19話・ペット狼?を手に入れました
お母様は恨みは力になると言っていた。
お父様は恨みは人を愚かにすると言っていた。
私は人を使うのに必要なのは恐れだと思う。
そのどちらも私は感じれたことはないのだが……
「お話をしませんか?」
先ほどから何故か固まっている狼にもう一度話しかけるが返事がない。
なぜかと考えていると、先ほど何か質問されたことを思い出し、それがどんな内容だったかを思い返す。
「ああ、お話を止めたのは私でしたね」
全く感情のこもっていない笑顔が狼の思考の片隅にに恐怖を生み出し、その笑顔のまま記憶の中にある質問に返答する。
「そうですね……私は人間ですよ、か弱く強い人間です」
絢はいつも通りの表情で、いつも通りの声音でそう答える。
「あり得ぬ……、ただの人の子が、我を倒すなど……」
狼は震える、それは目の前に立っている少女が人間だということにも、その人間が自らの腕を切断し、頭を消し飛ばしたことにも……
「まあ、私の話はもういいでしょう、貴方のことについて教えてください」
自分のことなどどうでもいいという態度で、さらには自分の事を聞いてくるような存在など今まで見たことが無い狼は「我の……ことか?」と、当たり前のことを聞き返す。
(普通、力ある人間はそれを自慢するものではないのか?)
そんな疑問も浮かんだが、狼は自分のことを語りだす。
「何処から話すべきか……、我はその昔『神殺し』と呼ばれていた……」
そこで絢が話を遮る。
「もしかしてなんですが、名前、フェンリルだったりします?」
「我の事を知っているのか?」そんな疑問の声が出るよりも先に絢が言葉を続ける。
「やはりいいです、もう大体知ってますから……」
(いい……良いとはどういうことだ? 話さなくていいという事か? それともわれの存在そのものか?)
明らかにつまらなそうな顔をして自分のことを拒絶された狼は戦々恐々とするが、絢がそんなことを気にかけるはずもなく、次の話題へと話を変える。
「で、この部屋からはどうやって出たらいいんですか?」
「……それは知らん」
当たり前であると言った雰囲気を醸し出す狼は、更に「ここを通った者は今までおらんからな」と何でもない事のように言い、絢もそれに反応することはなかった。
その回答を前にして「仕方ない」と結論付けた絢は、自らの魔力を薄く広げる。
「何をしてる━━━」
(本当に何をしているんだ!! また戦うつもりなのか? 我はもうやる気はないぞ、やめてくれ!!)
絢はそんな狼の言葉を遮り絢が自分の話を続ける。
「貴方、なんと呼ばれたいですか?」
「まあ、我の名前はあの糞共が勝手に付けただけで実質無いからな……、別に……なんでも……」
そこまで言って、目の前の少女から発される魔力が増えていることに気づいた狼は何かの琴線に触れたのかと冷や汗を流す、自分の喋り方がダメなのかとも思ったが、いまさら変えるにはプライドと知識の無さが邪魔をする……。
(……もしかして我は回答を間違えたのではないか? ああ、今日が我の命日か……)
いろいろと考える狼だったが、その心配はないと言える。
「ならフェンリルで良いですね」
「あ、あぁ、はい……」
何も問題が無いということに気くことなく、そんな返事しかできなかった狼だったが、直ぐに安心を取り戻すことになる。
「フェンリル」
「は……はい!?」
唐突に自分の名前になった言葉を出され、大きな声で返事をしたフェンリルに「何かあったんですか?」と聞いた絢だったが、聞くほどでもないと思い直した絢は「まあいいです」と付け加える。
「この穴を通れるくらいに小さくなれます?」
そう言った絢が指さしたのは、絢の5倍はあろうかと言う大穴と階段、その周りにはいつの間にか壊したであろう岩の瓦礫が転がっていた。
「は、はい……私を連れて行くんですか?」
「此処に留まりますか?」
その言葉は今ここで死ぬかもしれないと思っていた狼にとっては非常に魅力的な提案となった。
「いや、一緒に……」
「さあ、行きましょうか」
フェンリルが自分の中に巣くう恐怖を振り切って放った言葉を全く聞くことなく、絢がフェンリルの上に載っていた。
「は……、はい……」
フェンリルは、この程度と思っているだろうが、彼はこれから乗り物として絢に振り回されることとなる……。
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