鳴かなくなったセミ
夏休みが終わる。
そんな何気ない一日。
セミの音が小さくなってきたある日。
僕らはクラスの打ち上げを行いにグループで遊びに来ていた。現地で集合と決めているため僕は一人で電車に乗り目的地へ着くまで外を見ながら暇を潰していた。「ガタンゴトン」とお決まりの音を鳴らしながら電車が動く。今回始めて乗る路線なので外の景色はこれまで見たことのない景色だ。昨晩寝れなかったおかげか眠気がすごかったがそれ以上に興奮がすごかった。歩み寄ろうと心を殺し脳内シュミレーションを何回もして以前のように彼女と話せられるよう僕は練習していた。
男友達が乗った次の駅でグループの女子が一緒に乗り合わせたため軽く会釈をしておいた。電車が目的地に着き「こっち方向だっけ?」
と聞くと「うん、こっち方向」と返され一緒に目的地に向かう男女4人組。
男友達が女子と楽しそうに会話をしているところを見て、打ち上げをしようといったのは自分なのだが、やはりこういうことは性に合わないことだったなと感じる。
目的地に着きしばらくすると他の子達もやってきたが、2名ほど来ていない人がいた。一人は自分に休みのラインが入っていたのだが、もう一人は何も聞いていないのでビックリしていた。休みのラインが入っていることを友達に伝えると友達は店の中に入っていった。
僕が驚いている様子を見て友達は連絡が来ていない子が「体調不良」ということを教えてくれた。やっぱり、と思ったが気にせずグループ皆で遊んだ。喉が乾いたときに自販機で何気なく選んだジュースは彼女がよく飲んでいたもので、いつもより味がしなかった。
帰り道、駅へ向かっていると鳴かなくなったセミを見かけた。それを見てもう夏休みが終わってしまうのかと悲しい気分になった。
皆電車に乗るとスマホを触っていた。
僕はスマホを触る気分にはなれず外を眺めていた。「ガタンゴトン」と見たことある景色を。あのセミも短い一生を終えたそうだ。本当はまだ鳴いていたかったろうに土に帰るしかもう出来ないのだろう。あのセミをは誰かに気に入られたのだろうか?
まあ、僕には関係のないことだ。