17話・異次元と言う言葉は彼女にこそ似合う
それにしても、外にある死体はこれを見つけられなかったんでしょうか……
中にはないのは、骨から食われたんですかね……
ダンジョンの暗闇に入ってから1時間、下へ進むたびに広くなるその迷宮を20階層まで進みながら絢は一つ不便を感じていた。
(暗すぎてどこも見えません、魔眼を使っても黒い光が視界を覆いつくすだけですし……どうしましょうか)
さすがの絢と言えどもたった1時間で暗闇に目が慣れるはずも、そもそも光が全くない空間で物が見えるわけもない。
火や雷などの光を発するものを使うと音を頼りに周囲がモンスターハウス化してしまう上に、どんな素材でできているのか床や壁、天井が光を完全に吸収して漆黒に染まる。
悩んだ末に周囲の音を利用して地形を把握することで進んでいた。
「今まで倒したこれも見えないのは」
そう言葉をこぼした絢の歩いてきた道には、その暗闇によってみることはできないものの、狼や犬、蜘蛛や蝙蝠と言った姿をしていただろう魔物の死骸が何千体分と転がっていた。
「どうにかして見えるようにならないでしょうか……」
そんなことを口に出すと朝に耳に付けたイヤリングから音声が流れる。
(見える必要ないと思います……)
そこから聞こえてくるのは、どこか呆れたような音色の唯の声だった……
「そう言っても、見えてないと倒すのは面倒なんですよ」
そんなことを言いながらも、また何かを潰したような音を出す絢に対して(一瞬も苦戦してないじゃないですか……)と呆れたようにつぶやく。
「見えない中で敵の攻撃を避けるのはそれなりに難易度が高いんですよ……それより、若しものことがない限り通信してこないで下さいと言いませんでした?」
(なんか嫌な予感がしたので……、それで、今どこに居るんですか?)
「何処かの迷宮の中ですね……」
その絢の言葉に若干の疑問をもって唯が言葉を返すが、その間にまた破裂音のような音が響く。
(どこかってどこですか?)
破裂音を無視して冷静に唯が質問すると、絢も冷静に回答を返す。
「今唯がいる国とその隣国との間にある森の中ですね」
(わかってるじゃないですか!!)
「ですがこの迷宮がある場所の名前が分からないのでどこかとしか言いようがないんですよね……」
そんな絢の言葉に、唯が大きくため息をつく
(どこかに名前書いてなかったんですか?)
「そういえば入口の所にあった遺跡に『恨みの遺跡』や『怨の迷宮』って書いてあった気がしますね」
(絶対それが名前ですよ!!)
「では、これからはそう呼びましょう……、それよりも、貴女そろそろ朝になるでしょう、貴女の体調に気を付けてください」
絢がそう言うと(うぅ……)と言う唯の声と共に通信が切られる……
が、特に今の唯との会話によって何か問題が解決したわけではなく、視界が暗闇に包まれていることに変わりがない。
(暗くても魔眼を使えばいいと思いましたが、このあたりの魔力の色が黒いのか、此処の魔力が濃いせいで使ったら使ったでまた真っ暗……どうしましょうか)
そんなことを考えながらたびたび襲ってくる魔物を潰しながら進んでいると、音の反射が周囲と明らかに異なる場所を見つける。
(この音は……金属、形は扉ですね……、唯にいろいろとやらされたり読まされたりした物を基本に考えるのならこの先はボスがいるはずですが……、盲目勝てると思うのは流石に慢心ですね)
そう考えた絢は一旦扉から離れていく……
(魔物の討伐によって魔力はけた違いに増えましたが、やはり、問題は前が見えないことですね……)
そこまで考えて一つ案を思いつく……
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「思った通り上手く行きましたね」
そう呟いた絢の視界には、真っ黒な迷宮の姿ではなく、その迷宮の元の姿だろう、石でできた洞窟だった……、絢がしたのは二つ。
一つ目は魔眼に使用する魔力を大きく減らすことである、魔眼に使用する魔力を増やせば確かに魔法の射程や威力も上がるが、その分、放出する魔力もそれによって跳ね返る魔力も増加する。
跳ね返る魔力の量が多いという事は目に懐中電灯を向けられているような状態であり、そんな状態で前が見えるわけもない、元から魔力が多い絢が「それなり」の感覚で使えばそのような状態になるのも当たり前である。
そして二つ目は……
(やはり、後ろも見えるというのは便利ですね)
そう言いながら、絢は真後ろから忍び寄ってきた魔物に向けて魔法を放つ。その魔法は一直線にその急所を貫きその先の地面に穴をあける。
二つ目は、魔力によるソナーである、今まで音でやっていたことを魔力でやることによって、その距離や正確性を大きく伸ばしたのである。
「さて、そろそろ……」
そういった絢は、先ほど見つけた扉の前に立ち一言。
「そろそろ攻略を始めましょう」
魔法は基本的に想像力なのです……、これを想像できるってどうなってるんですかね
それにしても、目の前で懐中電灯をつけられても前が見える想像はできなかったんでしょうか……




