とある空想上の世界-2
「しっかしまぁ、驚いたわねぇ。まさかあんな所に警察がいるだなんて、びっくりだわ」
「警察がいないから介入したのに、まさかもう到着してるとはな。結局、手を出さなくても良かったのかもしれないな」
「そんなの結果論よ。それに、あの警察が全然強くなかったらヤバかったじゃない」
「確かにそうだがどうなんだろうな」
「というか、アンタそろそろ時間まずいんじゃないの?」
「余裕でヤバいな・・・・・・つうわけで舞冬、周りから誰か来ないか見張っておいてくれ。あと、絶対に俺の方見るなよ。いいか? 絶対だからな?」
「別に恥ずかしがらなくてもよくない? 正直、私何度か見てるし」
「それでも、見られたくないもんは見られたくないんだよ。トイレの方に行っとくからお前は公園の見張り頼んだ」
「・・・・・・報酬は?」
「え?」
「報酬は何かあるのかって聞いてんのよ」
「・・・・・・庭掃除してやるよ」
「しょうがないわねぇ。舞冬ちゃん優しいから友人のお願いを聞いてやらんでもないわよ」
そう言って、舞冬は宙に浮いて周辺を監視し始めた。うーん、やっぱり空を飛ぶ能力っていいよなぁとそんなことを思いながら俺は公園のトイレに入るのだった。
そしてその数秒後、俺の体にとある変化が起こるのだった。
俺はトイレを出た。
「舞冬、もういいぞ」
「あらぁ、随分と可愛くなったじゃない。かなちゃん」
「うるせぇなぁ、からかうなよ」
これが俺の能力の欠点だ。能力を使った10分後、俺はなぜか女になってしまう。能力を使っている間は最強だが、この状態になると正直雑魚でしかない。だから、今の状態で襲われでもしたら俺は確実に負けるのだ。
「にしても奇妙な能力よねぇ、デメリットつきの能力なんて。聞いたことないわよそんな能力」
「まぁ強すぎるがゆえだろ。使ったら10分間最強になれるけど、使った後は最弱になる。筋力も女並みに落ちるしこの状態だと能力も使えない。男に戻るのは24時間後。勘弁してくれって感じの能力だ」
「私は普通にその能力欲しいけどね。・・・・・・男になってみたいし」
「んなもん何度かしてたら飽きる。俺も最初は新鮮だったが、だんだんと飽きてきて今となっては億劫でしかない」
「まぁ、仕方ないってことで」
「ったく適当に言いやがって」
俺はため息をつきながら、
「とりあえず、家に帰るか」
「ふと思ったけど」
「なんだ?」
「アンタ、帰り道の逆側走ってきたからまたあの道通んないといけなくない?」
「・・・・・・まぁ、遠回りして帰るさ。いや、考えたら今姿違うし大丈夫だろ」
「どうか知らねぇ、アンタの服装一緒だから、もしかするとバレる可能性あるわよ」
「流石に服装じゃバレないだろ。まぁ、念には念をってやつで違う道で帰るけど」
「そうしときなさい、警察に捕まったら面倒なことになるんだから。アンタみたいな優秀であり危険人物、確実にスカウトが来るんだからね」
「だな」
警察も今となっては能力者の組織の様な感じになっている。だから、一般人が犯罪を犯せば100パーセント捕まるし、能力者が犯罪を犯しても数で圧倒して能力者を捕まえる。・・・・・・それが今の警察だ。そしてそれが正義であり、一般人たちは警察に助けられていると言っても過言ではない。だから、そんないわばヒーローの集まり様な組織にスカウトされるのは凄くいい事なのかもしれない。だが、俺にはそこに入りたくない理由があった。まぁ、簡単に言うと少しだけ、警察に恨みがあるって感じだ。だからあまり関わりたくないし警察に入りたくもない。
「私、将来警察になろうかなぁ」
「いいんじゃないか?人の自由だし。警察に入ったら給料も良いらしいし悪くないと思うぞ。お前は別になにかされた訳じゃないし普通に入っていいと思うぞ」
「けど、そしたらアンタは私から距離をとる。違う? かなちゃん」
「ま、少しだけ離れるだろうな」
「少しだけ離れて、徐々に徐々に消えてくって感じかしら?」
「流石、俺の事を理解してるな。あと、かなちゃんってなんだ? 俺は如月奏音だぞ」
「だって今女なのに・・・・・・いや、アンタの名前なら両方いけるわね。まぁ、奏音をいじってかなちゃん。可愛いじゃない」
「可愛いとか複雑すぎる」
「複雑とか言われてもねぇ、正直今のアンタって腹立つくらいに美少女なのよねぇ。何このサラサラな髪、喧嘩売ってんの?」
「知らねぇよ、そういうのだから仕方ないだろ」
「あと! アンタ今女の子なんだからその汚い言葉遣いやめなさいよ!せっかくの美少女なんだからもう少し綺麗な言葉遣いにしときなさい」
「綺麗な言葉遣い、ねぇ。じゃあなんだ?ですわよとかそんな口調にすればいいのか?」
「そんな頭の悪いお嬢様見たいな口調にしなくてもいいわよ。なんかもうあざとい感じでいいわよ・・・・・・一人称は・・・・・・まぁ僕でいいとして」
「なんで僕でもありなんだ?」
