白髪隻眼少年と、黒髪碧眼少女
人間には“ヒト”と“魔術師”の2種族が存在する世界。
ヒトである碧眼の少女、夜城天音は白髪隻眼の魔術師と出会い、魔術師の学園に入学することなる。
これは世界滅亡の鍵を握る少女と後に魔王と呼ばれる少年の物語。
pixivでも同じ作品を出しています!むしろ二次創作はpixivがメインです!
なろうは始めてなものですのでまだ使い慣れておりません、あととても文が下手ですがどうぞご容赦ください。
あるところに1人の魔術師がいました。
魔術師はヒトと仲良く、楽しく、幸せな日々を過ごしていました。
そんなある日、魔術師と仲良くしていた女の子は恋におちました。
一生かけて、必ず幸せにする、そう誓い会いました。
しかし魔術師に置いてヒトとの恋は禁忌以外の何物でもなかったのです。
魔術師はそれでも女の子を幸せにするため、魔術師の輪から抜けていきました。
そして悲劇は起きました、その女の子をよく思わない魔術師たちが女の子を殺してしまいました。
魔術師は壊れました、一生かけて幸せにすると誓ったのに、自分に力がないせいで女の子の命を奪われてしまったと。
魔術師は泣きました、来る日も来る日も泣いて、ストレスで黒く艶のあった髪は、廃れた白髪に染まってしまいました。
魔術師はこう考えました、ヒトと魔術師が仲良くできる世界を作れば、自分と同じ思いをする人はいなくなるんじゃないかと。
そのためには力が必要でした、しかし魔術師の力は弱く、儚いものでした。
少年は必死に自分の力を隠しました、相手に未知を押し付け、自分が有利に進められるように、情報を制御しました。
自分の本当の名と、悲しき過去を箱にしまい、鍵をかけて。
夢を見ているようだった。
目の前で起きている事象が私には理解できなかった。
ブォン!と剣を振る音がまた耳を刺す。
「やるじゃん!」
「なんなんだよお前は!お前の術式は!意味がわからん!」
少年たちの声が暗い街に響き渡る。
彼らが使っているのは本物の剣だ、肉を裂き、命を容易に奪うことができる物だ。
「そろそろ終わらせようか!_____“__”」
白髪の私と同じぐらいの背丈の少年が大きく息を吸い、その単語を口にした瞬間、彼は消えた。
逃げた、とかそういう話ではない、唐突に目の前から姿が消えたのだ、まるで透明になったかのように、彼の姿は何処にもなかった。
「な!?消えた!?何処行った!」
先程まで鍔迫り合いをしていた大柄な少年は驚いていた。
「ここだよ」
白髪の少年の声が聞こえたのは大柄の少年の後ろだった。
彼は消える前に“転移”と言っていた。
彼はその言葉の、読んで字のごとく、本当に相手の背後に転移したのだ。
「動かないで、無益な殺生は嫌いだからね」
首に剣を突きつける、赤い血が皮を切り裂いた剣をツーッと伝って白髪の少年が手に持つ小さな瓶吸い込まれる。
すると先程までの殺意を体現したような声ではなく、なんとも腑抜けた声が白髪の少年の口から出た。
「はい!ボクの勝ち!」
大柄の少年も観念したようだ、剣をしまい、優しい眼差しを向ける。
「あー!負けた!俺の負けだ!お前すげえな!あの攻撃全部かいくぐりやがって!どんな術式ならあんなことできるんだよ!」
「フフン!それはだね、企業秘密さ!」
先程まで殺し合いをしていたとは思えない程の仲の良さだった。
私は気になった、彼らは一体何をしていたのか、さっきから言ってる術式とは何なのか、知らないほうが幸せかもしれない、それでも私は今まで体験したことのない好奇心を抑えきれなかった。
「あ、あの...」
声をかけると2人は同時にこちらへ振り向いた。
「あんたの連れか?一見魔術師にゃあ見えねえけど...ってそれまさか!?」
「キミは...まさか本当についてくるとはね...降参だね、これは」
「あの、今何してたのか教えてくれませんか?」
