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Alice in Re.selection  作者: 奏音
1部 Charlotte
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Charlotte I|その最底辺、最弱につき

(みな)は『能力』という存在を認知しているだろうか。そう、今頭の中に浮かべているソレだ。この世界にはその『能力』が人に宿っている。早速だが皆に問いたい、最強の能力とは何か。重力を操る能力、風、水、火等の元素を操る能力、人によってその価値観は異なる。この世界では強いもののみが上にたち、弱き者は淘汰される。言ってしまえば実力主義である。これはそんな世界の小さな国の少し大きな学園のお話。それではご覧いただこう、


 「――――以上で学園長挨拶を終わります」

 そう、体育館中に鳴り響く。俺はその少しうるさい声を聞き目を覚ました。

 「おい、奏音(かなで)起きろ、お前集会中だぞ」

 後ろからも聞こえてきた声に反射でつい、

 「うっせ、分かってるわ!」

と大きな声で答えてしまった。当然それを先生達が見逃す訳もなく、

 「お前この後指導室な?」

と少し怒気を孕んだ声を放たれ「最悪だ」と1人、悪態をついた。


「で、どうだった?評価Fの問題児君?」

とさっき後ろから声をかけてきたヤツがニヤニヤしながら教室の前で話しかけてくる、そいつはやたらと大人びていてスッとした服装に違和感を感じさせない雰囲気を纏っている。こいつは夜桜(よざくら)うるふ、普段俺に絡んでくる数少ない俺の友人だ、多分。

「あ?最悪だよほんと、あのセンコー絶対潰す」

「お前には無理だよ、なんせお前の評価は学園最底辺F。ほとんど一般人なんだからな」

 とすかさず返答をしてくるうるふ。

 評価、これはこの学園での絶対的カーストを文字通り評価したものだ。全F~Sでまとめられる評価は単純に強さを区別するために作られた。

「分かってるさ、だからもう少しだけ、大人しくしとくさ」

 と言い残しその場を去ろうとした時、

「奏音〜。ご飯食べに行こ? ついでにるふ君も」

と濁りひとつ無い綺麗な翠眼と長い髪を持つ女の子から声をかけられる。彼女は雨音天狐(あまねてんこ)。この学園で評価Sを持つ所謂天才と、そう呼ぶに相応しい人物だ。

「で、評価Sの天才様が最底辺に何の御用ですか? 貴方とご飯を食べたい人なら山ほどいるでしょうに」

「僕は君がいいんだけど? 分かるよね?」

と、その圧に気圧されてしまい、

「はい、、、」

結局行くことになってしまった。


――屋上

「でさ、今日の授業ではね? 僕ともかちゃんでたくさん倒したんだよねぇ」

と自慢げに話しているが、俺はその話をあまり聞いていなかったため

「そりゃあ良かったね。それで、次の話なんだけど、」

と話を逸らそうとするのだが、

「聞いてないでしょ? 怒るよ?」

と頬を膨らませる彼女に

「やめてくれ、お前が怒ると街が消し飛んじまう」

と半ば本気で答えるのだった。



――時を同じく


俺、夜桜うるふは1人、廊下を歩いていた。先程雨音さんにご飯に誘われたのだが、諸事情のため断った。俺は少し急ぎ足でその場、中庭へと歩を進めた。そこには1人の少女がベンチに座っていた。服装から紫を連想させる彼女は何処かさっきの最底辺を思い出させる顔立ちをしている。彼女の名は猫宮もか(ねこみやもか)、さっきの最底辺の妹にあたる人物だ。

 「夜桜君、こっち」

と、そう言われた俺は彼女の元へと進む。

 「今日は何の御用で?」

「僕は用がないと君を呼んじゃいけないのかい?」

 「いいえ、なんでも。好きな時に呼んでください」

少し寂しげな顔を見せられたらそう返すしかない。

 「まぁ、その、用が無いわけじゃなくてだね? 明日の対抗戦についてなんだけど」

 対抗戦、それは学園全体をフィールドとして、ひと組4人でチームを組んで他チームを倒すバトルロイヤル式の行事だ。年に2回行われるこの行事では、唯一自分の評価を上げることができる。もちろん、上位入賞者限定にはなるが。

