29話・極度まで進歩した文明は滅びる物なのでしょうか
「体術だよな」
「体術ですよ」
「鉄を曲げてたよな」
「そうですね」
「体術だよな」
「そうですよ」
「……もう終わりですか?」
遠方から攻撃しながら敵の攻撃を跳ね返す、ほとんどの人が「ウザイ」と感じるだろう戦法を取る個体を壊すと、それ以上兵器が出てくることは無かった。
「終わりなんですね……」
どこかつまらなそうにそう言った絢は、フェンリル達を隔離していた障壁を消し去り、若干茫然としていた自分のところまで引き寄せる。
「……!! 人を吹き飛ばしたクセに自分の都合で引き寄せるな!!」
「……、人なんですか?」
「そこじゃないだろ!!」
自分に向けられた言葉を無視してフェンリルの背に上り、進む方向を指示する。
「そろそろ自分で歩け……」
「短時間で激しい運動したせいで筋肉痛なんです、少し休ませてください」
「ならもう少し痛そうにしろ」
「痛いです」
「どこが痛そうなんだ!!」
そんな事を言うフェンリルだが、「痛みがある」と言う主張を受けて若干優しく歩き始める。
しっかりと配慮をするフェンリルに対して、魔法を使って本を読む絢は普段通りの抑揚のない声で
「次の回層へはどのくらいで着きそうですか?」
などと言い出す。
それに対して未だに名前のついてない少女が答えを言う。
「階層主もいるだろうし、それを倒したらすぐじゃないか?」
「階層主? ……あれ? あなたの名前なんでしたっけ?」
「階層主は……そうだな私やこの犬、宝石のように階層を取りまとめてる奴だ……ん?」
「犬呼びはやめてくれんか?」
「宝石呼びもやめてほしーの、私にはルビーっていう立派な名前があるの!!」
フェンリルとルビーが少女の呼び方を非難している間に、絢はその背から飛び降りて自分の足で歩きだす。
「ん、もういいのか?」
「はい、歩きます」
急な心変わりに驚いた……なんてことは無く、3人には今の会話の内容から一つの心当たりを思い浮かべ、何処か納得したような表情を浮かべていた。
入ってきた方向と真反対、道なりに進んでいくと、ガトリングガンを取り付け明らかな「監視カメラです」と言っているようなものに守られた巨大な隔壁の前にたどり着くと、おもむろに隔壁が開く。
「「「……!!」」」
三人は隔壁が動いたことに驚いていたが、こちらもおもむろに絢は前に手を上げる。
「「「……!?」」」
二度目の驚きは別物、隔壁の向こうから漏れ出た閃光に向けられた、それに対して絢の掌にも眩いほどの光が集まる。
隔壁が完全に開くと二つの閃光が引き伸ばされ、ちょうど中央で衝突する。
「あーちゃんのが……押されてる?」
確かに外見だけを見れば絢の放った光線は隔壁の向こう側から発される光線に押されているように見える、ただその内部では真逆の事象が起きていた、隔壁の向こう側からの光線をその発射口の直前まで絢の光線が貫き、それを押し返さんとばかりに威力を増す光線は絢の光線に阻まれ、収束せずにフェンリル達に直撃はしていない。
互いにその攻撃のために貯めた力を使い切ったのか、それともどちらかが使い切ることを予見してもう片方が持続をやめたのか、二つの光線が徐々に細くなると外壁の遥か先で拮抗していた場所に球体が現れ、大きな爆発を引き起こした。
隔壁より絢側は10センチ進めば当たるといったところで拡散した光線によって円形を描くように溶かされ、その反対側では爆発によって先ほど光線を放った武器が完全に壊れていた。
強烈な光によって焼かれた視界も元に戻り目の前が見える。
そこには水晶に閉じ込められている少女とその水晶につながれた管、更には数えるのが億劫になる程の大きめのロボットアームがうごめいていた。
「敵目標を認識しました、排除を行います!!」
先ほどの爆発でセンサーが壊れていたのか、暫くしてからその放送が行われる。
「私達を排除出来るのならやってください」
「排除」その言葉の意味はその場から追い返すことではなく完全な消滅である。フェンリル達からすればその宣言が達成されるのはどうしても避けたいところだが、絢からすればそこまで忌避することでもない……約束をしていなければ、の話だが。
「さあ、やり合いましょう」
そう言った絢の後ろには大量の魔方陣が浮かび、機械側は何処からか大量の兵器を取り出した。
「あの武器は何処から持ってきたんだ?」
「どこかに生成器でもあるんじゃないですか?」
「生成器……という事は此処で作ってるのか?」
「もしかしたら大量に在庫があるかもですね」




