36話・最強の死神と超えられない壁
「いまのみえたか?」
「見て無ーい」
「ちゃんと見ろ!!」
「良いんだもーん、私マスコットだもーん」
「いつそうなった!!」
二人の言葉の直後から始まる剣戟……いや、剣戟と言っていいのだろうか、フードを被った少女が持っている物はその身長の2倍ほどはある大鎌、絢が持っているのは塵を固めて刀の形をしているだけのものだ、誰も刀剣など持っていない。それでも互いの武器が持つ切断能力は、素直に当たれば互いの体を切り裂くだけの威力を持っている。
「ほらほら、さっさと本気出したらどうなんだ?」
「本気はずっと出してますよ」
「嘘つけ!!」
二人の斬撃がぶつかって大気を揺らす、武器がぶつかれば共振からか城が揺れる、踏み込みは足を付けた場所に罅を入れ、二人が避けた斬撃は穴をあける。
「私とそれなりに切り合える人なんて初めてです」
「それなり? 何言ってんだ、こっちが上だぁ!!」
上から振り落とされた鎌をその手の刀のような棒で受けるも、簡単に地面へと投げられてしまう……。
「何を言ってるんですか?」
まるで野球ボールのような速度で投げられたにもかかわらず埃一つ立てずに地面に降り立ったかと思えば、その場から煙のように立ち消える。
「……は?」
「だから言ってるじゃないですか……『それなり』だと」
いつの間にかフードの少女の後ろに居た絢はその手に持つ刀のような棒を一閃、一瞬の差で差し込まれた鎌の柄ごと押し込み、先ほど自分が投げられたように投げ返す。
同じ速度だが先ほどとは違って地面をえぐりながら進んでいく。
「同じだというのならちゃんと着地位したらどうです?」
「ダメージ受けて無かったらいいんだよッ!!」
再び音もなく着地し音なく前方に跳躍する絢に対し、地面に罅を入れて土煙を立てながら突進する。
「なら少し力を入れましょう」
一瞬黒い靄のようなものが絢の周りを漂ったかと思うと、伝わる重さが大きく増える。
「は!?」
唐突に増えた力は均衡状態を崩し、絢に味方をする。
「オイオイオイ……」
若干絢の刀のような棒が少女の持つ鎌の柄に食い込み始めそれを見た少女は自ら勢いよく後方にステップを踏む。
「これ壊すとか、それ一体どんな武器なんだ?」
「見ていたでしょう、ただ塵を固めただけですよ」
「塵を固めただけでこれを壊せて堪るか!! ……いや、結合力強化と斬性増加、結界の魔法か?」
「正解です、案外簡単にばれましたね」
「だからと言って納得できるか!!」
勝手に納得して勝手に怒り出す少女を横に、絢はさらに攻めを続ける。その威力は先ほどとは比べるまでもなく、明らかに絢が優勢に立ち始める。
「ほらほら、ちゃんとしないと終わりますよ」
二人の衝突は、対等な命の取り合いの雰囲気から次第に絢の遊びへと変わっていく。
「分かった……、ちゃんとしてやるよ」
突然そんなことを言い出した少女の雰囲気が変わり、絢の攻撃を大鎌の刃だけで簡単に防ぎ始める。そのまま数度の危うい軌道で刃が絢の周りを通る。
さすがの絢も一瞬後ろに下がりそれを見逃すほど少女も甘くはない先ほどの絢の様にだが今度は収まらない靄が体から上がる。
それとほぼ同時のことである、少女の体がまるで数百トンの未知の質量の物質になったかのような重量で地面をへこまる。
その体から、ひび割れた地面から魔力がその密度によって勝手に変質し雷や炎が溢れ出す。
「重くなって、魔力を暴走させて……、いったい何をしてくれるんですか?」
「安心しろ、単純な力技だ……魔法も使うがな!!」
振り上げた大鎌から斬撃が飛び、その斬撃から無差別に電撃が発される。さらに同じ軌道で振り下ろせば炎をまとった斬撃が絢に向かって射出される。
「これだけですか?」
ただただ力押し、膨大な魔力を絡めて放った斬撃もたった一閃で砕かれる。
「目くらましにもなりゃしねぇ」
今度は斬撃ではなく、大鎌が直接飛んでくる。
「ネタ、尽きました?」
自分を目標として飛んでくる大鎌を砂に変えながらそんなことを言い出す。
「制限があんだよ、場所の制限が……、生き埋めにはなりたくねぇ」
「じゃあ本気で来てください」
「聞いてたか?」
「はい、聞いてましたよ……、大丈夫です好きに攻撃してください」
「相変わらず何言ってんだか……、これを受けられれば俺はもうダメージを与えられねぇ、どうする?」
「それも楽しみの一つでしょう」
少女が「フッ……」と笑うとその周囲に3本の槍が作られる。
「耐えるよな?」
「もちろんです」
にっこりとした絢の笑顔に向けて2本、片方は深海の様な黒さを持つ水の槍もう片方はいつぞやの絢の穂脳と同じ光すら燃やす槍、その二槍が前に駆けていく。
二つの槍は絢の顔面……の少し手前でぶつかり、互いの温度を打ち消しながらその体積を膨らませていく。
高温になった水が蒸発して気化し、その温度と衝撃を絢の体にしっかりと伝える……だがここでは終わらない、残ったもう一本の槍は炎の槍である。
少女が指を鳴らすと空気中に充満していた水蒸気が火薬に入れ替わる。
「あ……」
絢の口から洩れた言葉の直後、火薬の端から着火される……
一瞬で全体に広がった炎は部屋はもちろんひびでつながった部屋をも埋め、その火力を炎の中に余さず伝える。
「……やったか?」
自らの攻撃でありながら、軽いやけどを負った少女は、いかにもなフラグを立て状況を確認する。
「フフフ……結構楽しかったですよ」
炎が一瞬にして搔き消え、その中から無傷の絢が姿を現す。
「ははは……俺の負けだな」
「まあ、それはそうなんでしょうね……」
何か含みを持たせた言葉が絢の口から洩れる。
「なんかあるのか?」
「一度、私の攻撃を耐えてみませんか?」
「はぁ? 何言って……」
「いえ、やっぱり耐えてください」
少女の言葉を異に帰さず、絢が右手を上げる。
「さあ、頑張って耐えてくださいね」
その手荷物のは先ほどの刀のような棒ではなく、巨大な火の玉、その温度は太陽に近いような気がする。
「は、はは……オイ、オイオイオイ!?」
いつの間にかその手には大鎌が握られていた。数度振り回し、最も弧が大きくなる構えを取り、絢の動きを待つ。
「ふざけるなぁァァ!!」
「ふざけてなんていませんよ」
絢の言葉を境にしてその右手が前へと傾いていき、火の弾も少女へと傾いていく。
タイミングを合わせその大鎌を振りぬいた少女は、炎に自分の刃を当てる。
「ウオォォォ!!」
火の玉によって生まれた重量が、少女ごと地面を押し、先程重量が増えた時よりもはるかに広い日々を作り出す。
「ウリャァァァ!!」
前例をとして何とか振り抜き、火の玉を切断した少女。だがその後の火の玉その後の動きに気づかなかった。
火の玉はまばゆい光を放って、巨大な爆発を引き起こした……。
「斬撃を割るってなんだ?」
「さあ……なんなんでしょうね……」
「そもそも斬撃って割れるものなのか?」
「知りません」
「主が知らなかったら誰が知ってるんだ!!」
「そんなこと言われても知りませんよ……」




