42話・瞬間移動の代わりに、等価交換をしてみました
「財閥を作る……そんなことができるのか?
下手をすればとても面倒なことに巻き込まれたんじゃ……」
「おい嬢ちゃん、こんな所で何してんだ?」
獣の皮と骨で作られた重装備に身をつつんだ不審者然とした大男が、白髪赤眼の幼げすら感じる容姿を持つ少女に話しかける。
「一緒に来た子たちがはぐれまして……」
「へぇ……どこではぐれたんだ?」
「そこの道から此処に入って、戻ったらいなくなってまして」
「それ迷子嬢ちゃんじゃねぇか?」
こうなった原因は約30分前から始まっている。
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「地上に行きましょう」
扉の奥から出てきた少女に対してその場の全員が同じことを思う。
(((なんか変なこと言いだした……)))
「いったいどうやって地上に行くんだ?
もう一度迷宮の中を通るなんて嫌だぞ」
「わたしもいやー」
「俺もさすがに上るのは嫌だぞ、面倒だし」
「もちろんのことながら私も嫌です、なので一瞬で行きましょう」
その言葉を聞きながら、聞いてなお、聞かされたからこそ、彼らのその頭脳は(は?)と言う疑問を浮かびあげた。
「あ……一つ言って置くと、フェンリルとアイリス、貴方達はお留守番です」
「何故だ?」
「分かりましたマスター」
てっきり連れまわされると思っていたフェンリルと簡単にそれを了承するアイリス、二つの声がかぶさって聞こえるが互いにその本心は真逆と言っていいほど本心が隠れていた。
「後で嫌と言うほど働いてもらいますので、今のうちの存分に休んでおいてください」
「まだ働かないといけないのか……」
「何言ってるんですか、生きている以上仕事は無限に生まれるんですよ」
「何だその地獄は」
「地獄じゃないです、飽きが来ないんですよ、天国に決まってるじゃないですか」
「主とは永遠に分かり合えんことが今分かった……、さっさと行って帰ってこい」
「はい」
たった一言と一瞬の笑顔、その笑顔は唯や都月に向けるような笑顔で、その声は安心感と信頼を与える。
そんなことはさておき、やっとエキドナも出てきたことで本題の話が進む。
「さて、エキドナも来ましたし、皆さんでできるだけ集まってください」
何かを考えながら歩くエキドナの進行方向に自分の体を置き、ニアとルビーを呼び寄せる。
エキドナが絢達に合流すると、そのまま歩き続けようとしているエキドナの服の襟をつかんで引き留めすぐに魔法が発動させる。
「行ってきますね」
そう言って魔法が発動した後、その場には猫だけが残されていた……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
草原から路地裏に一瞬で視界が入れ替わり、見たことのない転移によってニアは多少困惑していたが、それよりも現状が分かっていないものがいた。
「ここは何処だ?」
それは今までずっと何かを考えこみ前へ進もうとしていたために、絢に引っ張られただけで尻もちをついているエキドナである。
「帝国の首都……、いわゆる帝都です」
「帝都……いつの間に?」
「今です」
「いま……今!?」
「はい、今です
早速何ですが、私はやることがあるので先に行っててください」
「え……何をするつもりだ?」
「なんでそんな何かやらかす前提みたいな視線を向けるんですか?
大丈夫ですよ、直ぐに合流します、行ってください」
たったそれだけを告げて絢がその姿を消してしまいエキドナたちだけで向かうしかなくなってしまう、そこにはネズミが一匹いたのだが、誰も気にしていなかった……
「行くか……」
「そうだな……」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「みゃー」
「やっぱり何を言ってるかはわかりませんね……」
エキドナたちの目の前からいなくなった絢は、また別の路地裏で猫と戯れていた……
その猫、王女をタルルク王国王城から連れ出したニアその猫である。
絢がヒョイット持ち上げると、目に見えて嫌がりその手から外れようと体を大きく揺らし、絢に爪を立てようとする。
それを軽くいなしながらニアに話しかける。
「やっぱり言ってることはわかりませんね」
「シャー!!」
「分かってます、まだあの子と会うには準備も足りませんし、まだまだ忙しいのでもう少し守ってあげてください」
「ウゥ~」
「貴方が私をきらいなのは分かってますよ……あの子も心配しています、行ってあげてください」
ニアは絢が静かにその体をおろすと、直ぐに絢とは反対側に走り出し、その向こうにいた一人の少女の頭に乗ってしまう。
その様子を見守って絢もその身をひるがえす。
(さて私もそろそろ行きましょうか、丁度いい案内人も来ましたし)
後ろからカツカツと足音が聞こえてくる。
「おい嬢ちゃん、こんな所で何してんだ?」
「休む……とはどうすればいいのですか?」
「寝ろ」
「私に睡眠は必要ありません」
「飯は?」
「必要ありません」
「運動は……」
「必要ありません」
「だろうな……」




