61話・自分よりも強者がいるというのなら……
「んぁ、そういえばあいつはどこにいるんだ?」
「依頼を受けてもらったので、たぶん今はダンジョンですよ」
「なんかまた変なのを拾ってきそうな予感がするな……」
「あ゛ぁ? 何者だお前は……」
ここに居るのは無数の骨の山の上にポツンと一つだけある玉座のような椅子に座る男と、それに相対する一人の少女……
「もう一度聞く、お前は何者だ?」
それを前にして、その少女はただ男を見るだけで答えない、その目には若干の期待が含まれているように見えるが、男がそれを感じ取ることはない……
(気持ちわりぃ……まぁ、いいか、死ねば同じだ)
そうして指先に小さい魔法人を描き、レーザーのような物を放つ。
しっかりと心臓を狙い、当たれば即死……そう、当たれば……
(久しぶりだものな、まぁ、外すこともあるか……)
そう割り切って2度3度と放つがそれらも当たらない、若干その射線は中央に寄ってきているいる気はするが、当たらない……
(なんかおかしくねぇか?)
目の前の少女は動いていない、男も指を動かしていない、それでも自然と左右に射線がぶれる……ぶれてしまう……
最後に男が放った光束が到着するよりも早く少女の前に立ち、一度その拳を突き出す……
「何してるんですか?」
拳は少女の左側を、レーザーは右側を素通りしていく……
「手加減ばかりしていては私は倒せませんよ」
「その言葉は、立場が逆だろ?」
その直後に放たれた男の拳には魔力を観れるものが見れば先ほどの一度目よりもはるかに高い魔力をまとっていることが見てわかる。
肉体の保護分を残しエネルギーへと変えられた膨大な魔力は、少女の後方に竜巻のごとき突風を巻き起こし、更にはそれを何度も繰り返す……
それでも一度も当たらない、当てようと思っても、思わずとも、どちらも当たらない。
6度目、漸く少女の芯をとらえた拳でそれは起こった……
「……は?」
男の拳は、少女の指によって止められていた。
障壁も張ってなければ、男の様に魔力で保護されているようにも見えない。
――ただの指一本が拳を止めた――
そんなわけのわからない事実を脳が処理する間に少女が指を反らす……
それを男が気付くことはない、理解不能な現象に脳の処理が割かれているという事ももちろんあるが、それよりも、その指が認識できる限界を超えた速度で曲げられたことも大きい。
「耐えてくださいね……」
その声を境として「理解できないモノ」として処理をあきらめた時にはもう遅い……
わずかに反った指が元に戻ることによって男の拳にぶつかる……
次の瞬間、男が認識できたのは、右手が自分の後ろにあることと謎の浮遊感……
次の瞬間、地面を眺め、視界は赤く染まっていた……
次の瞬間、目の前にいたはずの少女ははるか遠くに、自分が座っていた骨の山すら小さく見えるほどの遠方で、自分の体が埋まっている感覚がする。
次の瞬間、遠方にいたはずの少女が目の前で指をそらせていた……
「……ッ!?」
何とかその攻撃を避けるも、何度も床に打ち付けられ、転がり、勢いがそがれた男の体のめり込みとは違い、その後方には、横向きに巨大な隕石でも落ちたのかと思えるような巨大なクレータが発生する……
「おかしいですね、さっきは見えてなかったみたいですけど……」
(おかしいのはお前だろ……だが理不尽なわけじゃない。――十分理不尽だがな!!)
目の前の少女は男が攻撃を避けられたことを「おかしい」と思い、男は目の前の少女の強さを「おかしい」と思う。
「何だお前は」
少女がここに入ってきたときに問いかけた質問――いや、今は少し意味が違うか……
それにようやく返答が返る……
「ただの人間ですよ、私は……」
「赤いな」
「どちらかと言えば白くないですか?」
「いや、真っ赤だ」
少し悩む少女に向けてどこからか取り出した拳銃を構え、乱発する。
どの弾も魔法によって破壊力と速度が盛られ、当たればまともな肉も残らないような弾……
――「まともに当たれば」だが――
全ての弾は空中に飛来した「何か」で相殺される
それが空気で作られた銃身から放たれた空気砲だと気づいたのは、拉げた弾丸が、男の後方へと飛来した後だった……
「ッ……!?」
理解よりも早く自然と動いた体はどこからか取り出した刀を片手に目の前の少女へと振り下ろす
男の胸元とその手に持った刃が切断されたのはそれと同時か、少し早いころ
少女が振ったもう一太刀は男の肉体が斬撃を止めるのと引き換えに、その体を大きく弾き飛ばす。
「何というべきか、あなたのその魔法の使い方……正しくは認識でしょうか、残念です……」
その言葉は距離によって届かない……
威力はすさまじい……が、男にとってはそうではない、既に銃弾による穴も、斬撃による傷も治癒を始めている
「あんなふざけたやつに、負けて堪るか……」
「ん……あーちゃんはどこ?」
「おひるー」
「ん……ん!!」
「ひっぱるなぁー」




