32話・そろそろ不便になってきました
「激しいというかなんというか……そう言えばだが、筋肉痛は良いのか?」
「大丈夫ですよ、肉離れや腱が切れない限りそうそう面倒な事にはなりませんから」
「ん? 何かあるのか?」
「魔法を使ってもしっかりと固定して直さないと変な形になるので面倒なんです」
「そ……そうか(少しは鍛えればいいんじゃないのか?)」
「マスター登録を開始しますか?」
「やります、方法は?」
「登録方法の第一段階として音声、虹彩、指紋、遺伝子情報、魔力波形の登録を行います。
第二段階は……」
明らかに絢の電撃によってその記録をどこかに落としてしまっただろうその少女と、その少女が言っている事をそのまま実行している絢のところに近づいたフェンリル達はその姿を見てそのままその気持ちを吐露する。
「何をしてるんだ?」
「雇用契約のようなものです……、恐らく」
「いや、良くわかっていない物をやっているのか?」
「まあそうですね」
「いつか大変な目にあうぞ……」
「それもそれでいいですね」
そんな会話をしながらも淡々と登録作業を済ませていく、実行項目は多めだったがそれでもかなり早く終わった部類だろう。
「登録ありがとうございます、マスター姫宮これからよろしくお願いします」
「よろしくお願いします……、他に設定項目はありませんか?」
もはや止まらないと理解したフェンリル達がその頭に浮かんだ言葉は「これいつ終わるんだ?」と言ういつまで経っても終わらない事に飽きが浮かんでいた……。
そんな言葉が更に6度ほど頭に受かび、あまりもの詰まらなさでルビーが欠伸をしてフェンリルの背で寝始めたころ、絢のイヤリング……と言ってもその耳にはついておらず、ルビーが持っているのだが、そこから声が響く。
「ん……唯ちゃん?」
『ルビーちゃん!!』
相変わらずイヤリングの何処からその音量が出てきているのか、元気の良い声が聞こえてくる。
元気の良い挨拶をした唯は短い間でありながらもいつも通りと言える質問をする。
『絢様はどうしてる?』
「なんかね、トウロク? とかセッテイ? とかしてる」
『……??? よくわかりませんが元気そうで良かったです……』
いつも通りならこのまま通信を終わらせる流れ……
「ちょっと待って!!」
そのまま終わらせそうになるところで、前に何か唯を必要としたことがあったことを思い出し、引き止める。
『? 何かありました?』
「ん~と、え~っと、何だっけ?」
「今回で名前がついておらん者が2人になってな、アレは頼りにならんし、出来れば名づけをしてほしい」
『名づけと言いますが……元の名前はないんですか?』
「ああ……それがな、負けたからと自分の名前を捨てたやつと、あれの攻撃で名前が消えたやつの二人でな」
『絢様は何をしてるんですか……』
「知らん、あれに聞け」
いつの間に仲良くなったのか唯と話し合う三人に龍の少女は話について行けずに若干困惑していた。
『まあいいです、どんな人がいるんですか?』
「龍と機械の女子が一人ずつだな」
『一体どんな人選なんですか……』
「我に聞くな」
ここを作った物を知っているのかフェンリルはあきれたような言い方をする
『まあ、そうですよね……うん、そうですね、竜の方はエキドナ、機械の子はアイリスというのはどうですか?』
「聞こえたな!!」
「はい、唯ありがとうございます、それでは、今日からあなたの名前はアイリスでお願いします」
「承知いたしましたマスター、以上で設定を終了してよろしいでしょうか?」
やっと全ての登録が終わったのか、アイリスが終了の承認を求め、絢もそれに同意する。
「大丈夫です、さてそろそろ次に行きましょう」
そう言うと、立ち上がって、次の階層へ向かう階段へと向かっていく。
「ん? 乗らんのか?」
「……アイリスが乗ればあなたの背中折れますよ」
そんなことを言われ、若干顔を青ざめるフェンリルを放置して絢も話を進める。
「ルビー、イヤリングを貸してください」
「ん!! 分かった!!」
そう言って放り投げられたイヤリングを受け取る。
「久しぶりに少しお話ししましょう」
「良いんですか?」
「たまにですけどね」
人数が増えたこともあるのだろう、その階層を降りている間いつもよりも場の空気は明るかったのだという。
「背が折れるとはどういうことだ?」
「この子、アイリスの重量は大体30t程です……私達が立つ程度でいたいと言っているあなたの体は耐えれますか?」
「……無理だな」
「鍛えます?」
「……やめておく」




