世間知らずの白髪の少女と古代魔法都市(王女エレンと闇の魔女)「私が、この国を救う!」
この物語は、世間知らずの白髪の少女と古代魔法都市(絶望と再生の物語)「あなたが見ている世界。それは、本当に本当の世界ですか?」(本編)から、何百年後かのお話です。
【ルノーラと王女エレンの物語】
序章:友の死
アストレア王国の王都、煌びやかな光に包まれた祝祭の夜。しかし、王女エレンの心は、冷たい闇に閉ざされていた。幼い頃からの親友、リリアが、変わり果てた姿で発見されたのだ。魔法が使えないながらも、いつも明るく、誰よりもエレンを支えてくれたリリア。その死は、エレンにとって、世界の色彩を失わせるほどの衝撃だった。
「なぜ…リリアが…」
震える手で、リリアの頬に触れる。かつては温もりがあった肌は、信じられないほど冷たい。傍らには、小さな瓶が転がっていた。中には、不気味な光を放つ、虹色の粉が残っている。
葬儀の日、エレンはリリアの母親から、衝撃的な事実を聞かされる。リリアは、魔法使いになるために、「ルノーラ」という薬を使ったのだという。ルノーラ。それは、王都でも噂になっていた、禁断の薬。魔法使いでない者に、一時的に魔法の力をもたらすという、希望と絶望が同居する代物。
「リリアは、魔法が使えない自分を、ずっと苦に思っていたのでしょう…」
母親の言葉が、エレンの胸に突き刺さる。なぜ、リリアは相談してくれなかったのか。なぜ、一人でこんな危険な薬に手を出してしまったのか。後悔と悲しみが、エレンの心を激しく揺さぶる。
エレンは誓う。リリアの死の真相を、必ず突き止めると。ルノーラという薬に隠された秘密を暴き、リリアを死に追いやった者たちを、決して許さないと。
第一章:禁断の薬
エレンは、王宮の一室で、一人調査を開始する。手始めに、ルノーラに関する情報を集めることにした。王立図書館に保管されている文献、過去の事件記録、そして、街に広がる噂話。あらゆる情報を集め、丹念に分析していく。
調査を進めるうちに、エレンはルノーラの恐ろしい副作用を知る。魔法の力を得る代償として、服用者の精神は徐々に蝕まれ、一年後には人格が崩壊するという。リリアの変わり果てた姿は、まさにその末路だったのだ。
「こんな薬が、なぜ…」
エレンの怒りは、静かに燃え盛る炎のように、激しさを増していく。ルノーラを製造し、人々に売り捌いているのは誰なのか。背後に潜む、巨大な闇の存在を感じながら、エレンはさらに深く調査を進めていく。
やがて、エレンは一つの事実に辿り着く。ルノーラを製造しているのは、アストレア王国で絶大な影響力を持つ、御三家と呼ばれる製薬会社の一つ、「ルルシア」だという。ルルシアは、表向きは人々に希望を与える薬を開発する、善良な企業として知られている。しかし、その裏では、禁断の薬を製造し、莫大な利益を得ているのだ。
エレンは、ルルシアの社長、ブラッドという男に目をつける。ブラッドは、冷酷で野心的な男として知られ、その行動には常に謎が付きまとっていた。エレンは、ブラッドがルノーラ事件の鍵を握っていると確信する。
第二章:闇の魔女
ルルシアの調査を進める中で、エレンはもう一人の重要な人物の存在を知る。ベレノーラ。彼女は、かつて王国を恐怖に陥れた、伝説的な闇の魔女だ。ベレノーラは、強力な闇魔法の使い手であり、その力は王国騎士団をも凌駕すると言われていた。
ベレノーラは、数年前に王国から追放されたとされていた。しかし、エレンは、ベレノーラが密かに王国に潜伏し、ルルシアと繋がっているという情報を掴む。ベレノーラは、ルノーラの開発に深く関与しており、その強大な魔力で、ルルシアの悪事を隠蔽しているのだ。
エレンは、ベレノーラの居場所を突き止め、直接対峙することを決意する。ベレノーラを倒さなければ、ルノーラの悪夢を止めることはできない。しかし、ベレノーラは、並大抵の相手ではない。エレンは、王国最強の魔女との戦いに、命を懸ける覚悟を決める。
第三章:王女の覚悟
ベレノーラとの対決の日。エレンは、漆黒のフード付きコートに身を包み、双剣を手に、ベレノーラの隠れ家へと向かう。隠れ家は、王都から遠く離れた、深い森の中にあった。鬱蒼とした木々に囲まれた隠れ家は、まるでこの世のものとは思えないほど、不気味な雰囲気を漂わせていた。
隠れ家の中に足を踏み入れると、そこは異様な光景が広がっていた。壁には奇怪な模様が描かれ、床にはおぞましい魔法陣が刻まれている。そして、奥の玉座に座るベレノーラは、まるで闇そのものだった。