「だってなんか僕っ子って萌えるじゃない?」
「変な性癖持ってんだなお前」
「なぁに言ってんのよ、人類誰しも僕っ子が好きに決まってるでしょ?」
「いや僕好きじゃないんだけどなぁ」
「じゃあアンタは人間じゃないってことよ」
とまぁ、舞冬と立ち話をしていたそんな時だった。
「もしかして学生さん?早く家に帰らないと駄目だよ〜」
と聞き覚えのある声が聞こえた。
「こんな夜更けに女の子2人で歩いてたら危ない目にあっちゃうかもしれないんだから」
女の子2人、か。どうやらバレてないらしい。
「けど、まだ補導されるような時間じゃないですよね?」
「まぁそうだけどさ、最近能力者の事件とか多いからこんな夜更けに女の子2人でいたら危ないよって話」
「まぁ、それもそうですね〜。今度から気をつけます〜」
「ふむ・・・・・・」
するとその少年は少し悩む動作をして・・・・・・
「どうかしましたか?」
「いや、珍しいこともあるもんだなぁって。僕ってはたから見たらただの少年にしか見えないじゃん? だからね、大体警察だってバレないんだよ・・・・・・けどなぜ君は僕が警察だって分かったの?」
「え・・・・・・」
「その服装、もしかしてさっきの男の知り合いだったりする?」
「・・・・・・なんの事ですかね?」
さてどうするか、思わぬ所で墓穴を掘ってしまった。
「そうであるならば、色々と聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「あのですね、こっちの都合も考えてください。普通に、こんな夜更けに声を掛けてくるってことは警察からなって思っただけですよ。見た目よりも実年齢が老けてたりするし、その類かなって思いまして。普通、見ず知らずの少女2人に貴方みたいに声を掛けてくる一般人がいると思います? いないですよね? だから、瞬時に警察だと思っただけです」
「ふぅん、けど君、気になるんだよねぇ」
「気になるって、僕ら別に何もしてないですよ」
「何もしてないけど事情を聞く意味はある。だから来てくれるかな?」
「だから、僕らが行くメリットがないから行きませんって! 警察の人間は否定してるのに強制的に人を連行するような人間なんですか」
「調査のためだったら仕方ないとしか言えないね。正直、僕は君が怪しいと思ってる。だから、聞かせてくれない? 君は、能力者なの?」
その問いに俺は
「いや、違いますけど」
と言った。そう、俺は能力者じゃない。少なくとも今の状態は能力者じゃないのだ。
「そこの人は?」
「私は能力者よ。と言っても空を飛ぶ程度だけどね」
そう言って舞冬はふわりと空を飛んだ。
「・・・・・・方や能力者、方や無能力者ねぇ。嘘をついている可能性もあるしとりあえず君は署まで来てもらうよ」
「え、なんで僕だけ・・・・・・」
「空を飛ぶくらいだったら別に危害は加えられないでしょ。けど、もしかすると君はヤバい能力を隠してる可能性がある」
「いや、なんで」
「さっきね、君と同じ服を着た男がいたんだけどそりゃあもう、半端ないくらいの強さだったんだ。多分、それなりに手こずるであろう能力者を一瞬にして倒した。警察にもあれほど強い人間はいない。君が、その情報を握ってる可能性があるんだ。だから、署に来てもらう」
「謎すぎじゃないですか? ただ、同じ服を着ていただけなのに」
「同じ服を着ていた、確かにそれだけしか同じ点はない。強いて言えばその白い髪くらいかな。けど、警察官としての勘が言ってる。この子だけは逃がしちゃだめだって」
「ちょちょちょ!勘弁してくださいよ。そんな事してる時間ないんだけど」
「時間があったからそこの女の子と雑談してたんじゃないの?」
「うぐぅ・・・・・・」
確かに、用事がある訳じゃない。だが、警察署に行くことだけは避けたいのだ。何故ならば・・・・・・
「署で君が本当に無能力者かどうか調べさせてもらうね」
そう、警察署には能力者かどうか見極めることのてわきる装置があるのだ。それで、検査されて俺が能力者だってことがバレたら・・・・・・。その時、本当に面倒なことになる。この少年はまくし立てるように色々と聞いてくるだろうし、ずっと質問をされ続けるだろう。だったら逃げ出せばいいと思うかもしれないが、意味無いことは目に見えてる。だってこいつは能力者だ。多分、戦闘向きの能力を持っている。俺は今無能力者だ。能力者にはどう頑張っても太刀打ちすらできない。だからここは、素直に連行されるしかないのだ。
「大丈夫、問題無いって事が分かったらすぐに帰らせるから」
「・・・・・・いってらっしゃい」
舞冬はドンマイといった表情で俺にそう言ってきた。ずるいぞお前だけ、と心の中でそう思いながら・・・・・・
俺はその少年に連行されるのだった。なんだろう、なんで悪いことをしてないのに連行されないといけないんだろう。と当たり前の疑問を浮かべながら彼の後ろを歩くのだった。