15話・私の家族は直ぐにこっちに来そうです
あの人達、どうやって国を維持してきたんでしょうか……
どこかで見たことのあるような生活感のある部屋、だが、そこには前回にはなかった数人掛けのソファーと70インチほどの壁掛けテレビ、その隣には巨大な箱のようなスピーカーが置かれていた。
(ここはあの人の部屋ですね……、何故ここに?)
今まで自分の想像通りの出来事を送っていたところ唐突に、予想外のことが起きた。その一連の出来事に絢は一切混乱せず、既にキリィ―を探し始めていた。
「キミと見たいものがあってさ、一緒に見てよ」
そのキリィーの誘いに、絢は返事をすることなく……
「時間は?」
「ちゃんと止めてあるよ」
「一緒に見たいものとは?」
「キミの家族」
「タイミングは?」
「キミがいなくなってから1週間後」
と言ったとてもテンポのいいいQ&Aを終わらし、最終的に絢が出した結論は「観ましょう」だった。
「と、言ってもどうやって見るんですか?」
「空間投影と千里眼……って言っても君はまだできないか、まあそういうものの応用をしてこのテレビで見れるようにしたんだよ」
「そうですか……」
絢がそう返事をするとキリィーはソファーに座り左隣を「ポンッポンッ」と叩き、絢は「はぁ」とため息をついてそこに座る。
「じゃ、見ようか」
そういってキリィーがどこからか取り出したリモコンのボタンを押すと、テレビには暗い部屋が映し出される……
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「みんな、わかっているな……」
そんな言葉が放たれたのは、全てのカーテンが閉められ、必要以上の長さを持つ机に向けてその場の人数よりも一人分多い椅子が並べられ、部屋の電気が全くつけられていない、真っ暗な部屋だった。
「それよりも先に電気付けましょう」
そんな重々しい雰囲気を全て無視してカーテンを開け、電気をつける。
「……で、どうするつもりですか?」
カーテンを開けた女性はそう言い放ち――
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「ちょっと、待って、待って、待って!!」
「何ですか急に……」
絢は唐突にリモコンのボタンを押し画面を止めるキリィーにそんなことを言う。
「何あの人、っていうか誰、いつ出てきたの!?」
キリィーの反応は文字通り、唐突に出てきた一人の女性についてであった。今画面はその女性を出している場面で止まっており、絢はその人のことについて解説を始める。
「あの人は私の母です、まあ、確かに存在感はあるのに影は薄いですからね、貴方が気付かなかったのも仕方ないと思いますよ」
「いやそういう話じゃ……」
話を深堀しようとしたキリィーの言葉に絢は「続きを観ましょう」と言葉をかぶせ、キリーすら物言えぬ圧力をかける。
「わ……、わかったよ……」
キリィーは若干その笑みを引きつらせながらもリモコンのスイッチを押した……
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彼女がそう言うと、初めに声を出した男が口を出す。
「そんなことを言っても、あの子がいなくなったんだ、直ぐに探しに行かないと……」
「今までジャングルや雪山の奥地に放置した上に、崖から突き落とし、挙句の果てには半分壊れて修理しないと動かない潜水艇に放り込んで太平洋に沈めたあなたが言うことですか?」
それを言われた男は――
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「ちょッッと待ったぁぁ!!」
キリィーが突然大きな声を出しながら映像を止める。
「何ですか急に……」
「変わらないねぇ、キミ全く反応が変わらないねぇ、って、そんなのはどうでもいいんだよ!! キミ今までどんな環境で生きてたの!!」
「普通ですよ」
急に騒ぎ出すキリィーに対して絢はいたって冷静に返事をする。
「キミの普通が知りたいよ!!」
そんなキリィ―に対して絢が言うことは一つ……
「続きを観ましょう」
完全な真顔でそんなことを言われたキリィ―はしぶしぶと言った形でリモコンのボタンを押す。
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「むぅ、しかし、今回はあの子の居場所を把握できていない、こちらからも探すべきだろう」
そういった男は絢の父である、彼は今まで幾度となく絢に試練を課し、絢はそれを跳ねのけ一人で家に帰ってきた、今回もそうなるだろうと思っていたものの、1週間経とうと、1か月経とうと一向に帰ってくる気配すらない。そのことに彼を含め一家の全員が不安に包まれていた。
「お父様!!」
そう叫んだのは絢の兄、彼は今まで絢の発明を幾度となく審査し、世へと売り出してきたその人である、この中で最も絢を知っているだろう人間が意見を上げる。
「何だ?」
そう父が出した言葉に、兄は一度喉を鳴らして言葉を発する。
「これは可能性の話なのですが……」
「前置きはいい、結論を出せ」
「それでは……落ち着いて聞いてください、あの子が……絢が、この世界にいないことを視野に入れるべきではないでしょうか……」
その言葉に、今度は兄以外の全員がのどを鳴らす。
「それは……絢が死んだという事か……」
「違います、絢が研究していたものの中に、並行世界や異世界と言ったものの研究資料がありました、絢はこれらの実験に失敗したんじゃないでしょうか」
その言葉に父はむつかしい顔をする。
「あの子が失敗をしたと?」
「可能性は低い……、とは言え、絢が研究していたという事は向こう側がある可能性もあります」
「むしろその向こうと言う場所から呼ばれた可能性の方が高いだろう」
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「もう疲れたよ……、今日はここまでにしよぉーよー」
キリィ―は此処までの膨大な量の情報によって脳が情報処理の限界に達したようで、終了を願望していた。
「……、わかりました、ではその前に幾つか質問良いですか?」
「なんだい? 疲れてきたから手短に頼むよ……」
ソファーに倒れこみ疲労困憊の様子のキリィ―は運動をしていないのにもかかわらず息も絶え絶えな様子でお願いをする。
「じゃあ一つ、以前言っていた『ハイスペック』とはどういう意味ですか?」
「そりゃ、人より色んなことが見えたり、聞こえたり、動けたり、考えれたり……まあ、色々だよ」
絢の質問に対してキリィ―はとてもめんどくさそうに答える、一つずつ数えるたびに指を折っていきく。
「じゃあ、貴方から見て、私に弱点ってあったりします?」
「そりゃ、まあ……、人の気持ちわからないし、普通が分からないし、下手をすれば寝ないし食べない、結構死にやすいよね、キミ」
絢は全く知りたいことは知れなかったが、取り敢えずこれ以上は何も引き出せないと思ったのか、絢はそれ以上聞くことをやめてしまう。
「じゃあ、私が本来行くべき場所へ戻してください」
まさか自分が呼び寄せたことを気づかれるとは思っていなかったのかキリィ―は少しだけ驚いていた。
「ありゃ、気付かれてたか……、元々ここに飛ばされるものだとは思わなかったのかい?」
「全く思いませんでした……、と言うよりも、直ぐ傍にあんな堂々と隠蔽された場所があってそこじゃないなんてことありますか?」
「行くとこも知ってたのか……」
キリィ―はそう言うと、唐突にソファーから立ち上がり、後光を発生させる。
「さあ、選ぶと良い、貴様が選ぶは試練の道か、平穏の楽園か……」
「そういうの良いので、試練の道とやらに行きます」
「あっ、そう?」
その言葉は、せっかく出した雰囲気を否定されたことによって出てきたのか、それともあっさりと試練の道を選んだから出たのかは分からないが、キリィ―は絢の意思を尊重する。
「じゃ、行くべき場所に飛ばすよ、絶対に死なないでね」
「大丈夫ですよ、私は唯と約束してきましたので……」
絢がそう言うと、その視界は幾度目か白く染められた。
終わらない、終わらない……永遠に、終わらない……
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