2人はめんどくさそうな顔で見つめ合った。
「あんたがつけられたんだからあんたが説明してくれよ」
「えー、まあ、ボクの責任か、めんどくさいけどやるしかないか...何処から説明すればいいのやら」
私は知ることになった、人間には、私のような普通の“ヒト”と、生まれながら一つの術式をその身に宿した“魔術師”の2種類が存在するということを。
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私、夜城天音はいたって普通の女子中学3年生だ、仰々しいのは名前とこの変な色の瞳だけである。
身長も体重も普通で、運動能力、学力も普通、友人の数も普通で、今も普通にどの高校に進学するか悩んでおり、親にも先生にも、もう秋になるから早く志望校決めないといけないと散々言われている。
今思ったのだが、私はもしかするととても肝が据わっているのかもしれない、いやもう確定で心臓に毛が生えている。
なぜなら横断歩道の真ん中で大型トラックがこちらめがけてどうみても違反速度で迫ってきてるのにやけに冷静に自分のことを振り返っているからだ。
運転手はどうやら眠っているらしい。
居眠り運転で轢き殺されそうなのに私は冷静でいる、なんで死に直面した状況で自分の長所に気がつくのかな。
ブオオンと大きな音を立ててトラックがもう私の目の前に迫ってきている、ああ、私の命は14年11ヶ月で終わるんだな、なんでこんな短いのかな、世界は理不尽だ。
重い衝撃が轟音とともに私に襲いかかり、私は全身骨折して血だらけとなり、この世を去った。
はずだった、死を覚悟して目を閉じたが、いつまでたっても衝撃がないため、おそるおそる目を開くと私はいつの間にか歩道に立っていた、トラックは奥の方で事故っていた。
「...え?なんで生きてるの?」
もう目の前にはトラックのフロントがあった、運転席は見上げないと見えないような位置だった、生き残れる確率は0に等しかったはずだ、それなのになんで私は無事に事故を目撃してるのだろう。
?「危なかったね〜、あと1秒でも遅かったらキミ死んでたよ」
不意に頭上からお気楽な声が聞こえ、見上げると塀の上に白髪の少年が座っていた、少年と言っても私と同い年ぐらいだろう。
少年は私のことをじっと見ている。
彼は一部始終を見ていたのだろうか、なら聞こう。
「あの...なんで私は助かったんですか?」
?「フフン、それはね...」
少年は飛び降り、いたずら小僧のような笑みを浮かべた。
?「企業秘密だよ」
少しわかったことがある、この少年、本物のいたずら小僧で私のことをおちょくっている。
そこまでもったいぶられると余計気になってしまうのが人間の性というものだ。
「なんで教えてくれないんですか?」
返事をした少年の声は別人のように冷たく、息を飲むほどの迫力があった。
?「知らないほうが幸せなことだってあるんだよ」
つい先程までそこに立っていた少年とは全くの別人だった、本能がそれ以上聞くなと警鐘を鳴らしている、本当に聞かないほうがいいのかもしれない。
少年は私の顔を覗き込んできた、彼の吸い込まれそうなほどに深い紅の瞳が真っ直ぐにこちらを射抜いてくる。
?「...キミ、いい眼をしているね...」
確かに私の眼の色は他の人とは違う、でも日本人離れしているせいでなんどいじられたことか、正直この眼は憎かった、だが彼はいい眼と言った。
「変な色だと思いますが?」
?「まあ、わからないだろうね、それじゃ」
行ってしまった...本当に嵐が過ぎ去ったみたいだった。
その後私は被害者ではなく目撃者として警察の事情聴取を受けた。
?「...きっとまた会うよ、キミがその眼を持っているからね...さーて、ボクは試験頑張らないとね!」
知らないほうがいいこともあるけど、キミは知ってしまうだろうね...また会うのは学園かな...
