41話・お話をまとめるには要点をまとめるべきなのです
「あいつッッ」
「何かあったのか?」
「話が長い、難しい」
「まぁ、ガンバレ」
「お前も適当だなおい」
「ここまではわかったか?」
「はい、大丈夫です」
「……本当か?」
「本当ですよ」
エキドナが解説を始めてからここまでで15分、一切の振り返りなく続けられた説明に数秒の内容ならともなく、ここまで長い内容を1度で分かったと言われてもそれが本当か疑惑の目を向けるのは当たり前である。
「ちょっと確認してもいいか?」
「はい、大丈夫です」
「通貨について……」
「銅貨・銀貨・金貨・白金貨・聖金貨・王貨・神皇貨の7つに、3つの大きさで分けた計21種類、銀貨2枚で人一人が1週間生きるのに問題ない金額ですよね」
「国は……」
「この大陸には実力主義の帝国、信仰心の聖国、謎に実力のある王国、それらを中心として後10か国ほど、他の大陸は基本的に魔王とやらが支配してると」
「まあ……、謎だとか「魔王とやら」だとか気にはなるが、まあ、大丈夫……な筈だ」
絢の言葉があやふやなことに不安を覚えつつも、「大丈夫だ」と結論付け、深く踏み入ることを止める。
そして、話の内容としては此処からが本題だ。
ちなみにだが、ニアは開始5分あたりから飽きて、寝ているルビーを起こして遊んでいた……
「で……だ、ここからがお前の知りたがっていることだ……」
「……と、言うと?」
「我が知っている簡単な大金の稼ぎ方だ……行って置くが詐欺ではないからな」
「簡単に大金を稼げる……どこかでそんな詐欺商材を目にした気がします」
「詐欺ではないと言っておるだろ!!
それに、貴様なら簡単という事だ、一般人にまでその枠を広げるな」
「なるほど……、で、その方法は?」
「冒険・探索・討伐の3大ギルドに入ることだ」
「……?」
「冒険と探索に入って活動できる地域を増やし、討伐で希少で凶悪な魔物を討伐すればいい」
「いや、なんとなくはわかるんですが……なんでそれ分かれてるんです?」
今まで絢は様々な創作を読んできたし遊んできた、その10割は唯によるおすすめだったが、それでも大量の「ファンタジー」と呼ばれる書物やゲームがあの屋敷に置いてある。
その知識の中で、「冒険をして魔物を討伐する」と言う活動は、名前を変え、形を変えながらも分けられていることはなかった。
そしていざ聞かれると当のエキドナもその答えをすぐには出せず、頭の何処かを探し回っている。
「あぁー、確か、ギルドに登録しているメンバーの安全を守るため……とかだったはずだ」
「安全を守るために分ける……?」
「長時間補給なしで生きる技術、ダンジョン内で生き抜く技術、高い実力を持つ魔物を倒す技術、これら全てが全く別の技術や準備が必要になるから……だったはずだ」
「それ一緒でよくないですか?
絶対面倒ですよね」
「我もそう思う……、建物こそ同じなんだが、それぞれの依頼ごとに別の受付で済まさないといけないのがとても面倒だ……
だが、基準を3つに分けてからメンバーの死亡率は1%以下になったそうだ」
「なるほど……機能はしてるんですね」
「言葉に棘があるな……」
「まあ、とても面倒そうなので……」
と言うところで、絢の雰囲気がいつもの物に戻る。
「知っている事ばかりでしたね」
「……もしかして、ここまでのこと全部知ってたのか?」
唐突のカミングアウトに驚き、胸の鼓動も謎の緊張もその全てが吹き飛び、そこには疑問だけが残った。
「事実確認と、ちょっと実験がしたかったんですよ」
「……じ、実験?」
「緊張はほぐれてますね、心臓の音は静まりました?」
「ま……まさか……」
「恋心を抱かせる……と言うほど高尚なものではありません、多少心臓の鼓動を早くし体温を上げる程度です」
「毒か!?」
「なんでそうなるんですか、魔法ですよ……」
「魔法? 貴様の魔法はそんなしょうも無い物なのか?」
互いに互いの言動に困惑している中で、「しょうも無いとは言ってくれますね……」と言う絢の返しが響く。
魔法は本来、その存在の中にある真実を現実に持ってくる行為であるのだが、今まで絢達がやっていたものも魔法と呼んでいる、しかし、実際はその魔法を万人が扱える技術に落とし込んだ全く別の技術である。
魔法を発動できるほどの真実を得るには生物では脳のリソースが大きく不足しているため、基本は一人一つが普通である。
「今まであまり使わなかったので、少し試しただけですよ」
「わざわざ我で試さなくてもよかっただろう……」
「都合がよかったので……一つ、貴女には伝えておこうと思います」
「……何をだ? 今なら何を言われても驚かん気がしている、何でも言え」
「当面の目標なんですが、私はこの世界に今無い物を作ろうと思います」
「この世界に無い物?」
「国を跨ぎ、世界中に支店と数多の事業を持つ財閥を作ろうと思います」
「は……?」
驚かないと豪語したエキドナの口から飛び出した疑問の声は、明らかに驚きの感情を含んでいた。
「何故そんなものを作ろうとする」
「話せば長くなるのですが……、簡単に言うと世界を超えたいんです」
もちろん、その内容と財閥を作ることが繋がるわけがなく、「どういうことだ?」と言う質問が出る。
「私はこの世界の人間ではなくてですね、帰るための機械を作るための材料と人手が足りないんですよね……」
「なるほど……なるほど?」
(いや、こいつ人間だろ、容姿を見ればこの世界に来たのも最近のはずだろ)
その困惑は絢が異世界人という事ではない、エキドナも人間社会に合わせ偽名を2桁抱えるレベルには長生きをしている、その中で異世界人を見たことは数度ある。それでも絢は……その強さは異質だった。
そしてその心中を……
「『いや、こいつ人間だろ、容姿を見ればこの世界に来たのも最近のはずだろ』とでも思っている事でしょう」
と一言一句違わずに詠唱して見せる。
「エスパーか貴様は」
「これはただの人間観察の成果です。
で、その最終目標に必要な100を稼ぐために必要な1を稼ぎたいんです」
「何故をそれを我に話す?」
エキドナのまっとうな質問、その答えを言うよりも先に握った手を頭程まで上げ、親指から順に伸ばすにつれて、途中で拾っていったフェンリル達の名前を上げていく。
「あの子たちは興味が無いか、言う意味がないかのどちらかに入るんですよね、もちろん、貴女のタイミングが良かったというのもありますし、あの子たちに伝えた時のモデルを観たかったというのもあります」
「これは……口を滑らせていいことなのか?」
「あの子たちくらいにならいいですよ……ただ外にはダメです、いきなりは反発が大きいでしょうから」
もし、自分が口を滑らせてしまったら……そんなことを思いながら「分かった」と、冷や汗をかきながら返事をする。
「さあ、善は急げです、今から実行しますよ」
そう言って、絢は扉の向こうへと歩いていく……
「なんだか、無茶苦茶に巻き込まれてないか?」
そんな声が、誰もいないホールに響き渡った……
「それにしても、冒険・探索・討伐と組織を3つに分けて使いこなせるんですかね……」
「まぁ、頑張ってもらうしかないな」
「本当に頑張ってくださいね、これだけ大それたことを言って、今後この設定は関係ないですとかダメですよ」
「頑張れ……ガンバレ……」




