大激怒のシュヴァルツ
いや〜、受験が大変なんじゃ〜。
「では、クラス内対抗試験のチーム分けをする」
ドイツから帰ってきたボクを待っていたのはいきなりの試験だった。
先生の口から告げられた試験の内容は、クラスで2チームに分けて対抗戦を行うというものだ。
ルールは簡単、半径5kmのフィールド内に拠点を作り、その拠点内にあるクリスタルを破壊し合うだけ。
フィールドは島にいくつかあるものを学園側がランダムで選ぶ。
「今回は4対4でくじ引きで決める、質問はあるか?」
スッとと拓海が手を挙げた。
「夜城が見学なのはわかりますが、もうひとりは誰が休むのですか?」
「私が救護班として待機しているよ、私の場合、加減を間違えれば命が消えてしまうからね」
言ってくれるじゃないか、たしかに彼はやろうと思えば僕達全員を殺せるだろう、だがそう簡単にできるものと思わないで欲しい。
今回の試験、散々調べてはいたがクラスメイトの術式を生でみてデータを採ることができる、これはチャンスと言えるだろう。
「...あれ?せんせー、月華は来るの?」
大弥が名前を上げた人物、第7席、夜神月華は編入当初から顔も見たことがない名前しか知らない人物、今回で是非とも見ておきたいものだが...ここに居ないことを考えると難しそうだった。
「余ならここにおる、貴様らの目は節穴なのか?」
聞き覚えのない声が教室に響いた。
振り向くと群青色の髪に新緑の瞳を持つ、どこか人間離れした容姿の少年がロッカーの上に座っていた。
「キミが第7席、夜神月華かな?」
念の為確認をすると、何故か思いっきり睨まれた。
心当たりは1ミリもないため余計に何があったのかわからない。
「喋るなこの下僕が!貴様の声で余の耳が汚れるではないか!」
「はい夜神お前が黙れ」
一瞬にしてゼフュロスに押さえつけられた、このままの放置は危険だと判断したのだろう。
ゼフュロスはとてもニッコリとしながら夜神月華に語りかけていた。
「夜神ィ?今シュヴァルツに手ぇ出してみな?もっかい俺と日向ぼっこしたいって判断するぜ?...お前が姫に迫ってたの、忘れるわけねえからなぁ?仲良く行こうぜ?」
「やめてくれ!余と貴様の仲であろう!?日光浴だけはやめないか!?」
完全に脅迫だった。
情報のない第7席、どれほどのものかと思ったがまさか日光だけであそこまでになるとは思わなかった。
「違うのだゼフュロス!余ではなく此奴が悪いのだ!この下僕が」
「な〜んだ、それほど日向ぼっこしたかったのか〜、じゃあお兄さんとお外行こっか〜?」
「やめてくれ!」
先生も困惑していた。
1分ほど前まで並々ならぬ大物感を醸し出しておいて、中身はそうではなかったようだ。
夜神にもう一度睨まれ、何もしていないのに怒鳴られた。
「大体貴様は何なんだ!魔術師の分際で余よりも吸血鬼らしい見た目をしおって!白髪に赤い隻眼など余の理想ではないか!この厨二病が!」
目の色はともかく、髪色と眼帯をしているのにはそれなりの理由がある、文句を言われる筋合いはない。
あと僕は断じて厨二病ではない、夜神の方が口調的にも厨二病をこじらせているだろう。
「更には余の花嫁の初恋を奪いおって!この身を捧げてでも討滅してくれようぞ!」
初恋、とはまた意外な単語が飛び出したものだ。
彼の言う花嫁なんて僕は出会った記憶がこれっぽっちもない、一体誰のことだろうか。
「お前まだ夜城のこと花嫁とか言ってんのか?んなわけねえだろ現実見ろこのナルシストが」
は?
首をゆっくりと天音の方へと向けると、彼女は苦笑いしていた。
「ねえ天音?どういうこと?」
「えっとね...シュヴァルツ君が出掛けてた時に突然花嫁って言われて手にキスされて...それで何を思ったのか私がシュヴァルツ君に恋してるって思い込んだらしくて...」
もう十分だった。
こいつが僕達の関係をどう勘違いしようがどうでもいい、だがこいつはやってはいけないことをした。
「お前...天音に手を出したのか...?」
天音は僕が守ると誓った相手だ、彼女の下僕と言うならば快く受け入れよう。
だがこいつは天音に迷惑をかけて、あまつさえ手にキスをした、もう我慢の限界だ。
「こいつ...必ず殺してやる...二度とその減らず口を開けれないようにしてやる...こんなゴミ屑に命など勿体ない、日光が苦手なんだっけ?自称吸血鬼、表に出ろ、蘇生もできないほどに切り刻んでやるから」
「え!?ちょ、シュヴァルツ君!?殺したら駄目だよ!?」
「わかった、キミが死よりも耐え難い苦痛を与えたいと言うのなら僕はそれに従って実行するよ」
「いや暴行を加えないで!?」
天音に触れた時点で万死に値する。
こいつは必ず殺さなければならない、ここでこいつの命の灯は消しておかなければならない。
「ほんと兄貴は姐貴のこととなると烈火の如く燃え上がるな...」
剣を抜き、一歩、また一歩とゼフュロスに押さえられながら冷や汗をダラダラと流している夜神に向かった。
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