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これは魔王を救う物語  作者: GOA
魔術学園入学編
2/9

波乱の入学式

ちょっと読みにくいだろうから編集して短く小分けにしてみたよ☆


「よし、じゃあ行ってきます!」

母「気をつけるのよー!」

真新しいブレザーの制服に袖を通し、まだあまり荷物の入っていないかばんを提げて家を飛び出す。

温かい風が桜の花びらを運び、春の訪れを告げる。

あのあと、龍我君の電話番号を渡されて解散し、その数日後には魔術師養成学園...名前は偽ってたけど推薦入学の手紙といま着ている制服が届き、推薦だったら楽だしいいでしょと言ったら両親も了承してくれたので、入学することになった。

待ち合わせ場所は私の家の近くにある河川敷の橋の下だからあるき始めて5分でついた。

どうやらまだ2人とも来ていないようだった。

川の水を見ると、水は澄んでいて、私の今の姿がよく写っていた。

あの紅葉がきれいな秋の日からもう半年近く経った。

その間、魔術師に関する文献やサイトを探す日々が続いていた。

市の図書館に一日中入り浸り、一日中パソコンの前にへばりついて、遠い博物館にだって行ってきた、それでも見つかった資料はほんのわずかだった。

数万年前からあるとされる遺跡の出土品だったり、そこに魔術師らしき人が書いてあったりするものばかりだった。

本当に魔術師は世界の裏側にいる存在であって、その証拠は徹底的に回収されていることを知った。

半年の成果がたったのそれだけだった。

その中で私は一つの疑問を持った。


なぜそこまで自分達の存在を隠すのか。


魔術師達の証拠隠滅は恐ろしいほど徹底的だった、だから謎だった。

ヒトとしては未知なる力を秘めている魔術師達は驚異ではある、しかし便利な面も多いのだろう、ならなぜ共存の道がないのだろうか。

私が魔術学園に行く理由で最も大きな要因の一つだ。

そしてもう一つの理由、それは私の眼についてだ。

私は魔眼持ち、と言われてもピンとこなかったし、何がすごいのかわからない。

でも私みたいな魔力のないヒトが魔眼を持って生まれた理由を探しに行きたい、という訳だ。


ドスン!


