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ある亜神の報告書「錬金術師」

作者: アラタカ

リポート物です

俺の名前は神戸かんべ、亜神だ。

元は人間だったが、徳やら経験を積んで今に至る。

亜神になった後も、主神の指示に従い行動している。


この報告書は君たちの世界の状況に合わせた物となっている。

詳細は異なるが、大体の翻訳は間違っていないと思って読んでほしい。


「まずい天職がまずい状況になっている」


主神からその伝言を受け取り、その世界へと渡った。


その世界は君たちの世界とよく似ている。

「魔力」が無く、神も居ない世界だ。


伝言にあった「天職」とは、結果に多大な影響をもたらす魂に結び付いた技能、才能の事であり、ありとあらゆる個体に備わっているものである。


ただ、天職の発現には魔力が必要不可欠であり、魔力が無いと大した影響は及ばさない。

したがって、この魔力が無い世界では大きな問題は基本的に起きない。


が、まずい天職がまずい状況になった場合、世界が崩壊する可能性がある。

それが、錬金術師が自らの魂を対価に強い願いを込めた錬金道具を作成した場合である。

魂には魔力が含まれており、天職も発現可能となる


観察対象の個体の状況を見てみよう。


愛した妻が、戦争と貧困を逃れた難民の手により亡き者となったようだ。

一言で言って悲惨としか言いようがない。

闇落ち一直線かと思った。

最悪の場合を想定して、準備をしながら経過観察していたところ、ある変化が起きた。


悲しみに暮れている男は、ある女性と出会う。

男の好みストライクであり、女性もさみし気な表情にキュンとなった様だ。


女性の献身的なサポートにより、少しづつ感情を取り戻していく男。

妻の両親も、男の人生を考えるように伝えた。


気持ちの整理がついたころ、女性と結婚した。


男を最後まで見届ける必要が出てきたので、戸籍をでっちあげて男の同僚として生活することにする。


子宝にも恵まれ、幸せな生活を送る男。

俺も安心していた。そして油断していた。


孫も生まれ、平和な定年生活。

趣味の骨とう品を集めながら順風満帆な老後を送っていた。


そして世界の平和を願いながら幸福な人生を終えた。


これで調査は終わりかなと思い、天界への帰り支度していたら、ある変化が起きた。


男の住んでいた町内にある小さな公園に普通の一軒家程の石玉が突如、現れた。

天界の目で視たところ、錬金道具と出ている。

やられた!骨董品と願いと魂の一部で無意識で作成したようだ。

だが、悪性な気配は感じられないので、観察を続ける事にする。


朝の掃除に来た管理人が発見し、様子をうかがったところ、人が一人入れる位の穴が開いている。

ただ、黒いもやがたちこめていて中に入れないようだ。

困った管理人は警察へ通報し辺り一帯は騒然とした。


ライトで中を照らしても、何も見えないし、警官たちもやはり中に入れなかった。

ならばと、重機で石玉をどかそうとしてもビクともせず、調査のために採集しようとしても、ひとかけらも壊れなかった。


当初は物々しい警備体制が敷かれていたが、侵入も調査も出来ないとなると、次第に世間の興味を失っていった。


石玉の周りに簡単なフェンスが張られ、公園は解放された。


丁度そのころ、公園の周辺で変化が起き始めた。


住民が家に居るときは腹が減らなくなった。

かといって不健康になる訳でもなく、口に入れれば普通に食べているし、職場に行ったときは腹も減るようだ。


そして、ケガなどの不調は全て自然回復するようになった。この回復範囲はかなり広義のようで、薄毛や認知症、生まれつきの疾患も含まれ、病気にももちろんかからない。


また、強い負の感情を持つ事も無くなった。

何年間も引きこもっていた者も働いたり、外出するようになった。


これにより、犯罪も激減した。


驚いた事があった。

バイクの事故で死亡し、火葬場で骨になった青年の遺骨を家に持ち込んだ瞬間に逆再生を見るように元通りに復元した。


これを録画していた家族が動画投稿サイトにアップして、この町の変化が周知されることとなった。


町民の健康調査したところ、なんの異常も見当たらなかった。


科学者の誰も正解を出せないまま時間が過ぎていった。


これらの変化が起きた町民は目の色が金色になった。ただし、町民以外の人間が見ても分からないようだ。


町民の生活様式は少しずつ変わっていった。

持ち家や、十分な資産を持っているものは働く必要が無くなり、芸術やスポーツなどに時間を使う人が増えた。


地価が上がったが、誰一人も売らなかった。ならず者に一時的に誘拐されたりしても、家に体の一部を置いておくと復活するので、問題は無かった。


そんな平和な日常の中、さらに、そして最大の変化が訪れた。

石玉のモヤが無くなり、侵入出来るようになった。

とはいっても、誰でも入れるのではなく、金目になったものだけだった。


その頃になると町民はならず者に対抗するため、自警団を結成していた。

自警団による調査の結果、石玉の内部はとても広い空間になっており、とてもではないが通常のものとは思えないとのことである。

おまけに内部は洞窟のようになっており、凶暴なウサギが出現していた。

まるでゲームの世界であるとの報告だった。

気になったので、また戸籍をでっち上げて自警団に入団した。

なるほど、完全に魔力に満たされたダンジョンである。

これなら天職の発現にも問題ないだろう。

自警団の活動も捗りそうである。

モンスターの動力源は魔力と周囲の人間の負の感情で出来ているようで、倒すと純粋な魔力に還元し周囲への影響に使用しているようだ。

侵入した者の漏れ出る魔力や、周囲の公害物質も変換しているようで無駄が無い。

モンスターを倒しながら階層を下がって行く。

そうこうしていると、コアルームに到着した。

神の目で視てみると、ダンジョンコアに間違いない。

完全循環型の永久ダンジョンのようで、しかも分裂型である。

ここまで完成されたコアは見たことが無かった。あいつは亜神になるだろうな、、。

必要な魔力を入力するとコアが出た。

どうやら自他ともに認める家屋に設置するとプライベートダンジョンになるようだ。

自警団の連中が持ち帰り、ダンジョンを増やして行く事だろう。


どうやらこの世界の行く末が決まったようなので調査を終える事にする。

いずれ、神が選定されることになるだろう。


あの男は大した男だった。

あの悲劇からよく持ち直し、幸せな人生を歩いたものだ。

おまけに世界も救ったことになる。

実感はないだろうが。

そのうち、亜神同士で会う事になるだろう。


これにて調査を終了とする




続きは別の物語で書こうと思います

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