Link World |Ⅰ
「うるふ、お前、、、」
俺は激しい腹部の痛みを堪えてそいつの名前を呼んだ。
「何やってんだ!うるふ!」
皆がうるふへと刃を向ける。が、その刃が届くことはなく血鎖の仲間によって止められていた。
「まぁ今日は奏音、お前を殺す為だけにここにこいつらがいるんだ。その出血じゃあもう助からないだろ?」
「おい、早くトドメをさせ」
うるふの横で血鎖が急かす。
「まぁまぁ大丈夫ですよあの傷口には俺の能力で塞がらないようにしてますし」
ならいいが、と血鎖は身を翻して
「要は済んだんだ帰るぞ」
とうるふと下っ端共を連れて消えていく。
「奏音さん!急いで医者を呼ばないと!」
「まぁ、待てよ、ひとつ、あてがある」
と今にも塞がりそうな視界の中、俺は返事をする。
「それはもしや、あの女か?」
とパイセンが言う。
「そうだ、あいつなら、、、」
皆は頷いてそいつを探し始める。
やがて数十分後、
「重症だね」
そいつは少し大きなカバンを抱えてやって来た。
「ここには初めましての人がたくさんいるね。私は皇海亡。君たち組織の人間なら聞いたことはあるはずだよ」
そう、こいつは闇市の王と言われる薬師だ。そしてこいつの能力は
「私の能力は万薬創造。地上に存在する薬はもちろん、存在しないものまで創りだせる。一日に数の制限があるけどその効果は保証するよ」
こいつなら全てを無効化する薬を創りだせる。
「すまないな、今度金は倍払うから許してくれ」
しぶしぶだが納得してくれたみたいだ。そうして海亡は手袋を着けて能力を発動する。周りの空気が海亡の元へと集い、固体化していく。数分後にはその手に綺麗な水色の液体が瓶の中に入っていた。
「後はこれかけるだけだから」
帰るね、とおしゅーに薬を渡して立ち上がる海亡に俺は
「なぁ、提案なんだがお前も花園に来ないか?」
「へぇ、高くつくよ?それに私にとってのメリットも無いんだけど?」
「まぁそう言うなよ。お前が入ったら俺たちがお前の後ろ盾になる。裏の連中で俺たちの名前を知らないやつはいないだろ?」
それなら、とあっさり海亡の花園入りが決まった。これで医療班がやっと出来た。
「なんとか復活したな。にしても、どうするかなあ」
俺は頭を悩ませていた。うるふがいない俺たちに残された影を倒す策がおしゅーだけになってしまった。
「おしゅーか、、、」
とチラッとおしゅーを見るがキョトンとしたおしゅーに俺は絶望を覚えていた。ダメだ、こいつ。
それから数日が経った。各々訓練をしている中俺は、
「助かる。パイセンでも敵の情報を取れなくてな。どうやら向こうに妨害系の能力持ちがいるみたいでな」
敵の情報を集めていた。戦いは情報が武器になる。敵の能力や癖は戦闘時に有利に立てる。その他にも好物なんてあげたらもしかしたら仲間になってくれるかもしれない。さ、一通り情報を集めたしお腹も空いた。よし帰ろう
「はぁ、帰りに牛丼食うかぁ」
昼飯は好物でいこうと決めた俺は帰り道を辿っていた。
「大将〜やってるかぁぁい!!」
と俺は店の扉を開いて厨房に1人立っている人物へと声をかける。
「おぅよ、随分とご無沙汰じゃあねぇか。なんだ?仕事忙しいのか?」
「そんなとこだ。来たかったんだけど中々来れなくてな」
この店は俺がガキの頃から通ってる場所だ。昔から大将は何かと良くしてくれていた。父親のいない俺からすれば父親の様な存在だ。数年前に取り壊しが決まったのだがこの場所を守りたかった俺は花園に入って裏で手を回して無理やり取り壊しを取り消した。
「元気そうで良かったよ」
そう言って俺は出された牛丼を頬張る。
「うっめぇ〜。沁みるぜ」
「ほら、サービスだ」
大将から更に牛皿追加が来た、激アツってやつだ。
「やっぱこの店だな。特にこのタレ、いつでも美味いぜ」
とまぁ見ての通り俺は大の牛丼好きだ。暇な時は食べて回ってるくらいだ。まぁそれも一旦辞めないとな。
「なぁ大将」
「なんだ?便所か?」
何言ってんだこいつ
「ちげぇよ。いっとき顔出せないかもしれないって話だ」
すると大将は少し考えるような仕草を見せて
「寂しくなるな、でもまた来るんだろ?」
