25話・勝てる確率とは終ってみなければ分からないのです
「魔法見せて見せてー」
「いいですよ」
「……止めろ止めろ止めろ!!
人の背中の上で火に雷に水を使うんじゃない!!」
「そもそもいつまで乗ってる、自分で歩け!!」
「そーだそーだ!!」
「いや、貴方はどちらかと言えば私と同類でしょう」
非常に騒がしくしながら階段を歩いて降りるフェンリルとその背に乗る2人はもう一人の角を生やした少女が目を覚ますのを待ち続ける。
こんな状況だからか、フェンリルも気が大きくなり絢に色々な不満を伝え絢は適当に聞き流し本を読んでいる。
「……そろそろ緊張も解けてきましたか?」
そんな絢の言葉を聞いても、勢いに乗っているフェンリルの言葉遣いは変わらない。
「あたりまえだ、何度も何度も威圧を受けていればいずれは慣れるに決まっているだろう」
「そうですか……では、そろそろ私の戦いにも慣れてきたんじゃないですか?」
慣れてきたという言葉に反応した絢の言葉に二人の言葉はもちろん
「「それは無理」」
の一言に尽きる。
そんなことを話していると突然に飛び起きた少女が絢に向けて敵意をむき出しにする……よりも先に雷をまとった鉄の棒がその敵意を攻撃に移した瞬間に貫かんばかりに少女の方向へ向いていた。
「それ刺すなよ、我に刺すなよ」
「その程度の制御は簡単にできますよ……、で、貴方はどうしますか? このまま戦えば垓に一は勝てると思いますよ」
その言葉を向けられた少女は次第にその敵意を沈めていき、最終的にはフェンリルの背の上に座るまでには落ち着いた。
「何故座る……いや、立たれるのもそれはそれで痛いから嫌なのだが……、いや、なんでもない」
今流れている空気に合っていないと感じたのか、自分の言葉を取り消した。
「何故私を生かす?」
普通ボスは倒す物でありボスもそのつもりで全力で相手を攻撃する、いや、まさか、そのことにピンと来ていない人がいるとは、誰もいないと思うのは間違いだろうか……
「何の話ですか?」
「私は貴方を殺すつもりで……」
そこまで言って、その場にいる全員が初めて聞く、絢の素っ頓狂な声と言う物があげられる。
「え……?」
「「「……え?」」」
「「「「……、え……?」」」」
その後数舜、誰もその事態を飲み込めない、今何が起きたのか、相手が何を言っているのか、それどころか先ほどの戦いで思ったことまで、その全てが崩れ去った瞬間だった……
「何を言っているんだ?」
「いえ、まさか人間相手に人型で戦う行為がまさか私の命を狙うものだとは思わず……」
「え……わ、技も出して」
「技……、ああ、まあ、いい物でしたよ、技は」
褒めてはいるのだろうが、まるで今思い出したかのような発言に、少女のプライドが大きく傷つけられる。
「正直に言って龍の形態を捨てずに、そのまま来た方が勝率はあったと思いますよ」
その言葉に「まあ、確率なんてやった後では何を言っても関係ありませんが……」と付け加えられたダイヤモンドのやすりのような言葉が、豆腐のように柔らかくされた少女のプライドやメンタルをボロボロに傷つけ、その影響は感情を通り越し表情にまで現れていた。
その一連の出来事に他の二人から
「あーちゃん女の子泣かしたぁー」
「何をやってるんだ……」
と非難が殺到する。
「隠すのは正直言って苦手ですので正直に言います、はっきり言って貴女は私にとっては弱いです、だからこそ、育てる楽しみと言う物があります。
私の物になりませんか?」
それは10割がた侮辱に等しいものだが、今まで、彼女が他の存在にしていたものと同じだ、寧ろ相手方が育ててくれると言っているのだからただ単に突き放していた自分よりも幾分か良心的かもしれない。
「すぐに超えるぞ」
「今まで私にそれを言って実行できた人は知りませんが……」
「なら私がその一人目になってやる」
「楽しみにしていますよ」
そこまで言うと、「さて」と前置きをして絢が言葉を続ける。
「とりあえず、何よりも先にここを出ましょう、ただただ永遠と進むのは飽きてきました」
「それを言っていいのは我だけだろう……、そろそろ自分で歩け」
「……、」
「何か言え!!」
今度は3人によって絢の不満が垂れ流される。
今までと違い、歩いていたからかかなり時間がかかったが、次第に階段に薄っすらと光が見えていき……、その先の景色が見えると、絢への不満大会が止まってしまう。
「剣と銃とは言った物ですね……」
「筋肉や目線、服の動き、相手の呼吸や場合によっては心臓の鼓動など、それを見たり聞いたりするだけでも相手がいつ動くかくらいはわかりますよ」
「……なにその化け物」
「いやいや無理無理」
「……できますよ」
「「「ッ……」」」




