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よそ者の影

森を抜けた先に、小さな丘があった。ユウとリーナはその頂から、遠くに霞む人の気配を見つけた。


 「……あれ、村?」


 リーナが目を細めて呟く。朝靄の中、木造の家々が点在し、煙が静かに立ち昇っていた。


 「そうだな。大した規模じゃないが……避難にはちょうどいい」


 ユウはそう言って立ち止まり、リーナの肩を軽く押さえる。


 「だが、簡単に信用はされまい。お前も、俺のこともな」


 「……うん、でも……わたし、あんたのこと信じてるよ」


 その言葉に、ユウは一瞬だけ目を細めたが、すぐに視線を村に戻す。


 「勝手に信じて、勝手に絶望するなよ。俺は、英雄でも聖人でもない」


 リーナは笑った。かすかに、それでも嬉しそうに。


 「うん、それでも。今は一緒にいてほしいから」


 そんなやり取りの後、二人は丘を下り始めた。旅の第二章――人の世界との接触が、静かに幕を開ける。

村の門は閉ざされていた。


 木で組まれた簡素な柵越しに、槍を持った男たちがこちらを見下ろしている。


 「止まれ! 名を名乗れ!」


 ユウはリーナの前に立ち、静かに言った。


 「旅の者だ。名はユウ。隣の娘はリーナ。怪しい者ではない」


 「怪しくないなら、何故こんな森の中から? それに、その腰の異様な石版……魔術師か?」


 「何とでも言え。だが、俺たちは宿と情報がほしいだけだ」


 見張りの男たちは顔を見合わせた。警戒の色は消えない。だが、数人の村人が背後から集まり、ひそひそと話している声が聞こえる。


 「……もしかして、最近の盗賊を追い払ったって噂の……?」


 「そうだ、あの夜に……森の中から悲鳴が聞こえたって……」


 やがて、一人の中年男が門の隙間から歩み出た。どうやら村のまとめ役らしい。


 「旅人よ。何者であろうと、今はお前らを追い返す余裕はない。だが、悪さをする気なら……」


 「ない。それで充分だ」


 ユウが答え、門がゆっくりと開かれた。


 こうして、彼とリーナは人里へと足を踏み入れた。



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