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Alice in Re.selection  作者: 名も無き小説家メア
2部 とある空想上の世界
27/27

とある空想上の世界-15

 ラプラスの言った通り、全員を集めた僕は1度かなくんに身体を交代する。

「一応状況は中から見てたし聞いてたが、俺たちを集めて何を話すんだ?」

アイと意識を代わった俺はまずラプラスとやらに説明を求めた。

「まぁそう急かさない急かさない。それに、一人まだ集まってないでしょ」

そんな感じでいなされてしまった。ちなみに遅刻している奴はというと

「おしゅーか、あいつ今何やってんだよ」

おしゅーである。こんな一大事にどこで道草食ってるのやら。

「そういや奏音。助けた人達どうしたんだ?」

「ん?助けた人達か?そりゃあもうおしゅーに丸投げして――」

あ、そうだった。俺がおしゅーに残りの仕事丸投げしたんだった。いや、でも俺は悪くない!直ぐに終わらせないおしゅーが悪い!

「なにか言うことは?」

俺のことを皆して痛い目で見てくる、俺は悪くないもん、悪くない、悪く、

「ゴメンナサイ」

仕方なく謝ってやる!別に?悪いと思ったから謝ったわけじゃないんだからねっ!皆が言うから仕方なーく謝っただけだし!

「奏音さん、戻りました」

と大分ゲッソリしたおしゅーさんが登場した。

「やっときたか。遅いぞ」

と言った瞬間

「お前のせいな?」

とうるふから睨まれた。

「ま、まぁ遅れることなんて誰でもあるし?気をつければいいんだよ!うん!さっ!話をはじめましょ!」

「お前はそれでいいのか、」

いいんだよ女装男子が!と流石に言葉に出せないので心の中に留めておく。

「さぁ、皆集まったし始めようか」

とラプラスが話を始める。今集まっているのは俺、うるふ、おしゅー、零、パイセン、やまっち、もか、瑠莉。それにラプラスを合わせた9人。それからあの時現れた俺を名乗る男の話をするラプラス。

「彼は本人の言った通り、如月奏音だよ」

一瞬空気がざわつき、全員が俺の方へ視線を向けてくる。

「如月奏音だけどそこの奏音とは別。別世界から来てるんだ。所謂パラレルワールドとか並行世界ってやつだね」

なるほど、それなら理解できる。

「あの、並行世界世界ってなんです?」

「、、、は?」

といきなりバカを全開で醸し出すおしゅーに俺は

「簡単に言うとだな、並行世界ってのはこの世界じゃない世界って感じだ。例えばお前の前にチョコレートとクッキーがあったとする。そうするとお前がチョコレートを選んで食べた世界とクッキーを選んで食べた世界で2つの世界に分岐する。この2つを並行世界と呼ぶ」

わかったか?と首を傾げるバカに説明する。

「まぁ全員に伝わったところで始めようか」

それからラプラスは詳細を話し始めた。

「僕は観測者ラプラス。一応君たちのいう神様ってやつだよ。その名の通り、僕は数多の世界を観察するんだけどその中の世界の1つが彼の、ここでは影と呼ぼうか。影の世界だった。影の世界では――」

要約するとこうだ。

ラプラスの見ていた影の世界はこの世界と同じく能力が存在していた。その世界の影はごく普通の人間で能力も弱く、通っていた学園では最底辺のレッテルを貼られていた。

ある日行われた校内対抗戦で影は学園最強とされているとある女の子、影の妹、最底辺にも分け隔てなく絡んでくる唯一の友達と参加した。

その対抗戦終盤に現れた襲撃犯によって影は能力を、本当の力を解放せざるをえなかった。無事敵を倒した影は共に参加していた仲間たちに実力を隠していたことがバレる。だが、仲間達はそれを言いふらす訳でもなくむしろ尊重してくれた。

そうして数日が経った日、ある情報についての手がかりを得るために影たちは1人の人物を訪ねた。それがラプラスだ。その世界でラプラスは情報屋として名をあげており、影とは昔からの取引相手だった。影は情報を貰った後、妹が消えていることに気づく。影達は探しに行った先でそれぞれ敵と相見えるのだが、ほとんどの敵を各々が倒した時、影の前にある人物が登場した。自分と同じ顔、声、名前をもつ存在。その男は世界の真実を知っていた。そしてこの先に進むと影は嫌でも知ることになると。影は抗った。男から放たれた認めがたい言葉に反発するように、それでも起こった現実は酷いものだった。誰かの手により次々と殺される仲間達、影は恨み、怒り、そして自分を責めた。その結果精神は削り取られ、全てがどうでも良くなった影は抑えていた力を全面的に解放し、その男。未来の自分と同じことを考える。そう、能力を使って時間を超えるのだ。