「で、それがどうかした?」

と問いかけると

「そのチームなんだけど、天狐ちゃん、夜桜君、僕、お兄ちゃんで組んだらダメかな?」

そう、提案してきたのだった。



「ふぁ〜、眠いな」

と天才さんとのありがた〜いご飯を済ませた俺は適当に授業を受けて、帰路につく。

「はぁ、明日の対抗戦どうすっかなぁ」

と1人呟いていた時、ブーっとスマホが振動した。

「俺にメールなんて、一体誰がするんだよ、冷やかしか?」

と思い、端末を開くと

『明日の対抗戦、僕ともかちゃん、うるふ君と一緒に出ない?』

そう天才様からメールが届いていた。

「うーん。気持ちは嬉しいが、足でまといになるから遠慮しとき――」

と送ろうとして次のメールが来た。

『断ったら街吹き飛ばすから』

『ヨロコンデヤラセテイタダキマス』

そう、返信するのだった。



――翌日

『さぁ! 始まりました、対抗戦! 最初にポイントをゲットしたのは?』

と声が鳴り響く。ポイント制で順位付けされる対抗戦が始まった。流石は国の学園。ご丁寧にうるさい実況付きだ。正直、乗り気では無いため動きたくないのだが、やはり敵は目を血走らせてやってくる。そう、動かずとも向こうからやってくるのだ。にしても、

「お前ら強くね? 俺いらないじゃん」

そう、何を隠そう、今俺の仲間になっているのは学園の天才率いるトップ組なのだ。トップ組と聞いて、?となった者もいるだろう。そう、昨日俺をいじってきたうるふはAランク、学園のエリートなのだ。天才様は言わずもがな、もかはその天才に匹敵すると言われるほど強い。ん? 俺か?おいおい辞めてくれよ、最底辺だぞ? 泣きたくなるね! なーんて事考えてると

「おい、お前。なんでお前のような最底辺があの方達と同じチームにいるんだ!」

 と地面にひれ伏しているそいつに俺は、

「さぁな、俺が知りたいくらいだ。ただ、お前らは負けて俺は勝っている、それが結果だ。認めろ」

クソが、と言い残し気を失ったそいつを置いて、

「待ってくれよ。最底辺様は置いてけぼりか?」

と3人の後を追うのだった。



対抗戦が始まり、2時間が経過した。着々と人数が減り、俺たちのチームは少しずつだがポイントを獲得していた。俺は進みながら後ろを着いてくる最底辺、如月奏音(きさらぎかなで)に目を向け、少し昔の事を思い出していた。


白に黒くラインの入った髪、白い瞳と澄んだ紫の瞳を持つそいつとは学園の入学試験の帰りに初めて会った。帰り道、裏路地から出てきたそいつの服には赤黒い血が付着していた。黒い服を着ているためか、あまり見えないが何があったのか気になった俺はそいつが出てきた裏路地へと入っていった。

「なん、だよこれ」

そこには少し洒落た格好をしている集団が全員倒れていた。俺も多少は実力がある方だと思っているがその俺からしてもそいつらは間違いなく弱い訳では無いと断言できた。それほどの雰囲気を倒れていても感じられた。

だが、さっき出てきたあいつは見た感じ無傷だ。つまり、こいつらを傷1つ負うことなく叩きのめしたのだ。俺はそいつに興味が湧いた。入学式の能力検査でそいつは最底辺のレッテルを貼られた。俺だけがそいつが手を抜いてることを知っていた。だからこそ傍で見てみたいと思った。そいつの、本気を。



対抗戦は終盤へと差し掛かる。残った数チームは互いの出方を伺い、ほとんど動かずに隙を探していた。そんな膠着状態をぶち壊したのは、

『緊急事態発生! 侵入者が現れました! 至急逃げてください!』

と静かな空気を遮るアナウンスと共に学園の北側から轟音が鳴り響いた



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