8話 力
ここから、話が動き出します!
閻魔帝王から手紙が届いた。届けてきた鳥が鬼だったから、斬る。手紙を開くと、
強き者ヒロトよ
ゲームから数ヶ月程経ったな。元気か?わざと鬼に送らせたが、恐らくだが、殺したんだろう。
いずれ、お前とは戦うことになる、と思う。
ということで、お前を王宮に招待したいのだ。
では、さらばだ!
マジで勝手な奴だ。
あの日以降、遊びに来いやら何やらと言われ、調査を仲間にしてもらったんだが、俺は監視されていることが分かった。
だから、行きたくないんだけどなぁ…。
まぁ、結局行ったんだけどね。
王宮に着いた。
「は?王宮は俺が燃やしちゃったはず。なのに何でこんなにピカピカ何だ!?」
明らかにおかしい。
「もう修繕は済みましたよ。ヒロト様。」
「星鬼か。」
流石は帝王、だな。
「閻魔帝王はどこだ?閻魔帝王に招待されたんだが…。」
「ご案内します。」
いや〜、ホントにキレイだね。この王宮。大体は木造だが、この技術…日本人なんだろう。ここを設計した奴は。一度会って見たいものだよ。同郷の人に。
「ここの通路を通って奥から2番目の扉で御座います。帝王様がおやつを食べながら寛いでおられるとお思います。」
「あぁ、サンキュ!」
(サンキュ、とは?)
「では、ごゆっくり。」
奥から2番目・・・。
ここか…やはり強い気配だな。
「おーい!来てやっ…た…え?誰?」
「お主こそ誰じゃ?妾は女麗天鬼だぞ?」
横座りで佇む少女。黒髪で青の花柄の着物に、スラッと細い足。まさに美少女。
「何故ここへ来たのだ?そうか、妾に会いに来たのか。可愛い奴だな。」
顔を近づけられる。
「ッ!」
「何だ?顔が赤いぞ?」
俺はカナメ一筋だ!
「いや〜、帝王に会いに来たんだけど…。」
「帝王か…妾は嫌いだ。帝王は妾の敵だ。妾はな、元々地球に住んでいた。」
「鬼達に捕らえられた、のか。」
「あぁ、よく分かるな。」
「俺も地球に住んでたからな。」
「何!?妾達の国!「清」はどうなっておるのだ!」
「「清」?」
(中国か?日清戦争で習ったな。)
「戦争があって、その時にこの世界に来たのか…。」
「お前は何でも知ってるな。そうだ。あの忌々しい、日本!妾の父母が殺され、祖父祖母に引き取られた。ま、それで鬼ごっこをしていたら捕まった、ということだ。」
一応、俺は日本人だ。謝っておくか?
「あ〜、すまん!日本人として言っておく。俺からしたら随分昔だが、日本のせいで迷惑かけた!」
(フッ。この子供、いい奴だな。)
「お前の服ボロボロだな。新しい服を織ってやるから。」
「ッ!ありがとうございます!」
「その代わり…」
「え!?」
「そんなに怖がるな。なーに、簡単なことだ。妾と共に閻魔帝王を討伐することに、協力してほしい。」
凛々しい顔、美しい細い目でこちらを見る。黒髪につけている輝く簪でその美しさを際立てている。
「どうだ?」
「・・・帝王と会ってから決めるから…。」
「ったく、お前はヒロトだろ?「帝王を殺す」と帝王の目の前で吐き散らかしていたであろう。何をそんなに迷う必要があるのだ?」
「俺は帝王に監視されてんだ。ほら、そこだって。」
天井の板が動いている。
監視してる鬼が「気付かれた!」という感じで天井裏でジタバタと動き出す。
「鮮血流星斬!」
自分の手に傷を付け、血を操る。血の刃に変形させ、放つ。
「ギャッ!」
