死者は命ずるままに
焼け落ちた村を背に、優真は歩き出す。
隣には、あの少女――名乗らなかったが、何も言わずに彼の後ろをついてきた。
「……まったく」
自分でも、何がしたかったのか分からない。助けたのは気まぐれだ。
利用価値があると思ったのも、ほんの一瞬の計算に過ぎない。
愛着など一欠片も湧いていない。はずだった。
「名前は?」
少女がぽつりと聞いてくる。
「……好きに呼べ」
「じゃあ……おにいちゃん!」
「……却下だ」
やれやれと額を押さえる優真。その背後、木々の間に影が動いた。
――ギギッ。
音がした。
優真の足が止まる。風が止む。
周囲の空気が、一瞬で「殺意」に染まった。
「物取り……か」
木陰から現れたのは、斧や棍棒を手にした男たち。
薄汚れた鎧、ふてぶてしい笑み。盗賊だ。
「おいおい、魔術師様かよ。しかも連れが女の子とは。こりゃあいい土産が手に入るな」
「面倒だな……」
優真はフードを脱ぐ。その瞳が淡く光り、死の波動が周囲に広がる。
「……立て。骨共よ」
彼の足元に黒い瘴気が渦巻いた。
地面を割って、骸骨兵が数体這い出てくる。剣を持ち、目を輝かせながら。
「な、なんだこりゃあ!?」
戦いが始まる。
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