あぁ、と頷いてから
「昔から世話になってるからな、これ貰ってくれよ」
と俺はバッグから1つの箱を取り出す。
「これは、高ぇだろ、?貰えねぇよ」
大将は箱を受け取り開くと中のものを見てそう言った。
「次の仕事、今までとは比にならないくらいやばくてな、もしかしたら帰れないかもしれないしせめて大将には、世話になった人には形になるものを渡したくてな」
「かな坊、、、。わかった、貰っておく。だがな?必ず戻ってこいよ。かな坊がいねぇと俺の店が寂しくなるからな」
そう言った大将の目からは涙が流れていた。
「当たり前だろ、また戻ってきたらその包丁で美味い料理作ってくれよ」
「馬鹿言え。うちのメニューには牛丼しかねぇよ。でもまぁ、増やしといてやる」
牛丼を食べ終わった俺は会計をしようと立ち上がる。
「お代はいらねぇよ。次来た時にまとめて貰うからな」
ここに来た理由は牛丼を食べるのともう1つあった。覚悟を決めるためだ。俺は必ず生きて帰る。大将に挨拶をして店を出た俺は店の看板をしばらく見つめてから、
「行くか」
俺らの本拠地へと向かった。
「戻ったぞ」
俺は本拠地に着いてから早速
「情報を集めてきた。共有したくてな」
と集めた情報を伝える。それを元に作戦を練る。
「それじゃあまとめるぞ?」
とパイセンがまとめを皆へ伝達する。
まず敵の本拠地へは4方向から同時に攻め入ることにする。
北側は瑠莉、もか、やまっち。
東側をラプラス、零、おしゅー
南側がパイセンと海亡。
そして西側が俺。
情報だとそれぞれに幹部4人が配置されているらしい。常に情報を共有したいため第1目標は敵陣の何処かに潜んでいる妨害能力持ちを仕留め、パイセンの能力で思考を伝達。それにより情報を共有し続ける。それぞれ幹部を倒した後、余力のあるやつらで雑魚の殲滅。最後に合流して影を倒す。
「各々1週間調整してくれ。ゆっくり休むのもいいし極めるのもいい」
そうして解散した。その日の夜、散歩をしていると
「また会った」
神様と出会った。
「おう、また会ったな。それで?またなんか用か」
目の前の神様はキョトンと首を傾げて
「違うよ?今日はお散歩してただけ。たまたま会った」
との事だ。用がないのなら帰らせていただこう
「それじゃあ俺はこれで、」
「待って、」
と腕を掴まれた。
「なんでしょう」
「お腹すいた、」
は?いやいや待て待て
「今何時だと思ってんだ?2時だぞ!?深夜の!」
「うん、お腹すいたからご飯ちょうだい?」
そんなことある?貴方仮にも神様でしょう?それも?奇跡起こせる能力でしょ?え?無理なの?出せないの!?
と脳内で問いかけたが
「はぁ、着いてこい、コンビニ飯でいいか?なら夜食ついでに買ってやるから」
と近くのセブン・〇〇ブンに買い物に行った。
「、、、飯だけで3000円飛んだ、だと、?」
いやまぁコンビニは高いからってのもあるだろうが、いやだとしても1000くらいで収まらないか普通。
「おいひい。ありはとう」
と買った飯をリスのように頬張りながら礼を言ってくる神様。
「こんな神様はいやだ、、」
と小声で呟いた。それから時間が経ち、
「ご馳走様でした。美味しかった」
とご満悦の神様。うん、それなら良かった、
「奏音、何処か戦いにいく、?」
「名前、知ってたんだな。さすが神様と言ったとこか」
それから一息吸ってから
「まぁ少しな」
「知ってる。僕はこの戦いで起こることも、結末も」
そうか、と頷く。
「知りたい、?」
と尋ねてきた神様に、
「いいや、俺は結末なんて知らなくていい。やれる事を目的のためにやるだけだ」
「じゃあ、気をつけて。それと、本当の敵を見誤らないでね、僕が言えるのはそれだけ」
そう言って帰って行った神様を見た時、俺の記憶に出てきた言葉が引っかかった。
『天、俺は必ずお前を助けてみせる』
これは恐らく影の記憶。だが、この言葉の意味が俺には分からなかった。
「ま、そんな事考えても意味ないよな」
考えを打ち切り帰路を辿る。
決戦当日、俺たちは配置に着いた。
〈全員準備はいいか?〉
無線機でパイセンの声が飛んでくる。
全員が配置に着き、合図がなる。