鬼の悲鳴と共に天井から鮮血がしたたしる。俺の手は、魔法にて治癒する。
「お前、この世界に来たばっかりだろう?何でそんなに強力な魔法が繰り出せるのだ!?」
「まぁまぁ、帝王と会ってから返事するから。じゃ、後で!」
「分かったわよ…。」
出ていくヒロトを見届け、思う。
女麗天鬼は、顔を少し赤くし、目を瞑る。頭の中で、ヒロトのことを思い出す。
「はぁ、緊張した…。」
そう嘆く。
「やぁ、閻魔帝王!」
「遅かったではないか。ったく。」
「仕方無いだろ?違う部屋に行ってしまったんだから。一番奥の壁に扉があるとは思わなかったし。」
「よく見て、よく感じろ。ところで、余を倒す程の戦力は集まってきているのか?お前がゲームで死んだ奴らを味方にしてると監視役から聞いたが。」
やはり、気付いていたか。
「あぁ、俺が蘇生させたが?悪いか。」
「アッハッハ!蘇生、蘇生か!お前そんなことが出来るようになったのか。」
「じゃあ、逆に聞くが。お前は死者蘇生が出来るのか?」
「出来ん。」
何だよそれ。
「余と剣で一本勝負しないか?」
「え?」
「伝説宝刀で戦ってもいいぞ。魔法もありだ。」
それじゃ剣だけではないじゃないか。ま、いっか。そっちの方が好都合だ。
「星鬼。審判を頼む。」
「ハッ!始め!」
「フゥゥゥゥ…。」
「では、いくぞ。」
閻魔の姿が掻き消える
「どこから来る!?」
(何かが降ってきてるような感じがする!)
頭の上に剣を構える。
「ガァァン!」
「ほぅ、良く受け止めた。どんどんいくぞ!」
「激炎放射!」
「ハハッ!遅い!」
また、閻魔の姿が掻き消える。
(は???)
「ガン」と鈍い音が鳴る。
ヒロトは、そのまま王宮の床に崩れる。
帝王は剣の柄でヒロトの腹に1/3程の力で叩き込む。ヒロトは人間だ。案の定、気を失う。
「連れて行け。そうだな、女麗天鬼の所で休ませておけ、星鬼。」
「心得ました!」
まだまだだな!ヒロトよ。このままでは余に遠く及ばないぞ。もっと力をつけろ。
「女麗天鬼よ。ヒロトを看取れ。」
「星鬼様!了解です!」
(ヒロト?何があったのかしら…。)
ヒロトを寝かせ、毛布を被せる。女麗天鬼は、顔を赤くしていた。
「んっ…」
そのままヒロトにキスをする。ヒロトに一目惚れしたのだろう。
上の服を脱がせると、
「え?腹が赤い…一応、冷やしておきましょう。」
「ん〜…」
「ッ!目覚めたか?」
即座に態度を変える。
「あぁ。あれ、帝王は?」
ガバッと起き上がる。
(痛ぅ〜、腹がっ・・・。)
「痛いであろう?何があったか覚えているか?」
ここに来て・・・あっ
「思い出した!帝王と剣で手合わせして、全く手が出なかったんだよ!」
「服を織ってやった。返事次第では、やらんぞ。」
「無論、帝王を殺す!」
女麗天鬼は薄く微笑む。
「!え、えーとね…。あっ、もう行かなきゃ。服ありがとう。」
ヒロトは服を着る。軽く、触り心地も良く、柔らかい。
「顔が赤いぞ?妾は丁度この王宮から追放判決を受けたからな、一緒についていくぞ。どうだ?」
女麗天鬼がヒロトが着る新しい服の裾を掴み、顔を近付ける。
(っ!ちょっと初め会った時と態度違くないか!?)
大きな漆黒の黒目、細い鼻、小さな唇。それがヒロトの顔の目の前に迫る。
「いっ、いいけど…!」
「感謝する。」
心臓の音がバクバクと高鳴り、声も高くなる。
仲間をここで手に入れた。