突然後ろで大きな痛々しい音がなった。

何事かと振り返ると尻もちをついた待ち人達がいた。

2人とも同じ制服を着ていた。

「えっと...大丈夫?」

?「なんとか」

龍我「やっぱり学園のワープ装置は使うべきじゃなかったって兄貴...」

また何やらすごいことをしてきたようだった。

「ワープ装置って?」

?「簡単に言えば学園にもとからある転移用の魔法陣のこと、使ったら指定の場所にワープできるやつね」

「へえ...それで学校まで行くの?」

まだまだ私が知らないだけで彼らの世界には面白いものがたくさんあると再認識した。

龍我「ああ、これで行くんだよ姐さん」

「へえそうなんだ...って姐さんって呼んだ!?」

聞くと龍我君は尊敬し、ついていくと決めた人を兄貴とか呼ぶらしく、何故か私もその尊敬の対象となっているようだ。

「はあ...で、その魔法陣ってどこにあるの?」

?「下見てみて」

促されるまま下を向くと、そこには薄っすらと光る幾何学模様の魔法陣があった。

私はさっきの光景を思い出した。

私の足元にある魔法陣と同じもので飛んできた2人は、大きな音を立てて尻もちをついていた。

2人は私よりも身体能力が高い。

そして今の私はスカートを履いている。

それらが意味すること、それは飛んだ先で大惨事になるということ。

「ちょっとまっt」

?「じゃあしゅっぱーつ!」

無情にも私の叫びは無邪気な彼には届かなかった。

次の瞬間には私は宙を舞っていた。

下を見ると3メートルぐらいのところに地面がある。

今度こそ死ぬかもしれない、そう思うと悲鳴すら上がらないほど怖かった。

?「よっ」

耳元で彼の声がする、背中に頼もしい感触が添えられる。

?「“遅化”」

彼が唱えると光の粒が彼の足元に広がり、落下が段々と穏やかなものになっていき、ゆっくりと地面に降りた。

?「大丈夫?」

「ありがとう...」

私は気づいてしまった、彼は私の背中と膝の裏に腕を入れて、持ち上げている、いわゆるお姫様抱っこ状態だということに。

そしてそれを私達と同じ制服をきた人達が見ている。

顔から火が出そうだ。

?「ほんとに大丈夫?顔赤いけど、どっかぶつけた?」

「いや、そうじゃなくて...その...おろしてもらえるとうれしいな...?」

彼は目線をあげて、自分たちが見られていることを理解すると、すんなりおろしてくれた。

見ている人達はみんな魔術師、そんな中で私だけただのヒト、それだけでも悪目立ちする予感がしていたのに、余計に目立ってしまった。

龍我「兄貴...俺もついでに助けてくれよ...」

?「やだよめんどくさい、龍我だって第9席なんだからそんぐらいできるだろ?」

龍我「リューゲの兄貴のけちー!薄情者ー!イケメーン!」

「最後褒め言葉になってるよ...というか、リューゲって名前だったの?」

龍我「姐さん知らなかったの?」

「うん、教えてくれなくて」

彼が「きみにはいいたくないんだよね...まあ、そのうち知ることになるよ」と言っていた名前。

龍我「兄貴なんで教えてあげなかったの?」

リューゲ「それは企業秘密だよ」

リューゲ君はいつもこうしてはぐらかし続ける、理由はわからない。

彼らと会話を続けていると、ヒソヒソとこちらを見る人達から話し声が聞こえてきた。

A「ねえ、あのふたり、第9席から兄貴とか姐さんって呼ばれてるよ?」

B「ってことはあの白髪が編入生ってこと!?うちの学年は過去最強レベルで強いのに!?」

C「え?じゃああの女子は?中等部で見たことないし...あいつも編入生!?」

「...龍我君たちって過去最強レベルだったんだ...」

そりゃあ、龍我君が世代のトップにいるからすごく強いってのも知ってるし、それに勝ったリューゲ君が強いのも知っている、でもまさか過去最強レベルとは思うまい。

リューゲ「ま、あんなのほっといてそろそろ体育館行こっか、僕達は編入生だからスピーチしないといけないよ?考えてきたよね?」

「うん、ちゃんと暗記もしたよ」

リューゲ「それならよし!じゃあ龍我案内お願い」

龍我「わかった!あっちにあるからついてきてくれ兄貴たち!」

龍我君はひとりでに走り去ってしまった、フレンドリーで頼りがいのある彼だが、こういうところがたまにキズだ。

リューゲ「天音、行こっか」

リューゲ君はこちらに優しく、そっと手を差し伸べてくれる。

「うん!」

その手を取ると、彼は大切なものを扱うかのようにゆっくりと、歩幅を私に合わせてエスコートしてくれた。







日本の最東端は南鳥島と、誰もが地理で習うだろう、しかし実際は違う。

魔術学園のあるのは絶海の孤島、富瀬島(ふせとう)、日本の真の最東端。

そこにある建物は学園の生徒が使用する学生寮、そして学園の運営する店のみ。

寮は同学年の生徒と二人一組の相部屋で、店には生活必需品はもちろん、ゲーム機等の娯楽も売っており、映画館にゲームセンター、さらにはアミューズメントパークもある。

富瀬島の面積はなんと東京23区に匹敵するほどの広さ。

ではなぜそんな広い島がヒトに見つからないのか、答えは至って単純。


島が沈んでいるから。


そう、富瀬島は千年以上前に沈んだ島、しかし当時最強だった魔術師がなんとか利用できないか考え、島全体を絶対に割れないガラスで覆い、中の水を抜きそこにこの学園を作ったという訳だ。

