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22話・適当な名づけはだめですか?

「ねぇねぇ」


「何ですか?」


「んふふ~」


「??」

 二人を乗せたフェンリルが階段を歩きだしてから10分、フェンリルと絢の二人で降りた時よりもはるかに長い時間がかかっていた。


「そういえばなんですが……」


 絢がそう声を上げると、絢の周りを浮かんでいる少女が「何?」と聞き返し、フェンリルがそれに冷や汗を流すというこれからいつも通りになるだろうやり取りが繰り広げられた。


「そういえば、名前を聞いていなかったな……と思いまして」


「……名前?」


 そんな少女の返しに「貴女、自分の事何も知りませんね?」と絢が言うと、少女が「あたりまえ!!」と言いたそうな表情で胸を張っていた。

 そんな少女の代わりにフェンリルが答える


「我らのようなものは、基本的に名前は持たん」


「そうなんですか?」


「他者が勝手につけた名はあるだろうが、余程間近で呼ばれでもせん限りは認識することもない」


「そうなんですね……、取り敢えず、私は名づけに関しては才能が無いのでしばらくお預けです」


 そう言われた少女はブーイングしていたが、絢自身はもう興味を失ってしまったようで、以上話題を出すことはなかった。


「━━すか……ま……きこえ……か?」


 どこからか発される聞いたことのない声へのフェンリルと少女の反応を無視して、絢がイヤリングの調節を始める。


「やはり奥の方へ行くと通信が途切れそうですね、自動調節する様にしましょうか……」


 どうにかして調整を終わらせたようでいつの間にかはっきりと声が聞こえるようになっていた。


「絢様~、聞こえますか~?」


「聞こえますよ……、ところで、昨日言ったこともう忘れました?」


「そんなこと言ったって、先生が一日に一回は連絡しろっていうんだから仕方ないじゃないですか~」


「まあいいです、タイミングもよかったですし」


「……何のことですか?」


 自分の担任に全ての責任を擦り付けようとしたことには誰も触れず絢が少女の事を唯に説明する、その間フェンリルと少女は蚊帳の外になっていたものの、二人とも文句をつけることはしなかった。


「つまり、その少女と言うのは赤い宝石と同じなんですよね?」


 唯の質問に対して「恐らくそうですね」と答えると今まで絢にプレイさせてきたゲームのキャラなどを名付けてきた経験から一瞬で名前を思いつく。


「だったらルビーとかどうですか?」


 唯のその提案を聞いて絢は一言


「今日からあなたの名前はルビーです」


 それを聞いた少女、改めルビーは「わかったぁ~」と答えていたが、フェンリルと唯の二人は全く悩みもせずに人の名前を決める絢に


「「少しは悩みましょうよ()!!」」


 と思わず突っ込んでいたのだった……。


 そこからルビーと唯の二人で話が弾み、フェンリルは歩き、絢は本を読む、そんな謎でありながらほんわかとした状況でも、時間は無情にも過ぎていく。


「━━じゃあまた明日です!!」


「また明日~」


 二人が別れの挨拶を合図にして絢が通信を切ると、丁度次の階層へとたどり着いた。


「……なんですかね、これ」


 そういった絢の目に映ったのは巨大な金塊、それも金のインゴットが山積みにされているわけではなく、文字通り金塊で構成され山、天井があるはずの上を見上げるとどこまでも広がる青空が広がり、空には鳥の様なものが飛んでいた。


「……あれは、『竜』だな」


 フェンリルの言葉に「竜って、あの羽根つきトカゲ?」とルビーが返すと空から激しく鳴き声が響く。


「我はもう知らんぞ」


 そういったフェンリルだったが、言葉とは裏腹に素早く走り出す。


「我の子孫でも番いで狩れる程度のものだが、いる場所には大量に居るからな、1匹見たら30匹入ると思ったほうが良い」


「ゴキブリみたいですね」


「ゴキ……? なんだそれは」


「気にしなくて大丈夫です」


 特に何もなさそうな会話をしながら、上空から降り注ぐ無数の火球を避けて走っていくなぜか存在する森の中に姿を隠すと上空からの火球は無くなったものの、地上からは鉄の様に硬化した木の根がくし刺しにしようと飛び出してくる。

 フェンリルがそれを避けるために上空に飛び、絢が地面に防御兼足場のために障壁を展開、その隙間を縫うように上ってくる根をルビーの剣が切り裂く。


「あいつらは数が多い上に竜としての誇りを傷つければ数の限り攻めてくるからな、立ち向かうよりもあちらの体力が尽きるまで逃げ続けたほうが楽だ」


 それから8時間、竜の攻撃から避け、逃げ、竜の体力が尽きるのを待ち続けたのだった……

「それにしても、ゴキブリとは何だ?」


「黒光りして、異様に生命力の高い小さな生き物ですよ」


「……心当たりはないな」

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