が、恐怖を引き裂く。


 「くっ……あ、あいつをやれ! 一人で出張ってきたやつだ!」


 盗賊のリーダー格らしき男が吼えた。

 その声に応じ、数人の盗賊が一斉に強化骸骨兵に向かう。


 だが、骸骨兵は躊躇なくその大剣を振るい、二人、三人と倒していく。


 「……なるほど、魔力の流れも安定している。使えるな」


 優真は満足げに呟いた。


 そのときだった。少女の背後から、一人の盗賊が抜け駆けして近づいていた。


 「チビ一人か、こいつを人質にすれば――」


 瞬間、優真の目が光った。


 「――触るな」


 ズシャッ!


 骸骨兵の一本が、まるで合図でも受けたかのように振り返り、盗賊の腹部を貫いた。

 血が飛び散る中、少女は目を見開いた。


 「……ありがとう……ございます」


 「勘違いするな。お前に傷がついたら、使い物にならなくなる」


 冷たい声だった。だが、少女は小さく笑った。


 「でも……嬉しかったです」


 その笑みに、優真はしばし無言で立ち尽くしていた。



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