ハニエルの地獄訓練
「次、来なさい!」
剣で勝負をする、ハニエルとゴルーヤ。今の所、ハニエルは竹刀での防御しかしてない。だが、ゴルーヤは真剣を使っている。なのに、ハニエルの持つ竹刀を壊せない。
「クソッ…天斬!」
「甘いわよ。栄光斬。」
ハニエルの放った攻撃は、真剣を折り、ゴルーヤの首に当たる。ゴルーヤはそのまま気絶した。
「さあ、もっと来なさい!勝った奴には褒美をやるわ!」
その言葉に、兵士達に気合が入る。
結局、誰も勝つことは無かったのだ。
「ゴルーヤ。明日も私の下へ来なさい。」
「はっ…はい!」
王の護衛は他の者に任せられるが、部下に何かあったら?、と考えると、心配なのだ。
だが、この訓練がゴルーヤの密かな楽しみになっていたのだ。美女につきっきりで教えてもらうのが嬉しいからというのもある。
そして、ハニエルが「喜怒哀楽」という技能でゴルーヤの感情変化を行っているからだ。
「そうよ!もっと柔らかく、太刀筋を考えて。手首のしなり!」
そうハニエルが叫ぶと、ハニエルはゴルーヤの両手首に竹刀を打ち込んだ。
「痛ったッッッ!」
「怯むな!刀を振れ!」
(早い…早い!間に合わないっすよ!ヤバい…水が飲みたい!ホントにッ…スパルタすぎるッ…)
もう6時間ぐらい打ち合っている。そして、ゴルーヤは気付いた。
(すきを見つけた!)
この瞬間、ゴルーヤは技能・「攻撃予測」を手に入れた。
(ここだッ!イケェェェェェェェェェェ!)
ハニエルの右腕にかすった。
「ッ………休憩よ。」
この休憩でゴルーヤの命が繋がった。
「どう思う?ハニエルさんのこと。」
仲間達にハニエルのことを聞いた。
「いや〜あんな可愛い人に稽古してもらえるのは嬉しいよ!」
「ホント。仲間で良かったよ。」
皆が楽しく会話しているところに、現れる。
「休憩終了!」
ハニエルだ。
「えっ…ハニエルさん!それは短すぎますよ!」
「うるさい!そんな喋ってるなら稽古しろ!」
口答えする人がいなくなる。
(ハァ…この兵士達、稽古が嫌なのね。ウフフッ…いいじゃないの。)
ハニエルは「喜怒哀楽」による感情変化を兵士にかける。
兵士達が嬉しそうに闘技場へ向かった。
「続けるわよ!」
「稽古、終わり!」
夕方頃に稽古の終了の合図が出た。
その頃、ハニエルは…
「ミカエル。今日は月が綺麗ね。」
若かりし頃のミカエルに話しかける。
「ああ。明日は満月か…」
「好きよ、ミカエル。」
ハニエルはミカエルを強く抱きしめて、キスをした。
「フッ。相変わらず可愛いな。」
「あら、お上手。」
「そういえば、世界大戦の後何処にいたんだ?」
ハニエルは、己が「ニョレーキ」だった頃の思い出を話した。
「成程。そのヒロトってのが、私の魂の欠片なのか。」
魂の欠片とは。
天使や悪魔、精霊などは、人類を支えるために自身の魂の欠片を自分が選んだ人に授けるのだ。ただ、どの天使や悪魔、精霊に選ばれなくて、魂の欠片を貰えない人もいる。魂の欠片を貰った人のことを、「受け継ぐ者」という。
「そう。ヒロトと初めて会った時、ミカエルが帰ってきたと思ったわ。ま、私ならヒロトはミカエルと同一人物って考えるわね。」
ニョレーキがヒロトを好きだった理由がコレである。
「じゃ、そろそろ夕食の時間だから、帰るわね。」
「ああ。」
ヒロトのことを思い出すハニエル。自分が好きだった人。今、何をしているのだろうと、久し振りにヒロトのことを思うのだった。




