54話・炎を触る方法
「あつい……」
「あついー!!」
「我慢しろ」
「我慢できれば、してるだろうが」
「そーだそーだ!!」
火口に降り立った絢は流石に溶岩に使っては怪我どころでは済まないため、障壁を足場として出現させその上を歩く。
火の鳥までたどり着けばとりあえずやることは一つ。
話しかける。
「起きてますか?」
火の鳥にそう問いかけると寝返りのように反対を向いてしまった。
絢も反対側に回り、もう一度話しかける。
「聞こえてますか?」
そうすると、また反対側に寝直す。
そんなことを数度繰り返すと、面倒になったのか、顔を上げて絢に炎の息を吹きかける。
「起きたんですね」
全くの無傷で笑いかける絢だが、それに呆れたのかもう寝がえりすらせずに、絢が話しかけても何の反応もしなくなった。
なにも反応しないことをつまらなく思ったのか、絢は目の前の鳥にペタペタと触り始める。
ペタペタペタペタペタペタペタペタ……と触られ続ければ無視をするのにも限界が来る。
絢が火の鳥を触っていると、今まで羽毛のような感覚があった場所が唐突に絢の手をすり抜けるようになっていた。
今まで通りの感覚で触っていた絢はそのまま炎に捕まれて引き込まれ、反対側へと押し出される。
前転をするように押し出された絢は上下逆さまの状態で火の鳥を見ることになった、逆さになったことで頭の高さが変わり、火の鳥の視線は絢を見下しているように見える。
そのまま何事もないように足元に作り出した障壁に着地しようとすると、後ろから火の鳥の蹴り上げを飛ばしてきた。
絢が考えもしていなかった攻撃だが、自分と蹴りの間に障壁を挟む……
(……!?)
障壁はいつもとは違いその足を防がずに素通りして絢の体へと向かう、手によって受け流そうとすれどもその手すらすり抜け、絢の胴体にクリーンヒットする。
蹴りの威力は高く、そこそこ飛ばされた絢は、反対側に推進力を発生させて柔らかく速度を落とし、障壁に着地するという目的を達成した。
「危ないじゃないですか、もう少しで怪我してましたよ」
、火口の壁面すれすれで着地していた、少し反応が遅れていればそのまま壁にたたきつけられていただろう、そんなことになればどこまで全身で骨折が発生していただろうか……
ひょうひょうとした絢の様子に火の鳥が向けるのは明確な敵意である。
こんな状態の存在を懐柔することなんてできるわけがない……できるわけがない……、はずなのだが……
「……何か欲しいものは有りますか? なんでも用意できますよ」
絢は火の鳥を手に入れようとしていた。
適当ないなし方では諦めないことを理解した日の鳥はめんどくさそうに立ち上がり、絢の方へと向き直る。
立ち上がったことによって見えた前身は、文字通り炎で包まれていた、きっと内臓も炎でできている事だろう。
足やくちばしは黄色、尾は緑、翼は青色、赤い体にオレンジ色のとさかが付き、白い炎の中心にある黒い炎が絢の方を向いていた。
今まで火の鳥から感じなかった温度と言う物がその体から感じとれる、絢は魔法によって軽減させているが、もしその体にただの石を投げ入れようものなら一瞬にして赤く融けてしまうだろう。
そんな姿を見て「もしかして私のこときらいですか?」と問いかけるも、火の鳥は行動でその答えを出してきた。
火の鳥は絢に向けて突進を行う、大きく羽ばたいて行われた突進はその速さだけれ相当な威力を持っていることがうかがえる。
絢は全身に魔力を漲らせ、ひとまずはその攻撃を防ぐことに注力した。したのだが……
「っ……」
再び防御に使った手をすり抜けて絢の胴体に攻撃が通ってしまう、周辺の空気を固め柔らかいクッションにして止めたものの、このままでは攻撃ですらすり抜けてしまうだろう。
「炎ってつかめましたっけ」
等と言うわけのわからない独り言が逃げ回る絢の口から飛び出るほどだ。
絢は悩みに悩み、そのひとりごとに戻ってきた。
「炎、掴んでみたくなりました」
考えたらすぐに実行をするのが絢だ、ひとまず火の鳥の突進によって周囲にばらまかれた羽を掴む、だが掴んでもすぐに掻き消えてしまう。何度試してもつかめるのは一瞬、直ぐに掻き消えて手の中から姿を消す。
正直、炎を掴む何と事は、魔法でもなければできないだろう。
だが、触れる炎を触れない炎に変えることが出来るのなら、触れない炎を触る事も出来るはずだ。そして、絢はその実力を確実に持っている。
「さて、そろそろ……」
何のタイミングを計ったのかは分からないが、絢が手を前へ伸ばす。
その手を握ると、自然と突進してくる火の鳥のくちばしが手の中に納まり、火の鳥は無事捕まる。
捕まえた日の鳥を勢いそのままに、方向を溶岩へと向け、思いっきりダイブさせる。
「大丈夫ですか? 頭は冷めました?」
「痛い……」
絢の言葉に回答が返ってくる。そこでもう一度先ほどの質問をする
「……何か欲しいものは有りますか? なんでも用意できますよ」
「三食オヤツ昼寝付き」
「分かりました」
なにが分かったのか、それとも互いに何もわかっていないのか、お互いの中で何かが結ばれた。
「おやつは何がいいですか?」
「ソフトクリーム、アイス、フルーツミックスクリームソーダ」
「冷たい物ばかりですけど……大丈夫なんですか?」
「だいじょうぶ」