少年はそう言い残し消えた。
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友「ねえ天音、聞いた?あの噂」
「噂って?」
休み時間、クラスメイトから話しかけられた。
「まだ知らないの!?」
オーバーリアクションだと思うほどびっくりしている、私は学校の人とは広く浅くをモットーに関わっているけど、知らないことがそんなに変だろうか。
友「最近この辺にイケメンが出没するんだって!それも私達と同い年ぐらいの相当のイケメン!」
「はあ...」
イケメン...そんな言葉を聞くと中3女子という生き物はいても経ってもいられないものだ、私も少しは興味がある。
友「身長が167cmぐらいかな?それでいかにもいたずら小僧!って感じらしくて」
「へ、へえ...」
その特徴に私は心当たりがあった、いやまだあの少年とは限らない、似た容姿で似た性格のただのイケメンかもしれない。
友「それで髪の毛が真っ白でね、片目は眼帯してるらしいんだけど真っ赤らしいよ!」
「...」
私の心当たりと完全に一致していた、流石に白髪隻眼まで同じ人なんてこの辺にいないだろう。
友「天音?どうしたの?」
「私...その人知ってるわ...」
友「本当!?今度紹介してよ!」
「いや、会えるかわからないけど...」
本当に彼は事故の時に会っただけでそれ以来見かけていない、出会える確証なんて微塵たりともなかった。
友「わかった!期待しないで待ってるね!」
クラスメイトは私の席から離れていった。
_キミ、いい眼をしているね_
「...口説き文句、じゃないよね...」
少年の言葉が脳裏に浮かぶ、私にはどうしてもあの言葉が眼の色を褒めただけの言葉とは思えなかった。
それに知らない方が良いこととはなんだろう、少年の迫力に怯えて聞けなかったが、そんなことを言われると知りたくなってしまう。
そのことを考えてしまって、その後の授業はどうにも集中できなかった。
空は私の心情とは裏腹に、雲一つない晴天だった。
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それはある日、クラスメイトとカラオケに行った帰りだった。
?「...情報だとこの辺にいるはずだけど...何処行ったかな...」
曲がり角からあの少年がスマホを見ながら歩いてきて、そしてすれ違った。
学校で噂になっている彼にクラスメイトは一瞬で気づいた、そしてその肉に飢えた野獣のような目は一斉に私に向けられた。
「な、何!?」
友「天音って確か彼と面識あったよね?」
「まあ...」
友「じゃあ話しかけてきてよ!ほら!」
半ば強引に背中を押され、彼の後を追うことになった。
彼は誰かを探しているようだったけど...一体誰だろうか。
彼の後をこっそりとつけると、彼はショッピングモールの立体駐車場の前で止まった、そしてスマホをしまうと、こちらを振り返ってくる、どうやらつけていたことはバレていたようだった。
その隻眼は、私のことを真っ直ぐに射抜いてきた。
?「久しぶりだね、元気だった?」
「ええ...やっぱりあの日何があったのか聞きたくて」
少年は顎に手を当てて少し考えると、先程までのあっけらかんとした声色とは違う、重みのある声色で言葉を紡いだ。
?「...夜城天音」
「え?なんで...」
なんで私の名前を知っているの、と聞く前に彼は続けた。
?「碧眼の中学3年生、誕生日は3月7日、特出した能力はない、身長も平均、いたって普通の少女...これでもボクが怖くないのか?」
彼の言ったことは全て合ってた、合っていたからこそ、何処でその情報を仕入れたのかがわからない、だからこそ恐怖が私の心を支配する、冷や汗が出て、脚が子鹿のようにガクガク震える。
?「これが最後の忠告だよ、これ以上ボクについてきたら、キミは必ず不幸になるだろう、ただのヒト...ではないけど、ボクはキミのような優しい女の子はもう2度と巻き込みたくない」
私が膝から崩れ落ちる中、彼はコツコツと足音を鳴らしながら立体駐車場に歩いていった。
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ごめんね、あまり突き放したくは無いのだけど、こうでもしないと、彼女によく似ているキミはきっとついてきちゃうだろうからね。