そうして世界を壊した影は別の世界をも壊そうと動いた、まるで自分の削られた心を、その穴を埋めるかの様に

「まぁ、こんな所かな」

とラプラスの言葉でその短くも長い物語は終わった。話の壮大さに皆が驚いて声を上げられない状態だった。

「奏音さんは、そんな事にならないですよね」

とおしゅーから心配の声があがる。

「俺が、か。未来なんて不確定要素の集まりだ。何が起こるかなんて分からない。俺は俺のしたいようにするし誰かの思い通りに動くつもりなんて毛頭ない」

と返す。よかったと安堵するおしゅーを横目に俺はラプラスへと質問を投げかける。

「なぁ、今の俺たちで影と戦ったとして、勝率はどのくらいだと思う?」

ラプラスはうん、と少し頷き

「はっきり言って0だね。影の能力は事象を操れる領域まで来てる。その領域まで達している神なんてそうそういるもんじゃない。僕は能力で全ての結果を見ることが出来る。けど影の事象を書き換える力はそれすら超えてくるんだ。だから勝つためにはそれを消すかそれ以上の力、つまり事象ではなくそれすらも潰すことのできる力。時空超越の域にたどり着かないといけない」

俺ら全員をもってしても勝てない影の強さはどれ程のものか。にしても、時空超越の域か。

「その域ってのは俺だとどのくらいかかるんだ?」

「そうだね、常人なら1000年努力しても辿り着けないどころかその半分にも満たない。でも影と同じ存在である奏音なら、いやそれでも300年はかかるかな」

つまりほとんど不可能、か。なら1番現実的なのは、

「うるふの能力か」

それだけが唯一の強みだ。うるふはそもそも能力の対象として認識されず、能力自体も消されない。だが、今うるふの能力は1部しか残っていない。血鎖のやつに盗られたからだ。

「うん、うるふ君の能力なら止められると思う。でも問題はどうやって能力を取り戻すかだね」

とラプラスが言う。

「思ったんだけどさ、うるふくん?の能力って効果を受けないんでしょ?じゃあどうして奪われてるの?」

と質問を投げかける瑠莉にうるふは

「うるふでいい、呼び方は好きにしてくれ。本来俺の能力は能力からの干渉を無くす能力だ。それから長年にわたる訓練の末に辿り着いたのが無そのものを扱う能力なんだ。だから俺は攻撃を無にすることも能力の影響も受けないことだって可能にできる。だがあまりに強力故に代償も存在する。能力の待機時間だ。ゲームで言うCT、クールタイムってやつだな。その時の俺の能力は通常より半減した力しか出せないんだ。恐らく俺が能力を半分だけ奪われた理由は100パーセントの力が半減していたからだな」

つまり能力CT中のうるふの能力は100のうち50を休ませることで通常時は残りの50で害を防いでいる。血鎖に奪われた時に50は休ませていたから盗られなかったわけか。だが、それなら

「なぁうるふ、今は奪われてない分の力ってフルで使えるのか?それとも残りをまた半分で休ませてるのか?」

とふと浮かんだ疑問を口にする。

「前者だ。今の能力を奪われている状態でも通常時の力で能力を行使できる。でもそれ以上は取り返さないと無理だな」

不幸中の幸いってやつだな。とりあえず、答えはでたな

「まずはうるふの能力を取り返すとこからだ」

とまとめたところで

「ちょっと待って。1つ、みんなに渡したい物があるの」

そう言ってラプラスはみんなに円形の形を取るように伝えた。

「影のように、別世界にも君たちと同じ存在が無数にいる。今からその中でも影のいた世界。その世界は神の中でもNo.105『Charlotte』と呼ばれてるんだけどそこのそれぞれの記憶を同期させる」

「同期させるとどうメリットがある?」

俺はラプラスに問う。

「記憶を同期させると別の世界の自分の能力を扱えるようになる。全く別って訳じゃないけどこの世界に生きる君たちの能力から派生する力を得られる。少しでも有利に戦えると思うよ」

そうか、と周りを見渡す。皆やる気の様だ。

「始めてくれ。記憶の同期を」

うん、とラプラスは頷いてから深く息を吸って

「『世界同期(ワールドクロス)』」

と唱えた瞬間、俺の中に別の世界に生きた俺の記憶が流れてくる。そしてそれは影の世界の、影である俺の記憶。影の身に何が起きて、どう思ったのか。全てが流れ込んでくる。


それから数時間の時を経て同期が完了する。

「『Alice』」

と俺は呟く。それは俺と同期した影の記憶に出てきたたった一つの絶対に変わらない唯一無二の世界の名前。恐らく影はその世界を手に入れて自分の好きな世界に作り替えるつもりだ。

