骸の兵は語らずとも
骸骨兵たちは剣を振るい、盗賊たちに襲いかかる。
最初の数人は、その異様な光景と不意打ちに為す術もなく斬り伏せられた。
だが、盗賊たちもただの素人ではない。
「落ち着け!中身はただの骨だ!叩き折ればいい!」
「囲め!数で押せばどうにかなる!」
数と勢いで押し返され、骸骨兵は次第に劣勢に立たされていく。
一体、また一体と骨を砕かれ、剣を落として崩れ落ちていった。
「……チッ、やはり数と質では限界があるな」
優真は舌打ちしながらも、焦りは見せなかった。
彼はゆっくりと手をかざし、周囲の地面を指でなぞるように動かす。
それだけで、土が震え、再び骸骨たちが這い出してくる。
今度の骸骨兵たちは、盾を装備し、装甲もやや厚くなっていた。
それでも彼らは喋らず、ただ命令に従って武器を振るう。
「第二陣、出ろ」
優真の命令とともに、盾を構えた骸骨兵たちが前線へと躍り出る。
防御を重視した布陣で、盗賊たちの攻撃を受け止め、少しずつ押し戻していく。
「お、おい……あいつら、また出てきやがったぞ!何体いるんだ!?」
「くそっ、こっちは人間だってのに……ッ!」
骸骨の剣が盗賊の鎧を裂き、盾が顔面を粉砕する。
無感情な死者たちの波に、ついに士気が折れた盗賊の一団が、悲鳴とともに散っていった。
戦いが終わった静寂の中、優真は崩れた骸骨たちを無言で見下ろした。
「次は、もう少しまともな素材を使いたいところだな」
彼の隣では、少女が小さく息を呑んでいた。
目の前で繰り広げられた光景に怯えながらも、彼女は彼の背をじっと見つめている。
(この人、やっぱり……すごい。でも――)
不思議と、逃げたいとは思わなかった。
その背中の先に、自分の居場所があるような気がした。
---