骸の呪いと異邦の術
骨鬼が砕け落ち、白い霜が墓地を覆う。
風が吹き、散らばった骨を転がしていく。
ユウはその中心に立ち、ひとり砕けた頭蓋を見つめていた。
「これは……ただの偶然じゃないな」
低く漏らした言葉に、背後からリーナが声をかけた。
「ユウ……さっき、“俺の世界にも似たものがあった”って言ってたよね」
ユウは振り向かず、小さく頷く。
「そうだ。あの骨鬼みたいな“呪いに動かされる死体”、俺のいた場所にもいたよ。
ただ、あれほど歪んだものは見たことがないけどな」
リーナは静かに歩み寄り、少し間を置いて問いかけた。
「ねえ、ユウ。……あなた、どこから来たの?」
しばし沈黙があった。
やがてユウは、ゆっくりと顔を上げる。
「……俺は、元の世界じゃ、ただの高校生だった。日本って国にいた。
気づいたら、こんな世界に放り出されてたんだ。何の説明もなく、選ばれたわけでもなくな」
リーナは目を見開く。
「転移者……なの?」
「そうらしい。こっちに来て、初めてその言葉を聞いた」
ユウの声はどこか乾いていた。感情を押し殺すように。
「何もわからないまま、この世界の空気を吸って、最初に出会ったのは……死体だった。
そして“術”だ。あいつらが教えてくれたんだ。“こうすれば動く”ってな」
リーナはユウの横顔を見つめていた。
「怖く……なかったの?」
「怖くなかったら、そっちのほうが異常だよ。
でも、あのときはそれしかなかった。頼れる人も、帰る場所もなかったから……
だから、死体を使うことを選んだ」
風が二人の間を通り抜ける。
ユウは少しだけ目を伏せ、吐き出すように言った。
「人は、生きてるから裏切る。死者は、命令した通りにしか動かない。
……少なくとも、俺にとっては、そっちのほうがずっとマシだった」
リーナは、何も言わなかった。ただ、墓地に積もる霜の冷たさを感じながら、その言葉を受け止めていた。
そしてユウは、遠くを見つめながら、静かに言う。
「……誰かが、死体を使って何かを始めようとしている。俺と同じように、あるいは……それ以上に」
過去は、終わっていなかった。
否、ようやく始まったばかりなのかもしれない。
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