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38話・楽しいのならなんだっていいんです

「それにしても楽しかったですね」


「全身丸焼きにされたが……楽しくはあったな」


「我はやりたくはないな……主はこれを超えるんだろう?」


「できるか不安になってきたところだ」


「私としてはマスターの戦闘からは多量のデータが取得できました」


「眩しいからやめてー」

「いてぇ、クッソいてぇ」


「さすがに長すぎです少しは我慢してください」


「お前絶対怪我したことねぇだろ」


「貴女もそこまでの怪我はしたことないでしょう」


「いや、2回目だよ……」


 炭と見分けがつかないほど黒くなっていた体色も既に元に近い色にまで戻り、体の大部分は治っているように見えるニアだが、どうやらまだまだ治っていないようでずっとその痛みを訴えているが、残念ながら「痛みの辛さ」と言う物が分からない絢は何の対処もしてくれない。

 その状況を後ろから見ているフェンリルとエキドナは、その光景に同情の視線を向けながらも、回復魔法も使えず、かと言え絢に言うことを聞かせられるほどの信用も実力もない彼らはただ見る事しかできなかった……


 と、それなりに訳の分からない状況が広がっているわけだが、絢達が今していることは次の階層……それかゴールへの道をぐちゃぐちゃになった城の中から見つけ出すことである。


「階段も無ければ扉もない……どうすればいいんですかね?」


「知らん、どうせさっきの戦いで埋まったか潰れたんじゃないか?」


「それ凄い不親切じゃないですか?」


「建物の中であんな大技を連発するとはだれも思っとらんだろ」


「私は戦いますよ」

「俺はやる」


「「えぇぇ……」」


 絢とニア、フェンリルとエキドナの意識の差が露見したところで、現状が進展するわけもなく、宇賀か無い者が2人いる状態で探しているとアイリスが声を上げる。


「あちらに、異様に温度が低い部分が」


 そう言ってアイリスが指さす方を全員が見るが、あるのはただの壁……絢達が入ってきた方向とは反対側で、城の中でもなければ橋も繋がってない上に陸もない。


「……どこにありますか?」


「あちら側の壁の所に」


 その一言で希望が無くなり、空中を歩くか……橋を作って維持するか……、どう見てもかなり面倒な選択を強いられることになった。


「仕方ないですね、橋を作りましょう」


「魔力残ってるのか?」


「まだまだ有り余ってますよ、もう4、5回やってみたいくらいです」


 その言葉通り、いとも簡単に障壁で橋を作ってしまう。


「空を飛ぶよりはまだまだ楽です」


 この時点で価値観と言う点において、絢の味方が一人もいなくなったのは言うまでもないだろう。


「――それにしても、どう見ても壁なんですよね」


 そうなのである、どこからどう見ても岩でできた壁、特に切れ目があるわけでもなければ色が変わっている場所もない。


「ニア、何か思い出すことはないですか?」


「俺も知らん、かなり長いこといたからな、細かいところは大体忘れてるさ」


「頼りにはなりませんね」


 たった数年でも年当たり前に差違は抜け落ちているものだが、絢はそんなことはない、他人を理解しようとしながら知ろうとしないものの性だろうか、いきなりその口から飛び出たのはただの毒舌だった……


「……、おい、こいつ結構ひどくないか?」


「今に始まったことじゃないだろう……」


「聞こえてますよ……、まあいいです、取り敢えず壊してみましょう」


「……何をだ?」


「……壁を」


 そのまま絢が壁に触れると「パキッッ」と言う音がし始める、徐々に大きくなる音は、大きな洞窟全体から鳴り響き内側から罅も広がってくる……


「オイオイ……このまま生き埋めにされたりしねぇだろうな」


「こういう洞窟の一部を壊すのって面倒なんです、もしかしたら生き埋めになるかもしれませんね……まあ、大丈夫ですよ」


 絢の大丈夫と言う言葉と同時である、一団の真横に巨大な岩が轟音を鳴らしながら落下し、湖と衝突して天井に滝を落としたのは……


「全然大丈夫じゃねぇじゃねぇか!!」


 そんな言葉を聞き流しながら続きを進めていくと、小さく穴のようなものが見え、その部分を中心に壁を崩していく、人の大きさにまで開けたところでアイリスやエキドナを通し、さらに広く開けてフェンリルとその背に乗せたルビー、ニアを通したころには穴の反対側は岩で埋まっていた。


「ホンッとギリギリじゃねぇか!!」


 文字通りのギリギリ、あと数秒遅ければ崩れた瓦礫に埋もれていただろう状況で絢が放った言葉は……


「楽しかったですね」


「「「何処がだ!!」」」

「楽しかったですね」


「お前、感性がおかしいぞ」


「生物があれを面白いと思うことは絶対にない、絶対にだ!!」


「私は思いましたよ」


「主は生物ではないのだろうな……」

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