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74話・逃げるときは、後ろを見ながら逃げましょう

「なんでいないんだ……」


「どっか散歩に行ったぞ」


「散歩だと?」


「ああ、散歩だ」


「すぐ帰ってくると思うか?」


「分からん」

 絢が人込みの中を歩いていると、前から1輪の花を持った一人の少女が走ってきた……


「キャッ!?」


 絢とその少女が衝突するも、少女の方だけが衝撃で少し後ずさる


「大丈夫ですか?」


「あっ……」


 絢が声をかけた少女は目を閉じていて気付いていない様だったが、持っていた花から手が離れていた。


「薬草、それもかなり効果の高い物ですね……病人ですか?」


「え、あ、はい……」


 青ざめながらも返事をする少女に目線を向けながらも、絢は落ちた花を拾う。


「水で洗えば使えはしますが……、綺麗な方がいいでしょう、これが料金です、受け取っておいてください」


 何故絢がそんなことを知っているのかは置いておいて、そう言って金貨1枚を渡した絢は少女にもう一言……


「これ、本物ですか?」


「え、あ、買ったお店は、本物って……」


 少しその質問に少女は明らかに困惑する……


「そのお店はどこですか?」

「ッ!!」


 少女は一気に走り出し、すぐ後ろの路地裏に入ってしまった……


「ああ、行ってしまいましたね……」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(子供だからってミスった、もう少しちゃんとするべきだった……)


 先ほど白い少女にぶつかり、逃げ出した少女は、路地裏を走り続ける。やけに縦に長い建物の間を走りその先の光を除くと、見えたのは先ほどの道路の反対側の道、それでも後ろから誰も追い抜いておらず、それ以外の道なら自分よりも遅くなるはずである……


 なのに、なのにだ……

 その視界の先には白い少女が周囲の人々に何かを聞きまわっている……


 自然と足は後ろに向く……何度も曲がり、時には出口の寸前で戻り、普通なら通らないような道筋をたどって走る……


「ハァ、ハァ……」


 少女がのぞく先に見えるのは隣の地区の名前、そこまで遠くはないが、普通に走るよりも早くたどり着いていた……

 だが、その視線の先に居たのは先ほどぶつかった白い少女、付近の人に話しかけては何かを聞いていた……


「ッ……!?」


 思わず、反対に走り出す……今度はもっと遠くへ行こうと、より長くより複雑な曲がり方、戻り方……そうしてたどり着いたのは都市の反対側……

 汗だくになりながらもなんとかたどり着いたその先には、先ほどと同じように聞き込みをしていた白い少女がいた……


 いつの間にか少女は走り出していた、もっと遠く、追いつけないような場所へ行こうと……


 いた、またいた、いるはずがないのに……そこは帝国の反対側、少女が言える話でもないが、1日でたどり着けるような物ではない……


「な……なんで……」


「もう終わりですか?」


 そんな声が後ろから響いた……

「唯さん最近眠れないんです」


「何があったんですか?」


「最近何か変な夢をみまして……」


「どんな夢ですか?」


「なんか、こう、よくわからない夢で……」


「……疲れてるんですよ」

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