80話・感動モノって本当に感動しますか?
「ちゃんと消火しろよー」
「もう残ってないですよ」
「いや、まだ炎の気配がある」
「私が出したものですね、寒かったので……」
日も沈み、人の往来もなくなった道を二人があゆ……、歩んでいた。
「下ろしてくれねーか?」
「歩けます?」
「それぁ無理だ……ただ、持ち方ってもんがあるだろ」
ウィルの要求によって消火を行った後、死に体のウィルを持ち帰るために深った方法は魔法によってウィルの上半身を抱えて持ち上げるというもの。
優しさの欠片もないような持ち方によって運ばれていた……
「色々と痛いんだが……」
「治癒をしながら運んであげてるんです、そろそろ痛みもなくなってきたでしょう」
「鬼かお前は……」
絢のことを殴りたいと思ってしまったウィルだったが、治癒が行われたのは生命維持に必要な分だけ、それ以上は全くの手つかずで腕も足も動かすことはかなわなかった……
「そもそも、こうやって運ばなくても、目的に直接転移すればよかったんじゃないか?」
「その目的地に居なかったんですよ、基本あの子たちには自由にさせてますから」
「……?」
「気にしなくていい話です」
絢のよくわからない発言に思考を止めるウィルだったが、その続きを口にするよりも先に絢が口を開く。
「さて、着きましたよ」
10分ほどの道のりを終えてたどり着いたのは冒険者ギルドの建物、電灯はほとんど消され、飲んだくれ共も姿を消していた……
そこに残っていたのはもうかなり飲んでいるだろう先輩さんと、それをなだめながら止めようとしているエキドナだけ……
淀んだ空気を見せる場所に、何の遠慮もなく扉を開ける絢……
昼は騒音で聞こえず、夜は鳴るはずがない……、そんな鳴るはずがない時間に鳴ったベルに視線を向けた先輩さんは驚きに固まり、でも体は走り出した……
ウィルに向かって駆けだした先輩さんはその勢いのままウィルを押し倒し、その顔は涙で濡れていた……
「痛い……そろそろやめてくれ」
と、ウィルがそんなことを言うくらい強い力で抱きしめる先輩さんには、ウィルのギブアップの言葉は聞こえていないようだ……
「野暮なことはするなよ」
先輩さんよりは遅く、その光景を見に来たエキドナが明確に絢に視線を……強い視線を向けて、そんなことを言った……
「お前、本当に野暮なことするなよ」
「だからしてないじゃないですか」
「やりたいって思ってるだろ」
「聞かないといけないことがあるんですよ」
「今じゃなくていいだろ」
「今じゃないとダメなんですよ」




