暁に歩む
夜が明けた。
濃い霧と冷たい空気が草原を包み、朝日がゆっくりと空を染めていく。焚き火は既に消え、辺りには燃えかすが残るのみだった。
リーナはゆっくりと身体を起こした。眠りは浅かったが、悪い夢を見ることはなかった。それだけで、昨夜との違いを感じるには十分だった。
「……おはよう」
小さな声で挨拶する。ユウは既に立ち上がっており、周囲を見渡していた。
「起きたか。支度をしろ。ここにはもう長くいられない」
「うん」
リーナは立ち上がり、毛布をたたみながら周囲を見た。骸骨兵の残骸は地面に散らばっているが、腐敗や悪臭はなく、まるでその存在自体が夜と共に消えていくようだった。
「……昨日の、あの骸骨。ありがとうって、ちゃんと伝えたかったな」
ぽつりとこぼすリーナに、ユウは少しだけ視線を向ける。
「意思はない。ただの命令で動いている」
「それでも、あれは……私を守ってくれた」
ユウは何も言わなかったが、彼女の言葉を否定することもなかった。
二人は再び歩き出す。森の外れの道を越え、次の目的地へと足を進める。
しばらくの沈黙の後、ユウが口を開いた。
「……次の村まで、あと一日。だが、途中に廃屋と古い教会跡がある。どちらかで中継する」
「……どっちが安全?」
「どちらも危険だ。ただ、教会跡はかつて封印施設だったと記録がある。もしまだ結界の残滓があるなら、魔物の侵入は防げるかもしれん」
「じゃあ、教会にしよう」
リーナが決意するように言うと、ユウはうなずいて歩を進めた。
朝霧の中、二人の影が長く伸びていた。無言のまま、けれど歩調はぴたりと揃っていた。
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