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Alice in Re.selection  作者: 名も無き小説家メア
2部 とある空想上の世界
15/22

とある空想上の世界-3

・・・・・・そして

 「はい、手出してくれる?」

 「なんで?」

 「君が能力者かどうか確かめるから」

 「警察の人間は能力者かどうか調べる事ができると聞いたんですけどどうやって調べるかまでは知らないんですよね。手を出すだけで調べられるんですか?」

 「いや、そんなわけないじゃん。調べる方法は血液だよ」

 「へっ? 血液?」

 「うん、つまり注射ってこと」

 「え、嫌なんですけど。なんで悪いことしてないのに血を採取されないといけないんですか」

 「いやだって、そうじゃないと調べられないし」

 「嫌です! 断固拒否します!」

 「じゃあ、君が持ってる情報を教えてくれるの?」

 「情報なんて持ってないんですけど」

 「僕にはそれが嘘にしか聞こえない」

 「時には人を信じるのも大切だと思うんですよねぇ」

 さてさて、本当にどうしよう。俺には今、力がない。この状態だと能力が使えないからだ。使えたら、この場から強制的に逃げることもできるんだが、生憎と今能力を使うことはできない。・・・・・・このピンチ、どう切り抜けるか。

 「そういう事だから早く手を出して。君が嘘をついてるかどうか確かめるから」

 「注射は嫌なんだよなぁ。まず、痛いのは嫌なので注射はやめてもらえますか?」

 「それじゃあ君が能力者かどうか調べられないじゃん。能力者かどうか確かめるには血を採取するしかないんだ。だから、早く手を出して、出さないと強制的に血を採ることになるよ」

 「警察って本当に横暴な集団なんですね。そんな武力行使して心が痛まないんですか? それで僕が能力者じゃなくってただの一般人だったら貴方は責任をとってくれるんですか?」

 「分かったよ。じゃあ責任とってあげる」

 「・・・・・・どんな責任ですか?」

 「君の望んだことをしてあげるよ」

 「・・・・・・それじゃあ」

 どうしよう、責任とってほしいなんて思ってないしその責任をどんな内容にするかも考えてなかった。俺はただ、血を採取されなければいいんだけどなぁ。

 「早く言ってくれる?」

 「どうしてそこまでするんですか? もしも違ったら何かしないといけないんですよ?」

 「だって確信があるから。君が能力者だって」

 「けど、その証拠は無いわけですよね?」

 「ないよ。だから勘で、君が能力者だって思ってる」

 「もしかして、そういう系の能力だったりするんですか?」

 「そういうわけじゃないよ、僕の能力は戦闘系だからね」

 「へぇ、戦闘系ですか」

 「だから、ないと思うけどもし逃げ出すようなことがあれば、痛い目みるよ?」

 「警察が脅迫なんてしていいんですか? 貴方は、正義の味方なんですよね? 僕たち住民を守るための存在なのに住民を脅すって正直意味わかんないですよ」

 「確かに、守るべき住民なのかもしれない、けど逆に住民に危険を及ぼす能力者かもしれない。あのね、能力者と犯罪者って意外と紙一重なんだ。使い道を誤れば人間を死に至らしめることだって可能。僕たち警察はその犯罪者を捕まえるのが仕事だし、それを起こさないのも仕事。普通の人間からした能力者ってどんな印象かしってる?」

 「いやぁ、僕普通の人間ですから知ってますよそりゃあ」

 「じゃあ言ってみてよ」

 「僕から言わせてもらったら能力者全員犯罪者予備軍ですよ。アイツらは能力者ってだけで威張ったりするし、普通の人間を下手に見たりする。貴方のように警察の人間ならまだしも野良の能力者なんて恐怖でしかないですよ。能力者と人間は違う。能力者は人の皮を被った化け物だと僕は思ってます」

 「ふぅん、そうなんだ。君、能力者が嫌いなの?」

 「嫌いってわけじゃないけどまぁ、好きってわけでもないですね」

 「僕も?」

 「もちろん、と言うより今の所貴方は嫌いです」

 「おぉ〜言ってくれるねぇ」

 「強制的に警察署まで連れてこられて・・・・・・それで血まで抜かれようとされて、そんな横暴な事をする警察は嫌いです」

 「まぁ、確かにそうだね。僕のやっていることは結構ダメだと思う。けど、ダメなことをしないといけないんだよ。嫌われ役がいないと救うことができない。今僕がやってるのは事前に犯罪を防ぐ事なんだ。君がもし能力者なら僕たちは君をマークする。君が言った通り、能力者は犯罪者予備軍だからね。なにかする前に事前に防ぐことも大事なんだ。だから、君に嫌われようと僕は君が能力者かどうか調べる。君に嫌われるよりも、人間を助ける方が大事だから」

 「そう、ですか」

 はぁ、と俺はため息をついて

 「わかりましたよ、じゃあ、とりあえず手を出せばいいんですか?」

 と言って俺は手を差し出した。

 「ありがとう、でも安心して。能力者でも別になにかするわけじゃないから。犯罪を犯したわけじゃないしね」

 そして、俺は血を抜かれた。正直、注射は苦手だし、能力者だってバレたくなかったがまぁ、仕方ないだろう。どうせいっても強制的に血を抜かれただろうな。そうして、その少年はこの部屋から出ていった。どうやら能力者かどうか調べに行ったようだ。

