87話・だからと言ってわざと負けるようなことはない。
「頑張ってはいましたが勝負は勝負です、そう簡単に負けるほどやさしくはないですよ」
「これって「でもんすとれーしょん?」ってやつじゃないのか?」
「どんな状況でも一定の実力を出す。
修行の一環です」
「さぁ皆様!! お二人の傑作が完成したとのこと、早速今から審査を行いましょう!!」
司会がそう言うと、いつの間にそんな役職が生まれたのか、裏手の人達が分厚い鎧をかぶせた的を何台も持ってきた。
「ここで売られるのは、日々酷使され使い潰される武器……、なればこそ!! 見た目よりも実用性を優先するべきなのです!!
ここに来ていただいたのは、Bランク冒険者の槍使い!! アルタさんに来ていただきました!!」
終始歓声が響く中、呼ばれたそのアルタが舞台へと近づいていく。
(これ、くじってことは完全ランダムですよね、このためだけに何人集めたんでしょうか……)
そんな阿多の心配は当たっている、実際これのためだけに80人程が招集されている。
唯一の救いはこの分の給料はニアが酒の賭けで帳消しにできる事だろうか……
「アルタさんは槍の扱いでも突きでの攻撃を得意とするという事で、こちら一列の的を用意しました!! 全てヴェルダー氏作の鎧を着せています!!
それでは、アルタさん!! お願いします!!」
司会にそう言われてアルタに手渡されたのはアリア君の槍、アリア君の槍を的へと構え、一度で突き出す……
金属同士の火花が生まれ、鎧を着ているにもかかわらず3つも的に穴を開け、更にもう一つ鎧に刺さっていた……
「かなりいい……」
「おおー!! アルタさんからかなりいいとの評価が出ました!!
次はもう一つ、絢さんの方です!!」
そう言った司会から絢の槍がアルタに手渡されたときには、既に破損した的は取り替えられ、整然と並べられていた。
再び、並んだ的に狙いを定め、その一突きを行う。
「お……おおぉぉ!! 何時突かれたのかわからないほどの無音!! 一瞬で10の的を貫いたー!!」
「それにしても、貴方凄い持ち方しますね……」
「少し伸びるからな」
「片手で遠方に伸ばすなんて、簡単に取られますからやめたほうが良いですよ」
「大丈夫さ!!」
「特にそんな握力で……」




