75話・働いてくれるなら、金一封を与えましょう
「なんで遅れたんですか?」
「イメージが、イメージが浮かばないんだ!!」
「……、ちゃんとやってます?」
「やってるって!!」
「世の中には毎日投稿、半日投稿してる人もいますよ」
「そんな逸般人と一緒にしないでくれ!!」
「アタイに何するつもりだ!!」
面白さで狙って捕まえた少女を球体の中に閉じ込めた絢は、後ろから聞こえてくるその少女の声に何も耳を傾けなかった……
「何処に連れてくつもりだ!! 早く出せぇ!!」
障壁内で響く声も、障壁によって浮かばされたその姿も、周囲の人の目を引きそうなものだが、周囲を歩く人たちは全く気にすることなく通り過ぎていく……
暫く周囲を見渡し、袋小路となる路地を見つけると、その路地の奥で少女を入れた球体を霧散させる……
「ブベッ……!?」
顔から地面に落とされたことで情けない声を上げた少女を前に、何一つ顔色を変えず声をかける少女の姿があった……
「そういえば、挨拶をしていませんでしたね……」
そう言ってからうっすらと笑みを浮かべながら少女を眺める絢に、その目の前の少女はけげんな表情を浮かべる。
「何だよ……」
「いえ、名乗ってくれないのかと……」
「人の名前知りたきゃ自分から言え」
「そうですね、一理はあります」
「一理しかねぇわ!!」
そう言うと絢は少し悩むそぶりを見せるが、直ぐに目の前の少女へと向き直る。
「私は、姫宮 絢と言います、今回は貴方をスカウトしに来ました」
「は……はぁ!?」
「で……、貴方は?」
見たことも効いたこともない初めて会ったばかりの人間を、それも理由も話さずスカウトする目の前の人間に一瞬固まった姿を見ながら、絢は少女に名乗ることを催促する。
「あたいに……、アタイに何させるつもりだ!!」
「別にひどいことはしませんよ、私の下で少し働いてもらうだけです」
「その少しってなんだ!! だいたいこういうのはひどいことをやらされるんだ!!」
どんな未来を創造したのか……、その目は潤み、端には小粒の雫を貯めしかし絢を睨んでいた。
「ふむ……、ところで、お名前は?」
「き、聞いてどうするんだ!!」
「何もしませんよ、ただ聞くだけです……」
暫く何も言わずに黙っていた少女だったが、その時間で落ち着き、状況を把握することが出来たのだろう、かなり小さい声だが「サシャ……」と答えを出した……
「そうですかサシャ……、では改めて、私のお店で店員をやってください」
「は、はぁ!?」
「なんだかまた食費が増える予感が……」
「お前のその能力は何なんだ?」
「いや、ただの予感なんだ、予感で終わるはずなんだ……」