 「はぁ・・・・・・」

 しっかしまぁ、面倒なことになったなぁ。これで能力者だってバレたら俺は警察に勧誘されるんだろうか。いや、正直それは嫌だ。結局、警察が嫌いなことに変わりは無い。仲間になろうとも思わないし、仲良くなろうとも思わない。俺は、平穏に生きたいだけなんだ。能力者としてじゃない。ただの人間としてだ。能力なんて持っていても人間から嫌われるだけだからな。と、頭の中でそんなことを思い浮かべていると・・・・・・。

 「えっと」

 その少年が部屋に戻ってきた。

 「とりあえず、ごめんなさい」

 すると少年は、俺に頭を下げた。なぜ、頭を下げるんだろうと疑問に思っていたがすぐに晴れた。

 「調べた結果、君は能力者じゃないって事がわかった。僕の警察としての勘は外れてたみたい」

 「言ったじゃないですか、僕は能力者じゃないって」

 どうやらこの状態だと俺は普通の人間として判断されるらしい。まぁ、よかったよかった。これで能力者だってバレて警察からマークされてたら面倒なことになってた。

 「それじゃあ、責任をとってもらいますよ」

 「うぐぅ、そういえばそんなこと言ってたね」

 「今になって取り消したりするんですか?」

 「いや、取り消さないけどさ。どうやって責任とればいいの?」

 「それは正直考えてないですけど。まぁ、今度会うまでに決めておきますよ。とりあえず今日はもう帰ることにします」

 「あ、うんわかった。寄り道しないようにね、能力者に襲われでもしたら大変だから。君、その、可愛いんだし」

 「可愛い、ですか・・・・・・」

 嬉しくないなぁ、と思いつつ俺は、

 「ありがとうございました」

 と、とりあえずそう言っておくのだった。



 それから家に帰ってのんびりとしていたその時だった。突然スマホが鳴り響いた。誰かから電話がきたのだろう。俺はスマホを拾い、耳にあてがった。

 「なんだ?」

 「あ、そういえばアンタ今女だったわね」

 「そうだよ、能力使ってさっきからずっと女だよ。・・・・・・んで、どういう要件だ?」

 「いやちょっとテレビつけてみなさいよ! えっと、5チャンネル見て!」

 「わかった」

 と言いながら俺はテレビをつけて・・・・・・

 「へっ?」

 という変な声が漏れた。やっていたのはニュース番組で、普通のニュースならまだよかったのだが、そこに映し出されていたのは・・・・・・

 「なんで俺、テレビ出演してんだ?」

 「まぁ、今回の事件を撮影した人がいたって事よ。それでアンタの化け物っぷりがバレてテレビデビューしたわけ」

 「えぇ・・・・・・、おいおいヤベェじゃん」

 「ヤバいでしょ、普通に考えて。まぁ、あれだけヤバそうな能力者を一瞬で沈めた能力者がいたってなったらこうなるわよね。案外、あそこで介入しない方がよかったかも」

 「ホントだよ、どうすんだよこれ」

 恐らくこれで俺の存在は瞬く間に広がるだろう。確実に警察からもマークされてしまう。いやまぁ、悪いことをしたわけじゃあないんだけどね。どちらかというと正義の味方の様なことをしたのに・・・・・・なんでこんなことにならなきゃいけないんだ。

 「まぁ、今回幸いだったのが、いい意味で有名になった事かしらね。皆、最強の正義の味方が現れたって大騒ぎみたい。ま、確かにあんなに強いんだったら、誰も敵わないし人間からしたら安心でしょ。けど、考えないのかしら・・・・・・。そんな最強の正義の味方が敵になったら・・・・・・」

 「ならねぇよ俺は」

 「アンタをよく知ってる私からしたら分かるけど。まぁこの話はここまでにしておいて。で、アンタこれからどうすんの?」

 「どうするかって・・・・・・。どうすればいいんだろうな」

 これで俺の顔は広がってしまった。

 「外に出ない方がいいよなぁ」

 「いいと思うわよ。確実になんか色々と言われるでしょうし。それに警察に鉢合わせしたらアンタ完全にスカウトされるわよ。警察としてはアンタみたいな最強能力者を放置できないでしょうしね。警察に引き込んで犯罪者にならないようにするでしょうね」

 「はぁ、面倒な事になったなぁ・・・・・・」

 「けど、アンタにはそれを切り抜ける方法があるじゃない」

 「切り抜ける方法? なんだよそれ」

 「・・・・・・簡単よ」

 「お前今絶対ニヤニヤしてるだろ」

 「わかっちゃった?」

 ケラケラと笑いながらそう言ってくる舞冬に俺は言った。

 「ある程度予想できるが、切り抜ける方法ってのはなんだ?」

 「ふふっ、それはね・・・・・・これから女の子として生きていけば全然大丈夫だと思うわよ?」

 それを聞いた俺はため息をついて

 「やっぱそれしかないよなぁ」

 と呟くのだった。

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