「よく来たな、王女。私の力を試そうというのか?」
ベレノーラの声は、冷たく、耳に突き刺さる。その瞳は、底知れぬ闇を湛え、エレンを射抜くように見つめていた。
「貴様が、ルノーラを…!リリアを殺したのは、貴様か!」
エレンは、怒りを露わにし、双剣を構える。ベレノーラは、不気味な笑みを浮かべた。
「ルノーラは、愚かな人間たちに、ほんの少しの力を与えただけ。そして、その代償を支払っただけのこと。私が悪いのではない、弱さが悪いのだ。」
ベレノーラの言葉に、エレンの怒りは頂点に達する。
「黙れ!貴様の歪んだ思想で、多くの人々が苦しんでいる!リリアの命を奪った貴様を、私は決して許さない!」
エレンは、渾身の力を込め、ベレノーラに斬りかかる。
第四章:剣の嵐
エレンとベレノーラの戦いは、凄まじいものだった。エレンの創り出す剣は、まるで流星のようにベレノーラに襲い掛かる。しかし、ベレノーラは、闇のバリアで全ての攻撃を防ぎきる。ベレノーラのバリアは、質量エネルギーをゼロにするという、絶対的な防御力を持つ。いかなる物理攻撃も、特殊攻撃も、バリアの前には無力だった。
「無駄だ、王女。私のバリアを破ることはできない。」
ベレノーラの言葉通り、エレンの攻撃は、全く通用しない。焦りと絶望が、エレンの心を蝕み始める。しかし、エレンは諦めなかった。リリアの笑顔、母の優しさ、そして、王国の人々の未来。守るべきもののために、エレンは再び立ち上がる。
エレンは、ベレノーラのバリアの弱点を見抜こうと、全神経を研ぎ澄ませる。そして、ついに気づく。ベレノーラのバリアには、許容限界値があるということに。無限の防御力を持つわけではない。魔力を消費し続ける限り、いつかは限界が来るはずだ。
エレンは、最後の賭けに出る。自らの魔力を極限まで高め、無数の剣を創造する。それは、まるで剣の雨、剣の嵐だった。
「これが、私の全て…!うおおおおおお!」
エレンは、創造した全ての剣を、ベレノーラに向けて放つ。剣の雨は、ベレノーラのバリアを激しく打ち付ける。バリアは、徐々にひび割れ始め、その光は弱まっていく。
「ば…馬鹿な…!私のバリアが…!」
ベレノーラは、信じられないという表情で、崩れゆくバリアを見つめる。そして、ついに、バリアは限界を超え、砕け散った。
剣の雨は、ベレノーラを容赦なく貫く。ベレノーラは、絶叫とともに倒れ伏し、その体は光の粒子となって消えていった。
終章:夜明け
ベレノーラが倒れ、ルノーラの悪夢は終わりを告げた。事件の真相は白日の下に晒され、ルルシアの社長、ブラッドは逮捕された。ルルシアは倒産し、永久国外追放という、最も重い罰を受けた。
アストレア王国には、再び平和が訪れた。しかし、エレンの心には、深い悲しみが残っていた。リリアはもういない。しかし、エレンは、リリアの死を無駄にはしなかった。リリアの犠牲の上に、新たな未来を築いたのだ。
数日後、エレンは王宮の一室に呼ばれる。そこにいたのは、母である王妃、綾乃だった。綾乃は、優しく微笑み、エレンを抱きしめる。
「エレン…よくやったわね。あなたは、王国を救った英雄よ。」
綾乃の言葉に、エレンの目から涙が溢れる。それは、悲しみではなく、喜びの涙だった。エレンは、母の腕の中で、子供のように泣きじゃくった。
「母上…私…私は…」
「大丈夫よ、エレン。あなたは、立派に役目を果たしたわ。もう、何も心配することはないのよ。」
綾乃は、エレンの頭を優しく撫でる。その温もりは、エレンの心を癒し、深い安らぎを与える。
やがて、エレンは顔を上げ、綾乃を見つめる。その瞳には、強い光が宿っていた。
「私は、これからも、王国のために生きる。リリアが信じた、美しい国を守るために…」
綾乃は、満足そうに頷き、エレンの頬に口づけをする。
「ええ、きっとできるわ。あなたは、私の誇りよ。」
窓の外では、朝日が昇り始め、王国を優しく照らしていた。エレンは、その光を見つめながら、新たな決意を胸に誓う。
リリア、見ていてください。私は、貴女の分まで、強く生きる。この国を、もっと素晴らしい場所にしてみせます。
エレンの長い戦いは、ようやく終わりを告げた。しかし、彼女の物語は、まだ始まったばかりなのだ。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。
それでは、良い一日をお過ごしくださいませ。
親愛なる貴方様へ。
希望の王より。