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√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道 悪いな勇者、この物語の主役は俺なんだ  作者: 萩鵜アキ


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74/92

いつもの聖女へ

【シナリオ理解度が1%増えました――59%】


 おっ?

 この会話ってシナリオ絡みなのか。


 その封印されてた悪魔、間違いなく生きてるな。

 もしかしてイングラムが滅んだのって、そいつのせいなんじゃね?

 封印してた奴らに復讐するって感じでさ。


 考え事をしていると、あっという間に一番奥までやってきた。

 牢の中には、両腕を鎖に吊るされた聖女がいた。


 その頬には、うっすらと涙の跡が残っている。

 ……聖女って、涙を流すんだな。


 プロデニには4人のヒロインがいるが、聖女以外は全員涙を流すシーンがあった。

 涙を流すヒロインを支えて仲を育むのが、それぞれのルートの定番構成だ。

 だが唯一、聖女だけは違う。


 彼女は一切、涙を見せなかった。

 逆に落ち込む勇者に活を入れたり、どれほど傷ついていても反骨心で立ち上がったりする。


 そんなキャラを泣かせるって、相当キツイことされたんだな。

 涙の跡にムクムクと、黒い感情がこみ上げる。

 しかし怒りを爆発させたところで、ただの自己満足。

 まったくファンケルベルクらしくない。


 ここは感情を押し殺して、これまで通り振る舞うとしよう。


「いいホテルだな。寝心地はどうだ?」


 声をかけると、やっと聖女の瞳が俺を見た。

 途端に瞼が大きく見開かれた。


「……ッ、どうして、アンタが、ここに」

「神に祝福された高級ホテルがここにあると耳にしてな。是非俺も宿泊しようと思っていたんだ」

「悪のお貴族様がこんなところに泊まったら浄化されるわよ。ほら、帰った帰った」


 気丈に振る舞ってるが、手が震えてるな。

 こんな姿見て、はいそうですねって、帰れるわけねぇだろ。


 やるかたない憤懣をぶつけるように、俺は刀剣を抜いて柵を切断する。


「ヒエッ!」


 後ろから声が聞こえたが無視だ無視。

 MOB(カーラ)よりも、今はニーナだ。


 そのまま中に踏み込み、手枷を切断して外す。


「ギャピッ!! れ、歴史ある聖遺物が……ッ!!」


 うるさいなぁ。

 カーラ(お前)も斬るぞ?


「ほら、帰るぞ」

「う、うん。あ……りが、と」


 手首をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。

 ふぅ……。

 正直ここまでやって「帰らん」って言われたらどうしようかとビクビクしてたわ。


「むっ?」


 あれっ? カーラがいない。

 いつ消えたんだ?

 逃げ足の速いやつめ……。


 きっと救い出された聖女にボコボコにされるのが嫌だったんだろうな。


「どうしたの?」

「いや、なんでもない」


 聖女がこうなったのはカーラのせいだからな。

 けじめを付けさせたいが、いなくなったなら仕方ない。


 教会から出ると、イングラムの夜景が目に飛び込んできた。

 丘の上にあるこの教会からは、たくさんの明かりが灯る街並がよく見える。

 夜になった王都の景色は、また一段と綺麗だな。


 今日はなんかいろいろあったなあ。

 マジで疲れた。


 この疲れた体に、街の明かりがよく染みる。


「ねえ、行かないの?」

「……しばし待て」


 もうちょっとだけ、この景色を堪能させてほしい。

 これ、プロデニじゃ見られなかった光景だから。


 そうやって、夜景で疲れを癒やしている時だった、


「エ、エルヴィン様、マジ、ひさしぶりっス。探すの、苦労した、ッスよ……」


 こちらに向かって、ジェイが近づいて来た。

 その体には、所々葉っぱがついている。

 一体どんな道を通ってきたんだよ。


 反面、俺から見える肌には一切傷が付いていない。

 トモエから全力攻撃を受けたっていうのに、かすり傷すらないなんて……。

 こいつの防御力、本当にお化けだな。


 さておき、俺に見捨てられたにも拘わらず、ここまで俺を探してくるあたり、忠誠心が素晴らしく高い。

 せめてもの罪滅ぼしに、ねぎらっておくか。


「ご苦労。待っていたぞ」

「エ、エルヴィン様……」

「お前の働きには助けられた。これからも頼むぞ」

「は、はいっス!!」


 これくらいでいいかな?

 正直これ以上、思ってもないことを言うのは心が苦しい。

 ってか、今の今まで存在自体忘れてたしな……。


「ねえアンタ、ジェイが戻ってくるって知ってたの?」

「いいや?」

「じゃあなんでここで待ってたのよ?」


 いやただ夜景を見てただけなんだよ。

 だからジェイが現われてびっくりしてるくらいだ。


「ただの偶然だ」

「ふぅん。嘘つくの上手いね」


 これが嘘じゃないんだなぁ。マジで。


「アンタみたいな男に惚れた女は大変ね。嘘が上手くて、いつも優しく騙される」

「なんだそれは。俺を悪い男みたいに言うんじゃない」

「でも、悪い貴族よね」

「〝元〟貴族だ」

「失礼しました、国王陛下」

「ふざけろ」


 くすくす。

 聖女が笑う。

 その顔には、もう捕らわれていた時のような、絶望の影は見られない。


 いつもの聖女って感じが戻って来たな。

 よし、それじゃあ飯でも食いに行きますか!


 俺たちが丘を下りようとした、その時だった。

 ――イングラム王国に、厄災が出現した。

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