そんな大昔からある島にあるこの学園の叫ばないと奥まで声が届かないぐらい広い体育館のこれまた広い舞台の袖に私は待機していた。

舞台の下には200人の私と同い年の魔術師達がいる。

もうすぐあの大観衆の前でスピーチすると考えると足が震えてくる。

理事長と呼ばれた老人の方のスピーチが終わった。

『続いて、学年主席、雨野玲音(あめのれいん)さんによる宣誓です、それではお願いします』

私のいるところよりも奥から眼鏡をかけた少し長い、吸い込まれそうな艷やかな紫色の髪を内側に巻いた女子が壇上に出た。

玲音『...宣誓、我々私立魔術師育成学園高等部一年生は、魔術師としての誇りを持ち、より学び、より鍛錬し、さらなる成長を遂げることを我らが始祖様に誓います、4月1日、新入生代表雨野玲音』

簡素な魔術師の中ではありきたり?な宣誓に拍手が続いた。

舞台袖に戻ってくる雨野さんと一瞬目があった気がした。

『続いて、生徒会長より挨拶です、狼月凌駕(おおかみつきりょうが)さん、お願いします』

次に呼ばれたのは生徒会長、反対側からその姿を表した。

神々しい。

会長をひと目見てまず思い浮かんだのはその言葉だ。

リューゲ君のと似た髪型の黄色の髪、どす黒い赤なのに優しげな両目、その堂々たる姿、本能で怯んでしまうほどの気迫。

3歩後ろを歩くコバルトブルーにオレンジのメッシュが入った髪に大きなリボンをつけた女子は副会長だろうか。

リューゲ「...狼月凌駕(おおかみつきりょうが)

リューゲ君が近くでもわからないぐらいの声で喋りだした。

リューゲ「生徒会長にして現3年主席、魔眼を所有していてその実力は世界最強、始祖の転生者って言われてる、後ろの彼女が副会長現2年主席の冷原凍華(すずはらとうか)、いかなる時もポーカーフェイスを崩さず、会長に忠誠を捧げている...因みに密かに“サイボーグメイド”って呼ばれてるよ」

...なんか最後の方だけ声がシリアスじゃなかった。

「なんか...全く知らない私でも敵わないってことだけはわかるよ...」

リューゲ「あとこれからボクが喧嘩売る人達ね」

「そう...喧嘩を売る...え?」

彼の言うことに理解が追いつかないのはいつものことなのだが、今のはもっと理解するのにラグがあった気がする。

彼の顔は至って真面目だったのだが、今は少し不気味だった。

リューゲ「ま、聞いてたらボクが会長に喧嘩を売る理由わかると思うよ」

私はひとまず目の前の会長のスピーチを聞くことにした。

凌駕『新入生諸君、まずは高等部への進級おめでとう、我々3年生と2年生一同歓迎するよ、我々生徒会は生徒全員が平等、自由でいられるように活動する、興味があれば是非話を聞かせてくれ』

聞いてる限りは私が中学校に入学したときの生徒会長のスピーチと左程変わらなかった。

ここからが本番だった。

凌駕『時に諸君、君達は現代社会をどう感じる?現代社会で中心となっているのは他でもないヒトであって、我々魔術師は影の存在となっている...何故だと思う?何故我々は隠れなければならない?何故我々の存在は、我々の歴史はなかったことになっている?僕はそれが不思議で仕方ない、個々の能力で見れば我々のほうが上なのは一目瞭然、僕はこの狂った世界の軌道修正をして見せる、魔術師が自由に過ごせる世界を創ると、僕は約束しよう』

会長の熱弁が終わると、どっと大歓声があがった。

歓喜の声が会長への圧倒的な信用と、自由への思いを代弁する。

魔術師が自由に過ごせる世界、それは彼ら魔術師にとって最高の世界だが、ヒトにとっても最高な世界なのだろうか。

そんなことをじっくりと考える時間はなかった。

『ありがとうございました、それでは編入生に挨拶をしていただきます、第8席、リューゲさんお願いします』

リューゲ「じゃ、見てて」

会長と入れ替わりでリューゲ君が壇上に立ち、200人の前で礼をする。

真剣な顔つきが仮面だったかのように剥がれ落ち、いつもの無邪気な笑顔が姿を現した。

リューゲ『どうも皆さん!編入生のリューゲです!日本人っぽい顔立ちなのになんで名前がカタカナなのって思ったかもしれませんが、僕はドイツ生まれの日本人だからこうなってます!編入そうそうですけど、ちょっと今から喧嘩を売ろうと思います!』

