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Alice in Re.selection  作者: 名も無き小説家メア
1部 Charlotte
3/21

Charlotte Ⅲ|その男、化け物につき

マチェット・・・サバイバル用の刃渡りの長いナイフ

「逃げろー! こっちだ! はやく!」

等と、声があげられている。うるふ達と別れた俺は1人、避難所へと辿り着いた。

「先生! 雨音さん達が!」

と最後に入ってきた生徒が言う。だが、こんな状況の為、先生達は動きたくても動けない。

「くそ、逃げてこいよ!」

と言葉を零す。今は誰も助けに行けない、逃げてきただけの俺は役立ずだと言われた。確かにそうかもしれない、だが俺はそんな事よりもあいつらを死なせたくない。ならば、行くしかない、なんせ俺は約束したのだ、

「お前らは必ず、俺が守る」

そうして俺は走り出した。いつの日か交わした約束を果たすために。



「「2ラウンド目といこう!」」

そう言って始まった戦闘は、肉弾戦から始まる。俺は、自分の目を疑った。なんせ、最底辺のあいつがまともに黒いローブの男とやりあっているからだ。通常、能力者は常人より身体能力が優れている。能力を極めればそれに比例して身体能力も向上するのだ。そしてあの黒いローブの男は恐らく相当なやり手、プロなのだろう。学園きっての天才、それに続く者まで倒しきっているところを見ればわかる。俺は能力が能力のため、体を鍛えて身体能力を底上げしてきたが及ばなかった。だがそんな化け物に奏音は攻撃を入れている。

「これが、最底辺、だと? 笑わせるな、チート、じゃねぇか」

と一人呟き、掠れる視界に黒い幕を下ろすのだった。


激しい肉弾戦を繰り広げる最中、俺は辺りの情報を集めていた。落ちている得物、開けた場所、そしてうるふ達の位置全てを把握して、最適なタイミング、場所を見極める。そして俺はそれを見つけた、

「っっ!」

相手の腹部に蹴りを入れて距離を離したあと、俺はそれを手にとる。

「お前もその得物なのか?」

「あぁ、なんだかんだこれが一番しっくり来るんだ。デカ過ぎず、軽い。これほど扱いやすいものは無い」

そう、俺はナイフを手に取った。多少刃こぼれが見えるが問題ないだろう。

「お前はこの攻撃をどう避ける?」

と男は鎌を投擲してくる。俺はそれを横にズレることでかわした、はずだった。鎌が通り過ぎ、俺はすぐに右腕の違和感に気づく。嫌な予感がした俺は左手のナイフで右腕を自分で切断する。

「ほう? 毒が回り始める前に自ら腕を落とすとは、これは楽しめそうだな。だが、おしいな。片腕では俺が勝ってしまう」

「生意気言ってんじゃねぇよ、ガキかお前は。こんなもんあっても無くてもお前は倒せんだよ」

切断した右腕を止血しながら攻撃に備える。が、この出血量だと持って数10分、ならばすぐに勝負を決める必要がある。右半身を襲う激しい痛みに歯を食いしばり、相手の出方を伺う。

「どうした? こないのならこっちから行くぞ!」

そう言い男は俺との距離を詰める。男は足に装備していたマチェットを取り出し、正確に当たれば致命傷を避けられない場所を狙ってくる。

「お前、相当な場数を踏んできたな? 俺の攻撃をここまで避けられるやつはお前で2人目だ!」

確かにこいつの攻撃は凄まじい。一手、また一手と先を読みながらかわさなければならない。

「俺の攻撃を避けられたあと一人は、最強の能力者と呼ばれた正体不明の男、『アーテルノクス』だ。あいつは強かったが、今のお前とは比にならねぇくらい強いさ!」

『アーテルノクス』それは3年前に突如として現れた最近の能力者。半日で国の裏組織を半分潰し、姿をくらませた人物だ。

「どいつもこいつも、俺を天才共と比べやがってよぉ!」

俺はナイフで男の攻撃を受け流し、再び蹴りを入れて体勢を立て直す。

「くそ、アレをやるしかないのか」

と俺は一人呟いた。男はその隙に先程の大鎌を投擲してきたのだが、その鎌が俺に届くことは無かった。



俺が投げた大鎌はやつに届くことはなく、そのまま消えていった。何が起こったのか理解が出来なかったが、奴の後ろに倒れている男を見つけた。恐らく、今のはその男の力なのだろう。能力を無効化する能力、そいつが後ろにいる限り能力は効かないと判断し、俺は片腕の無いそいつに斬りかかる。


黒いローブの男は片腕のない俺になら肉弾戦で正気があると考えたのか斬りかかってきた。しかし俺はそのマチェットをいなしてその腕の関節に蹴りを放つ。

「ぐっ!」

と言う男の声と共にそいつの腕からマチェットが落ちる。今の角度、威力なら確実に関節が外れているだろう。叩くなら今しかない、とそう考えて俺は唯一残った左手に持つナイフを空中に投げ、拳を握る。そのまま男の顔面目掛けて腕をふったのだが、

「俺も右手は残ってんだ、このくらい掴めるさ!」

と俺の左手の攻撃は相手の残された右手によって止められてしまった。男はそのまま俺の手を横へと振り払い、右手を構える。

「楽しかったぜ、だが油断したお前の負けだ。まぁせいぜい、痛みにもがき苦しんでくれよ!」

と右手が俺の心臓部目掛けて飛んでくる。

「ふっ、あぁ、そうだな終わりだ。負けだよ」

と俺はつい笑みを浮かべ、言葉を紡ぐ。

「負けだ、――――油断したお前の、な!」

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