「なぁラプラス、少し話したいことがあるんだがちょっといいか?」

と俺はラプラスを呼んだ。

「うるふ、おしゅーお前らもだ。着いてこい」

と2人も呼んだ。そうして10分ほど歩いたところに1本の大きな桜の木を見つけた。

「同期したとき、恐らく影の記憶だろうがこの場所が流れてきた。別世界ではあるが全く別とも言えないからなもしかしてと思ってな」

そうして俺はその木の下へ行き、少し盛り上がった地面を掘る。しばらく掘り進めるとチェーンで閉じられた金属の黒い棺が出てきた。

「これ、は。棺?」

こくりと頷き、うるふの力でチェーンのロックを外す。

「これはおしゅー、別世界の俺がお前に託した剣だ」

そうして棺の中に入っていた澄んだ水色の剣を渡す。

「綺麗、ですね。刀身も同じ色だ。そして軽い、切れ味が心配になるくらいに」

そう心配するおしゅーに、

「そこのちっこい木、斬ってみろ」

と促す。

「緋月を使ってな」

「わかりました。緋剣流、『緋月』!」

そうしておしゅーが抜いた剣の刀身から赤い斬撃と一緒に蒼い斬撃も出てくる。

「凄い、この蒼い斬撃。氷ですか?」

「そうだ、別世界でも俺に剣を教わったお前の為に別世界の俺、つまり影が用意した剣だ。名前は『銘刀・氷雪一文字神楽(ゆきいちもんじかぐら)』。今までで1番の剣だ」

この剣は切断した、あるいは傷を付けた部分を氷で固め、侵食するおまけ付きでもある。そしてその力は

「この剣の力は、曲げられることが無い。つまり斬ってしまえばその部分は再生しない」

「じゃあ!これで俺も戦えます!」

そう、これは影を倒せるかもしれない数少ない力だ。

「お前を強化させるためにもう一度稽古を付けてやる。あとうるふ、お前には重要な役を任せたい」

そうしてそれから数十分、俺たちは会議を行った。

みんなの元へと戻り、これからの計画を立てていった。影に仕掛けるのはこれから半年後、影がこの世界を終わらせようとするタイミングで仕掛ける。まずは影の取り巻き達、ラプラスの情報によると四天王と呼ばれる4人の幹部がいる。それぞれがこの世界でトップクラスの実力を持ち、こちらも最高戦力じゃないと歯が立たないと読んだ俺は

もか、瑠莉ペア

ラプラス、零ペア

おしゅー、うるふそして俺の4組で戦うことにした。

パイセン、やまっちは皆のサポート、戦力差が激しい場合に入ってもらう。

おしゅーとうるふは俺と四天王の内2人を受け持つ。その中の1人は必ず血鎖でなければいけない。うるふの能力を取り戻す為だ。戦闘の手順はそれぞれのペアに任せる事にして各々が準備期間へとうつった。


それから半年がたち、俺たちは再び集まった。

「準備はいいか?」

俺は全員に確認する。まぁ出来てなくても行くしかないけどな。

「やぁやぁ、何やら騒がしいと思えば君たちかい」

敵陣の前で構えていた俺たちに血鎖が仲間を連れて声をかけてくる。

「あぁ、久しぶりだな血鎖。話は聞いてるよ、昔から何も変わってないなお前は。今日はお前らにお灸を据えに来てやったんだよ」

とパイセンが言う。

「へぇ?」

「血鎖、俺の力返してもらうぞ」

とうるふが告げた時だった。

「いいよ」

「今、なんて言った?」

「能力でしょ?返してあげるよ。ほら」

と血鎖は右腕をあげて指を鳴らした。

「なんのつもりだ、おいうるふ。能力は戻って来――」

確認のために俺がうるふの方を向いた時、

「じゃあな、奏音」

うるふの手が俺の腹を突き破っていた。

「どう、して、?まさかおま、え」

「あぁそうだよ!俺はお前らを切り捨てたんだ!お前達の情報も全て吐いた!その見返りとして俺は影に能力を返してもらい、お前を殺す事を約束した!すまないが俺はこっち側の人間でな、勝てない勝負はしない主義なんだ」

「ざまぁないね、信じてた味方に裏切られるなんて」

血鎖達は笑っていた。

「奏音さん!」

おしゅーが走り寄ってくる。

全く、世話がやけるな。こいつも、うるふも。

俺は心配と嘲笑を同時に受けながら、その重い瞼を閉じた。そして、

『さぁ、ここからが本番だ』

と心の中で呟いた


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