〈作戦開始!全員!武運を祈る!〉
「行こうか、アイ」
と俺の中に眠るもう1人に声をかけ、走り出した。
皆が動き、各場所で火の手が上がる。東側を任された私たち3人は中央の大きな建物に向かって前進をしていた。
「10秒後!後ろへ3メートル飛んで!」
ラプラスさんからの指示で私たちは後方へ飛んだ。そのタイミングで先程まで立っていた地面が削り取られていた。
「これは、凄いね。僕の予測がなければ全員死んでいたね」
間違いないだろう。私、音無零の能力は自身の受けた攻撃を相手へと移す。でも、今の攻撃は恐らく、
「よく避けたものだな。俺の時空断裂を」
時空系の力だ。
「俺の能力は空間を削り取る能力、この攻撃に防御系の能力は意味をなさない」
私の能力は攻撃を受けてから時間差で発動する。でも、この攻撃は空間そのものを削り取るため、能力発動前に存在ごと消されてしまう。
「おしゅー!貴方は先に行って!ここは私とラプラスさんで何とかするから!」
とおしゅーを先に送った。さて、どうしようか、
「行くぜぇ!!」
男は次々と攻撃を繰り出してくる。
「次右!後ろ!しゃがんで!」
ラプラスさんの指示に従って動く。未来予測に助けられてる。ラプラスさんがいなければ何回死んでいたか分からない。突如として現れる攻撃は不可視かつ能力が通用しない。
「ごめんねぇ!僕、攻撃的な能力じゃないからさ!役に立てなくて!」
「大丈夫です!すっごく助かってます!ほんとに!」
と攻撃を避けながら会話をする。
「あと!さっきから思ってたけど!そのラプラス『さん』っての要らないからね!」
「じゃあどう呼べばいいですかぁ!」
「そうだなぁ、ピーちゃんって呼んで欲しいかもっ!結構!」
なんでそう呼んで欲しいのかとは思いはしたが
「じゃあそれで!」
と話していると
「能力、反転。『時空断裂・アビス』」
「零ちゃん!右!左!もっかい右!しゃがんで!」
ハイテンポでの攻撃が繰り出される。
もう少し、もう少しで完成する。
「はぁ、しつこい男は、、モテないよ」
「うるせぇ!俺はなぁ!この世の全てをぶち壊さなきゃ気が済まねぇんだよ!」
なんかあったのかな?可哀想に
「もーしつこいんだから」
やっとだ、やっと構築できた。私の今出せる能力の最高到達点。戦闘開始時からずっと解析して対策を考えてた。
「そろそろ終わりにするぞ!」
その言葉に返すべく私は
「能力、反転!素戔嗚尊!」
私の能力の反転、素戔嗚尊は相手の攻撃を全て吸収して、それを元に分析、そして
「素戔嗚尊、行使!」
相手の能力をトレースすること。
「なっ!?ぐぁっ!や、やめ、」
まず、足を削り取る。そして腕、失血で死なないように傷口は時空断裂で切り取る。
「良いものをもらったよ。まぁ、君との戦いが終わったら消えるんだけどね」
「さようなら、名前も知らないけど」
新しい力を手にした私は次々と目の前に現れる敵をなぎ倒していく。やがて少し開けた所に出たが、その光景を見て絶句する。
「うる、ふ。どう、して」
目の前にはおしゅーとうるふがいた。でも、敵の服を着たおしゅー、そしてそれを脱ぎ捨てているうるふ。私はわからず、その場から
「うるふ!どういうこと!」
と問いかけた。
「俺は、奏音の指示で敵陣に潜り込んだ。裏切ったように見せて、敵の情報を流した。お前達が得た情報は俺が奏音に流したものだ」
「じゃあ、なんで味方のおしゅーを殺したの!」
「俺と奏音は、少し前から尾行され続けていた。それから本来とは違う道で帰ったりして少し揺さぶりをかけてみたらそいつらは突如として俺たちの家の周りをうろつき始めた。確信したよ。俺たちの中に内通者がいると」
そうしてうるふは刺していたナイフを取り、
「付与・命の終幕」
そう唱えるとそのナイフは禍々しいオーラを纏い、おしゅーの身体を包み込んだ。そのまま砂のように包み込んだ黒いオーラはおしゅーごと風に飛ばされて消えていった。
「騙して悪かった。まぁあれだよ?敵を騙すにはまず味方からってやつだ」
「早くいこうか。奏音さんが待ってる」
そうしておしゅーの剣を拾って奏音さんの待ってる所へうるふ、ピーちゃん、私の3人で向かった。