夜城天音、彼女のことが気になって調べてみたら、いたって普通の少女だった。
「普通の少女だからこそ、巻き込みたくないんだよ、僕達“魔術師”の世界にはね...」
車の止まっていない5階にたどり着くと、1人の大柄な少年が佇んでいた。
「はじめましてだね、今川龍我くん、元気?」
陽気に声をかけると彼は怪しいやつを見る目でこちらを伺ってきた。
?「知らねえ奴に名前呼ばれてるだけで気持ち悪いわ、お前誰だ?ウチの生徒じゃねえだろ?」
「編入希望者だよ」
日本に一つしか無い魔術師専門の学園、私立魔術師養成学園、通称魔術学園。
その編入試験は、一般的に誰も受けようとしない、否、受けたところで意味がない。
その試験内容、それは同世代の序列一桁と戦い、その血を手に入れること。
1滴でも血があればいい、それだけと言ってしまえばそれだけ。
だがそれだけが難しすぎるのだ、それほどまでに序列一桁は圧倒的に強いのだ。
「勿論受けてくれるよね?中等部3年、序列第9席、“龍炎”の今川龍我くん?」
龍我「...面白え、序列第9席を舐めんじゃねえぞ?」
互いに剣をだし、向き合う。
たった今から、この場は戦場と化し、誰もこの戦いに口出しすることは許されない。
龍我「先手必勝ォ!」
その大きな声での開戦の合図と共に、振り下ろされた剣は豪炎を纏い、自分の目の前へと迫っていた。
戦闘において最も単純でいて最強の戦略、それは先手必殺やられるまえにやる。
しかしそれを実行するには相当の実力と自信がないと出来ない、だがこの第9席にはその両方があった。
でも彼ではそれが出来ない。
「“速化”、“硬化”、“防熱”」
基本術式、それは魔術師なら誰でも使える基本的な術式。
原則として基本術式には彼で言う“龍炎”のようなひとりにひとつの固有術式には敵わないというものがある、それは紛れもない事実であり、正真正銘越えられない壁だ。
しかしどのルールにも抜け道はある、世界はそのように出来ているのだ。
ゲームにチートがあるように、テストにカンニングがあるように。
その世界の原則には術式も漏れないのだ。
確かに基本術式は固有術式に敵わない、でもそれは基本術式1つでの話だ。
1が2に敵わないなら1をもう一つ足せばいい、たったそれだけの単純な話だ。
つまり彼の渾身の一撃も、上げたスピードによる振りの勢い、剣を固くしての防御力の上昇、仕上げに炎の熱を緩和することで容易に防ぐことが可能なのだ。
ガキン!と大きな音を立てて剣は攻撃を受け止めてくれた。
龍我「な!?受け止めただと!?」
彼の顔は未知に触れたときの気持ち悪い色に染まっていた。
「...キミ、優しいね」
龍我「は?」
「わざわざタイミングを相手に読ませるなんて、キミは何故そうしたのかな?」
龍我「正々堂々、不意打ちはしない、真っ直ぐにぶつかる、それが俺のモットーだからだよ」
彼はさも当たり前かのように答えた、しかしそれは当たり前ではない。
真っ直ぐな刃は曲がりくねったものに絡め取られやすい、彼はそれを承知で真っ直ぐに突っ走ってきた、そして第9席の座を掴み取った。
強い、純粋に彼は強い、彼が搦手を使ってこない性格で助かった。
どうやらまだまだ情報収集は未熟だったようだ。
「なるほど...今川龍我、ボクはキミを心の底から尊敬するよ、キミのような魔術師と出会えて、ボクは幸運だね」
龍我「そりゃどーも」
彼とは仲良くなれそうだ。
龍我「なーんか嫌な予感するから決めさせてもらう...」
彼に押し飛ばされ、間合いが開き、大技が来ると嫌でもわかる。
彼が剣を中段に構えると、剣が蒼い炎を纏い出す。
龍、それは神話の生物、しかしボクの目の前に、蒼き炎龍が顕現していた。
龍我「“龍炎”奥義...爆竜紅蓮斬!」
魔術なのだから厨ニくさいネーミングになるのは仕方ない、しかし名前の割にその威力は凄まじい物だとうかがえる。
龍が吐き出す高火力の炎、それに加え灼熱の斬撃がこちらを焼き尽くさんと迫ってくる。
「使うしかない、か...“__”」
使いたくないと思っていたが、使わなければ確実に試験は不合格となってしまう一手。
ズガァン!と轟音が鳴り響き、攻撃で起こった熱風が頬を撫でる。
なんなら殺す勢いでやってないかな?
