39話・その気になればと言いましたが、やる気はないです
「し……死ぬかと思った」
「大丈夫だ、足も頭もくっついてる」
「なんかお前の言葉説得力があるな……」
もう入り口はふさがってしまったが、空いた穴の中は今までと同じような階段ではなく長い通路の様になっていた。
その奥には若干光っている扉が寂しく佇んでいた……
「あんなものよりも……」
明らかなゴールを目前にしてそのゴールに興味を持っている人は誰もいない、それよりもあることが意識を引いていた。
「「「ほんっとうに何をやってくれてるんだ!!」」」
「一点を崩すつもりが一気に崩れてきたんです、あれでもかなり細かくした方なんですよ」
全員が絢に意見を言う一方で絢の方にも言い分があるようだ。
「そもそもの話、ニアがちゃんと管理していればこうはなってなかったんですよ」
「グッ……」
「「いや、だが!!」」
「貴方達の階層も照明が意味をなさなかったり、竜が集めた金でふさがれていたり、かなり無茶がありましたよ」
「「グハッッ」」
彼等にも心当たりがあるのか、言葉と言う名の矢印が突き刺さり大きな衝撃を与えた……
「ん……なにやってるの?」
やっと寝飽きたのか、地震のような振動を受け天井から巨石が落下しても起きなかったルビーが、話し声によってやっと目を覚ました。
「「「いや、何でもない……」」」
「ほんとう?」
「本当ですよ……、さあ、先に行きましょう」
毒気の無い寝起きのルビーの言葉が場を治め、フェンリルやエキドナは「ルビーが言っているのだから仕方ないか」と怒りをおさめていた。
それを見て絢は心の中でこっそりと(孫みたいですね)と思ったが、それが口から出ることはなかった……
絢達はすぐそこに見える扉の前にまで歩いて行って、改めて立ち止まる。
「これ、扉開けたら罠が発動するとかないですよね?」
「あ~、多分ない……はずだ」
「……そうですか」
ニアの返事はこれ以上ないほど不安なものだが、絢はそれを信じたのかゆっくりと扉を開け……指を前に構える。
「さすがにこれ以上ないことを祈ります」
――「ガキン」と音を立てて絢の指……正確には指の先に展開した障壁とぶつかったのは、今までよりも威力こそ低い物の、明らかに入ろうとした者を刈り取ろうとする罠だった。
その罠の先の小部屋には若干はっきりしていないような気もするものの、一人の人間が立っていた……
その姿は、あの面倒な王様の姿に似ているような気がする。
(安心しろ、ただの挨拶だ、これ以上罠なんかは仕掛けてない)
「そうですか……」
(一応言っとくがこれは俺の魔法を使った録画だ、お前ならこの意味は分かるだろう……んでだ、いくつかパターン分けして録画したわけだが、これが流れるってことは、お前は『全員を殺さず仲間にする』という一番面倒なルートを通ってきたってことだ)
そんな説明口調の話をぶった切って絢が口を出す。
「ところで、貴方の名前は?」
(ああ? ああ、まだ名乗ってなかったな俺の名前はフィリア・タルルク・グドムってんだが……多分俺の名前はほとんど残っちゃいねぇだろ?)
「そうですね、資料にも童話にも残ってませんよ」
(まぁそこは良いんだ、うちの子孫がすまんことをしたな)
「……何のことですか?」
(いやいや、追放はかなり重い罪なはずなんだが?)
何故か録音と会話がつながっていることを誰も触れない事は置いておいて、追放されて気にしないというのは余りにも気前のいい話だろう。
「まあ、アレは私が仕組んだものでもあるのであまり気にしたことはないですね」
(まじかお前……まあいい、折れが言いたいことは一つだけだ、そいつらを大切にしてやってくれ)
「……わかりました」
(その間が気になるがまあいいだろう)
「そういえばなんですが、貴方の魔法って何ですか?」
そろそろ終わろうと思っていたところに唐突に差し込まれる驚愕の質問に彼は口をあんぐりと空けるしかなかった……
(わかってなかったのか……)
「はい、ついでにこの迷宮の名前の由来も知りません」
(まじかよお前、なんでここに来ようと思ったんだ?)
「なんとなく面白そうだったので」
(そんな理由なのか……まあいい、俺の魔法は『未来を見ることができる魔法』だ、その場所に行かなきゃ見れねぇっていう制限はあるが、それ以外は制限もへったくれもねぇ、たぶんお前なら使えるようになるだろ)
「多分無理ですね、私はそれを使いたいと思わないので」
(何だかもったい無いが……まあいい、ああ、あと、あんまり気にしなくてもいいんだが、この迷宮の名前は俺の怒りから来ててな……、ほんと気にしなくていいんだ、できれば一度あのバカを地獄に叩き落してくれると嬉しい)
「その気になればやっておきますね」
(ああ、頼む……、これで最後なんだが、此処と、俺が他に作った迷宮もお前にやる――攻略できれば――だがな、まあ、頑張れ)
グドムの姿がプツリと途切れ、その後方の壁が崩れて、眩しい光が漏れだしてくる。
「あいつ、こんなもん作ってやがったのか……」
「知らなかったんですか?」
「あいつは何かと秘密主義なんだ、此処だって探せば核があるだろ」
「核?」
「核は魔物が持つ……あ~、かなり広そうだし探せば図鑑位あるだろ」
ここから、やっと目的が進み始めるのだが、
「お前我と口調が被ってるから使いにくいとお達しだ」
「……なんだ?」
「お前口調変えろ」
「嫌だ、お前が変えろ」