堂々と喧嘩を宣言してしまった彼はマイクを取り外し、少し歩くと、舞台上から舞台袖にいる会長の方を指さした。

リューゲ『会長サン、あんたさ、あれ4つ持ってるでしょ?でそれを使ってさっき言ってた魔術師が自由にすごせる世界を創るんですよね?』

凌駕「そのとおりだよ」

リューゲ『それってほんとに自由なんすか?』

しん、と体育館が静まり返る。

リューゲ『ヒトと平和に平等に暮らしたいという魔術師の思いは尊重されるんですか?それってもしヒトと魔術師が結ばれたいと願ったら結ばれるんですか?全ての魔術師って、それほんとにひとりも例外はいないんですか?』

凌駕「全てを救うことができるとでも?切りせてなければならないものなんて腐るほどあるさ」

リューゲ『だからこそボクはヒトと魔術師が平等に過ごせる世界を創る、だから会長サン、これはボクなりの宣戦布告さ、せいぜい玉座でふんぞり返ってるといいさ、旧時代の王サマ』

そのスピーチに最初に反応したのは隣で黙り込んでいた副会長だった。

凍華「固有名リューゲへの激しい憎悪を確認、排除を開始します」

彼女がそう喋ると悪寒を感じ、体が震えた。

凌駕「凍華、抑えろ」

それを制止したのは、黙っていた会長だった、彼が命令するとおぞましい寒気はすぐに消え去った。

凍華「質問、なぜ止めるのでしょうか凌駕様」

凌駕「君が僕のために起こってくれるのは嬉しいよ、でも僕はわくわくしてるんだ、今まで誰一人楯突かなかったからね、彼のような存在は初めてなのさ、だから楽しみなんだよ、彼の考えを捻じ曲げさせるときが...リューゲ」

リューゲ「なんすか?」

凌駕「僕は待っているよ、君が僕と同じ高みまで上り詰めてくるのを、そうすれば僕の全てをもって君を叩き潰すよ」

リューゲ『首洗って待っててくださいね』

リューゲ君は会長に歩み寄り、耳元で囁いた。

それを聞いた会長は目を見開き驚いた。

『...あ、ありがとうございました、では夜城天音さん、お願いします』

いよいよ私の番だ、前が随分と荒らしてくれたが、私は私でいい印象を勝ち取らないといけない。

一度深呼吸をして心を落ち着かせ、壇上に立つ。

マイクが入っていることを確認し、話し始める。

『はじめまして、夜城天音と申します、確か序列外で特別席って言ってたと思います、お気づきの方もいると思いますが、私は魔術師ではありません、ヒトです、でもなんの突然変異か、魔眼を持っています、聞くと前例がないそうです、正直右も左もわからない状態です、そんな私がこの学園に来た理由は、なぜ私のようなただのヒトが魔眼を持って生まれたのか知りたかったから、ここに答えがあると思ったから来ました、先程のお二人のような仰々しいことは何もわかりません、ただ自分を知りにきた、それだけです、どうぞよろしくおねがいします』

台に額が着くほど深く頭を下げた。

10秒ほど経って、頭を上げるが、正直怖かった、ずっと前を見たくなかった、でも私には頼れる友がいた。

大柄な彼はニヤッと笑い、拍手を始めた。

そしてそれに釣られるかのように会場の全員が拍手をした。

遠くの方にいる彼に感謝を込めてニッコリと微笑むと彼はサムズアップして返してくれた。

読んでいただきありがとうございます!

よろしければいいねやブックマーク、レビューをよろしくおねがいします!

それではまた次回お会いしましょう!

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