「はあ...こんな高火力をフルパワーで、しかも斬撃も飛ばしてくるなんて...おまけにホーミング性能まで良質ときた、なんとも理不尽だね、死ぬかと思ったよ」
龍我「は?お前なんで生きてんの?殺す気でやったんだけど」
彼はとてつもなく困惑していた。
「それは神のみぞ知るってとこかな?さあ、行くよ!」
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私は私が思っているよりもよっぽどバカなのかもしれない。
名も知らぬ彼は私の個人情報を1ミリの間違いもなく言い当てた。
怖かった、恐怖で足が動かなかった、それなのに彼の最後のあの寂しげな横顔、その意味を知りたくて追いかけてしまった。
4階までたどり着くと、上の方から何かをぶつけ合う物騒な音が聞こえだした。
金属?のような音は私の不安を煽った、まさか殺し合いでもしているんじゃないかと。
「...まさか、ね...」
上に向かうに連れて、その音は段々と大きくなってきた、鋭く、長い刃物がぶつかる音が何度も耳を刺す。
5階にたどり着くと、車はなく、2人の少年がいた、当初の目的である白髪隻眼の少年と、見たことのない180cm位あるであろう大柄な少年、2人とも手に長い刃物、実物は初めて見るが、恐らく長剣を持っている。
そして私は自分の目を疑った、速い、2人の動きが恐ろしく速いのだ。
最早一筋の線にしか見えない人影は前でぶつかったと思えば、次の瞬間には後ろからキン!という音が聞こえてくる。
風圧で前髪がふわりと舞った。
「これが、知らないほうがいいこと?」
彼はついてくれば知らないほうがいいことを知る羽目になると言っていた。
きっと、これが、これこそが彼の言っていた知らないほうがいいことだろう。
彼らは集中しきっているからか、階段の近くにいる私に全く気づいていない。
「「“速化”!」」
二人の声が重なる、そのとき、彼らの足回りに小さな、それぞれ別の色の光が集まったかと思えば、すぐに消えた。
すると恐ろしいことに2人は更に加速した。
?「最高速度にまでついてくるのかい!?」
龍我「そっちこそ、なんでついてこれてんだよ!龍炎でブーストしてんだぞ!?こっちは!」
どうやら2人ともこれが最高速度のようだ、速すぎて最早見えない。
何故だろうか、人間の限界などとうに超えている、恐ろしい光景のはず、なのに何故この胸は熱く、興奮しているのだろうか。
?「まあボクも術式使ってるからね!なんで走れるかすら不思議だよ!」
この現状が現実だと信じられなかった。
夢を見ているようだった。
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そして話は冒頭に遡る。
?「...じゃあ説明するけど、これだけは約束してほしい」
「なんでしょう?」
?「今から話すことは他言無用でね?それこそ話したら...飛ぶよ?」
彼は首に指を当てて言った、きっと言ってしまっては殺されるかそれに等しい罰を与えられるということだろう。
ゴクリ、と唾を飲み込んだ。
?「えっと...何年前だっけな、まあとにかくすっごーく昔、キリストなんてまだ生まれてなかった時代、そうだ!5万年前だ!その時代に1人の男がいたんだよ、その人が確かどこかの島にたどり着いてとある穴を見つけたんだ」
「穴?」
?「そう、とんでもない量の光が吹き出す穴、そこにその人は足を滑らせて落っこちちゃったんだ!穴の深さはおよそ300メートル!」
「さ、さんびゃく!?そんな深いの!?」
?「でもその光を浴びた男性は覚醒して魔術師になったんだ、それで助かって、始祖になったってわけ」
「へえ...じゃあなんであなた達は魔術師に?穴におちたんですか?」
?「いやいや、そんな光の吹き出す穴が何個もあったら世界中が大パニックだよ、ボク達が魔術師なのはね、皆始祖が血縁だからだよ、ボクも、龍我も」
龍我といって隣の少年を指さした、きっと彼が龍我という名前なのだろう。
「ん?てことは2人は親戚なんですか?」
龍我「まあ、親戚っちゃあ親戚だけど赤の他人と同じぐらい血は薄いぜ?」
確かに5万年も昔の人物の血縁と言ってもそれはとんでもなく遠い血縁と言っていいだろう、最早誰が血縁なのかすらわからないだろう。
?「で、個人で別々の術式を身に宿してるからそれを固有術式、みんなが使えるように始祖が作ったのが基本術式ってわけ、術式の使用には魔力を消費するから元からなかったり切れてたりすると使えなくなるんだ」
「なるほど...じゃあなんでお二人はあんなことを?」
魔術師とヒトの違いはよくわかった、でも何故2人はあんな殺し合いみたいなことをしていたのだろう。
