12話・地理を制する者は闘いを制する
この宝箱は凄いですね、私の図書室の1/10も本があります、これを集めるのにどれほどの時間をかけたのでしょうか。
それにしても、100体ほどでは使い魔の数が足りないです、どうにか自動で動かすための魔法プログラムを作りましょう。
他の人が日に照らされ過酷な運動をする中、常に快適な温度が保たれた部屋で読書をするというのは普通の人なら少しの罪悪感や優越感を覚えるような状況だが、そんな感情は実際にその状況で本を読んでいる少女は持ちえない。
(それにしても、この森なにもないですね。
ここで発生する魔物が強くなり魔の森と呼ばれるようになったのは此処数十年の話、絶対に何かあるはずなのですが……)
そんな言葉を発する少女の目に映る光景は二つ、一つは現在もその一字一句、筆跡すら記憶しながら読みするめている本が、もう一つには、ここタルルク王国を中心として周囲の地形情報を収集させている使い魔から流れてくる視界である。
現在、絢は使い魔をタルルク王国西部に広がる広大な森に集中させていた。
絢がここに興味を持ったのは初日、図書室の本を読んだときからである、ここはタルルク王国とこの森のさらに西にある国とが互いに不可侵と定め緩衝地になっている、ここが互いに不可侵の領域になったのは今から数十年前、異常に強い魔物がその数を増やし、どちらの国も手を出しにくくなったことによって開拓をやめたことが原因である。
使い魔から送られてくる視界にはちらほらと魔物の群れが写り、500mを優に超えるような巨木が群れを成して広がっていた。
(大量の魔力量を保有する魔物が群れ単位で存在するのに何もない……、と言うのは少しおかしいですね)
魔物と言うのは大まかに言うと絢達が使っている魔力によって自然発生する、生物型であれば魔物でない生物と同じように繁殖するが、それでも周囲や親の魔力を吸収する、魔力量を増やすときに魔物の討伐を進められるのも魔物の魔力精製が純粋であるため、多量の魔力を吸収できるからである。
(どこかに魔力の源泉があるはずなんですけどね……)
そう考えた絢はその源泉から逃げるように魔力量の低い魔物が集まる方向を探すのをやめ、魔力量が多い魔物が闊歩する方向を探り始める、その最中何度も魔物により使い魔が潰されるが、その度に使い魔を経由して新たに使い魔を作り出す。
そのまま30台目の本を読み終えたころ、使い魔が不自然に移動する。
そのまま複数の使い魔をその場に向かわせるがそのどれもが別々の道をつなぎ合わせたような移動をしその中を見ることができない。
(ここ、使い魔が入れない……と言うよりも入った瞬間に反対側へ転移されてますね)
使い魔とのつながりを通じて、魔力を送り使い魔に魔眼を形成させる、魔眼を通して同じ場所を見ると、そこには薄い青色をした半球状の何かがあった。
(結界か障壁か……、何か効果を付与できるのは結界ですね……)
絢は今まで読んできた本から知識を引っ張り出し、その中に何があるかを断定していく。
(あの結界は魔力を遮っているんでしょうか……としたら、何故そんなことをしているのかは気になりますね)
その間にも、何度か条件を変えて使い魔を突入させているが、使い魔が結界を超えることはなく、その中を観れずにいた。
(これ、壊さずに中を見れるんでしょうか、見れたとして、明らかに魔力を密閉しているこれを壊したら周囲がただで済まないことは明らかですが……、やめておきましょう、面倒なことになるに決まっています、気にはなりますがそれはまた違うところでやるとしましょう、この結界の効果を無効化する魔法を積んだ使い魔を作りましょう)
その後、30分でその結界にかけられた魔法を解析し、さらに1時間でその魔法を無効化する魔法をかけた使い魔を作り出し、さらに1時間後にはその使い魔を結界に突入させていた……
その2時間半の間に読み終わった本がさらに30台増えどちらかと言えば結界よりも本の方に集中していたのはまた別のお話である。
とは言え、読書の片手間とは言え絢が作った魔法を背負った使い魔である、その使い魔はまるで何もないかのように結界を突破し、その内部の景色を絢に伝える。
その中は大樹の数々が群れの中に現れた巨大な陥没穴だった、陥没穴にはかつて栄えたのだろう都市の残骸が散らばり、ところどころ風化さえしていた……、しかし、絢が目を付けたのはそこではない。
(これは……凄いですね、それにしても外にあれほどいる魔物がここには一体もいませんね)
その結界の中はまだ魔眼を使っていても周囲を確認できた外比べて目の前を認識することすらむつかしい程に膨大な魔力に満ちている物の、そこには全く、奇妙なほど魔物が存在しなかった。
(このまま魔眼を使っているのは眩しいだけですし切っておきましょう、さて、中の探索をしましょう……)
そうして使い魔を使いその陥没地を調べていると、とある物に気づく。
(骨が多いが多いですね……)
そこに転がっているのは大きさはそれぞれだが折れも欠けもしていない白骨化した遺体の数々、そのどれもが古く最低限の服しか着ていない、一番新しいだろう物ですらその服が壊れかけているほどだ。
それを……、それを詳しく見ようとしたところでジムラドの図書室の扉が開く。
「やはりここに居ったのぅ、訓練も終終了じゃ、お主も食堂へ行ってやれ……、それにしても今日だけでどれだけ読んだんじゃ?」
「あそこから……あそこまでですね」
そうして絢が指さした2か所の間には120台の本棚が挟まれていた。
「お主……本当に人間か?」
「はい、ただの人間ですよ」
そういった絢は、何もなかったかのように読んでいた本を元の棚に戻し図書室から出て行った。
地理探索(それは森の中)です!!
それにしてもこの陥没地は何なんでしょうね……
後絢ちゃんが読んでいた本について教えてほしいです。