?「ああ、編入試験だよ、学校の」
「試験、ですか?」
?「そう、各国に一つだけ魔術学園ってのがあって、それの高等部の編入試験をやってたんだ」
「へえ...そんなのが...」
?「まあほぼ受かんないから10年に1人いればいいほうだけどね」
「10年!?」
?「うん、内容が同級生500人のトップ9名のうち誰かの血を手に入れること、この序列一桁がめちゃくちゃ強くてね〜、二桁じゃ刃が立たないんだよ、、で龍我が序列第9席だからボクは合格ってわけ」
龍我「はあ...俺負けちゃったし落とされるかな...」
なんだか一気にすごい情報が頭に詰め込まれた。
「...あっ、そういえば」
?「どうしたの?」
「あの“速化”って言った時にお二人の脚になんかちっちゃい光が見えたんですけど、あれってなんですか?」
2人は何故か黙った、なにかおかしなことを言ったのだろうか。
?「...確認だけどキミ魔術師じゃないよね?」
「じゃなかったらこんなに驚きませんよ?」
?「...さて、キミって進路は決まってる?」
「どうしたんですか藪から棒に...まだ決まってませんよ」
少年は一気に明るいけどドス黒い笑顔を放った、なんか嫌な予感がする。
?「ならよかった!キミの魔術学園高等部への編入が決まったよ!」
「...よく聞き取れませんでした、もう一度言ってくれませんか?」
?「キミの魔術学園高等部への編入が決まったよ!」
彼はさっきと全く同じ顔で全く同じことを全く同じテンションで言った。
「はああぁぁぁぁ!?」
私の絶叫が駐車場に響き渡った。
突然決定された私の進路はまさかの魔術師の学校だった。
「なんで!?私ただのヒトだよ!?」
?「言ったでしょ?良い眼をしているって、キミの眼、魔眼だよ、魔術師の200人に1人の確率で持って生まれるやつ、激レア、SSR、それをキミのようなただのヒトが持っているんだ、そりゃあ学園が欲しがらないわけ無いだろう?」
「ええ...ウソでしょ...なんで私そんな眼してるの...」
?「知らないよ」
龍我「いいなあ...俺が死にものぐるいで突破した入学試験を一瞬でスキップするなんて...」
ただのヒトだった私は、生まれ持っている碧眼のせいで、いろんな進路がなくなり、私立魔術師養成学園高等部、通称魔術学園高等部への編入が決まったのだった。
これが後に魔王と呼ばれる少年と、世界の命運を握る少女の出会いだった。
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?「どうぞ」
龍我「失礼します、会長」
?「君は...中等部3年の第9席か、確か名は...今川龍我君だったね」
龍我「俺のこと知ってるんですか?」
?「生徒会長たるもの、生徒の顔と名は覚えないといけないからね、それでなんのようだい?」
龍我「来年、俺達が高等部に上がる時に、編入生が来ます、なのでその報告をと」
?「編入生か...それだけならわざわざ僕を経由しなくても良かったのでは?」
龍我「いや、その編入生が今回2人いまして...片方が特殊なんですよ...」
?「2人とは珍しいじゃないか、で、特殊とはどういうことだい?」
龍我「...その、ヒトなんですよね...」
?「ヒトだと?」
?2「否定、ヒトがこの学園に入学することは不可能だと記録されています」
?「そのとおりだが...なぜ編入が認められた?」
龍我「...そいつ、魔眼持ちなんですよね、信じられないことに」
?2「不可能、魔力を持たぬヒトに魔眼持ちがいるなど不可能な事例です」
?「いや、まさか...取り敢えず事情は承知した、それで僕に何をしてほしいんだい?」
龍我「取り敢えず知っておいてほしかっただけです、では自分はこれで失礼します」
?「...なあ」
?2「いかが致しましたか?」
?「こんな伝承を知らないかい?“世の理に反するものが現れるとき、9つの魔石は1人の平和を願うもののもとに集い、そのものに大いなる力を与えん”と」
?2「...不可解、理解不能です」
?「つまりはその異端者が現れたんだよ...ようやく、僕の宿命を果たすために動くことができる、まずはその子を保護するぞ」
?2「オーダーを受理、最初にターゲットの情報収集を開始します」
?「頼んだよ、凍華」
凍華「かしこまりました、凌駕会長」
凌駕「とうとう始まるんだ...!全てはこのときのためにやってきたからね...!革命の時は近い、早く残りを集めないとね...!」
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